4006A と4011A はいずれもトランスレス仕様のマイクロホンです。トランス仕様の4006(※)と比較して、違いや特長を確認してみます。
※)4006は旧製品です。現在は販売していません。
▼感度(Sensitivity)
ほとんどのマイクロホン・トランスは、信号レベルを下げるよう設計されています。そして“感度”はマイクロホンからの出力信号の大きさ( 電圧) とダイアフラムにかかる圧力の比(mV/Pa) であるため、トランスが信号レベルを下げるのとほぼ同じ比率でマイクロホンの感度を低下させます。トランスレスタイプの4006A の感度が40mV/Pa であるのに対して、トランスタイプの旧4006 の感度は10mV/Pa です。このようにトランスレス出力のマイクロホンはトランス出力のものより感度が高くなるため、ノイズに埋もれることなく微細な音をピックアップできます。
▼歪み(Distortion) と低域周波数再生(Low frequency reproduction)
トランスは低周波信号に含まれる大きなエネルギーによって飽和しやすいため、聴き取る事ができる低周波歪みを誘発します。トランスを取り除くことで、単に周波数レンジを拡張するだけではなく、とても重要な80Hz 辺りの帯域でより忠実な音響特性を得られます。その結果、トランスレス出力のマイクロホンはトランス出力のものに比べ、歪みの少ない豊かな低域が得られます。
▼同相信号除去比(CMRR、耐ノイズ性)
バランス音声ラインの耐ノイズ性能は、入力/ 出力インピーダンスの平衡と音声入力チャンネルのコモンモード( 同相信号) 除去比によって決まります。バランス型の音声トランスは、他のどのような電子回路と比べてもコモンモード除去比が高く、バランス伝送に適しています。音声信号ラインの出力と入力にトランスを使用すると信号線に誘発するノイズに対して最大の耐性が得られます。一方トランスレスタイプのマイクプリアンプでは、使用している電子部品の精度( バラツキ) から音声ラインに僅かなアンバランスが生じます。そのため、どうしても理想的なバランス伝送ができません。耐ノイズ性能の点では、トランス出力のマイクロホンの方がトランスレス出力のものより優れていると言えます。
▼ケーブル引き伸ばし可能距離
マイクロホン・トランスを経由した時、信号の電圧はトランスの比率に応じて低くなりますが、その一方で信号の電流は多くなります。増加した電流は、顕著な信号の劣化が生じることなく伝送できる距離、つまりマイクロホンのケーブル・ドライブ能力を向上させます。トランスレスタイプ4006A のケーブル引き伸ばし可能距離が100m であるのに対して、トランスタイプの旧4006 は300m となります。
▼まとめ
以上のように、マイクロホン・トランスにはメリット・デメリットがあり、一概にトランスタイプとトランスレスタイプ、どちらのマイクロホンが優れているとは言えません。しかしながら、ハイレゾ録音をはじめとした近年の技術的な進歩により、より忠実な音響再生への欲求が日々高まってきています。この要望に応えるべく誕生したのが、現行のペンシル・マイクロホンシリーズです。音質面で不利となるマイクロホン・トランスを廃しリファインされたプリアンプユニットとDPA が誇るマイクカートリッジとの組み合わせにより、究極のナチュラルサウンドを実現しています。