TOP第9回入賞作品第9回 JA全厚連特別賞「変わらない日々の幸せ」
最終更新日 : 2024/12/04

第9回 JA全厚連特別賞「変わらない日々の幸せ」

「変わらない日々の幸せ」
ゆめさん(山梨県 南アルプス市)

 私は20代の頃から年に1度、厚生連にて人間ドックを受けている。独身の頃は同期仲間と、結婚後は主人と、連れ立って行く相手こそ変わったが、ドックは互いに健康を確かめ合える貴重な機会だ。
 厚生連のドックといえば、優しく笑顔溢れるスタッフのもと、おだやかな雰囲気の中で、流れるようにスムーズな検査が行われる。検査の辛さや嫌な気分をほとんど感じないのは、スタッフの皆様の心からのホスピタリティがあってこそ。だから長年、安心して受け続けることができている。私はこうして毎年毎年、健康の証を頂きながら年を重ねてきた。
 しかし昨年の1月、そんな私がドックでD判定の紙を手にした。なんと乳がんの疑いだという。ドックの最終結果を優しく説明してくださる医師の声がなんだか遠くに聞こえ、自分が自分でないような、フワフワした不思議な感覚に襲われた。「生まれてこの方、出産以外に入院などしたことのない健康体なのに?」「まさか私が?」例年と変わらず主人とデート気分で出かけた先の帰路は、打って変わって重たい空気に包まれた。私は動揺しながらも、主人に促されるまま、すぐに専門医のいる病院の予約を取ったのだ。
 10日後、予約した病院に不安いっぱいで足取り重く向かった。静かな診察室の中で、送付されてきた結果画像を見た医師の第一声は「よく見つけてきたね。」というようなニュアンスだった。マンモグラフィーで判別できるか出来ないかのものらしく、医師曰く「毎年の受診結果と比較し、些細な変化も見落とさず拾い上げてくれたのではないか」とのことだった。そして、D判定を受けた日からインターネット検索で不安を雪だるま式に膨らませていた私に、医師は明るくこう言った。「がんだとしても早期ですから、そんなに心配することはないですよ。」
 その後、検査を重ね、乳がんと診断後にすぐ手術を受けた。仕事は1か月だけお休みしたが、術後1か月後には、再発防止の為の放射線治療を行いながら仕事に復帰した。放射線治療が済むと、あとは投薬治療も不用で経過観察の為の定期受診だけとなった。
 今、振り返ってみると、私にとって青天の霹靂というべきのまさかの事態ではあったが、早期発見の恩恵により、治療は手術と放射線治療だけで2カ月程で終了した。そして、治療後は以前と全く変わらない生活が送れているのだ。乳がんと診断される前と同じように、楽しく仕事をし、子育てや家事に奮闘する当たり前の毎日。体の負担もなく、何も変わらない毎日を過ごせているのは、本当に早期発見、早期治療の賜物でしかない。
 現在、日本では9人に1人の確率で乳がんに罹患するとも言われている。そして私のような40代後半から50代前半にかけては罹患率がピークを迎えるらしい。仕事、家庭、育児、介護など、沢山のタスクを抱え、ついつい自分のことは後回しになってしまう忙しい世代だからこそ、自分でがんを発見するには本当に難しい。だからこうして、ドックでがんを見つけてもらい、変わらない日々が送れていることは奇跡的でとても幸せなことだと強く感じる。
 そして…あっという間に1年が経ち、今年もいよいよドック受診日がやってきた。もし昨年のドックでがんを発見できていなかったら…、見つかるタイミングが少しでも遅れていたら…と思うと、本当にドキッとしてしまう。つい先日、晴れ着に身を包み成人式を迎えたばかりの娘にも、ハタチの心構えと共に健康の大切さと健診の重要性、そして乳がんのセルフチェックについてもしっかり語り継いだところだ。
改めて…私の「変わらない日々の幸せ」があるのは厚生連の医師、看護師、技術、スタッフ、携わってくださった全ての皆さまのお陰である。そして「変わらない日々の幸せ」だけではなく、「これからの未来」までをも、力強く守ってもらったことを私は心から感謝している。
 私達の健康を守ろうとする強い信念に基づく確かな医療技術と、真のホスピタリティを併せ持つ、最強で最高の山梨県厚生連健康管理センター。私はこれからもこのスペシャリスト達に守られながらドックを受け続け、「変わらない日々の幸せ」と「ステキな未来」をずっと積み重ねていきたいと思っている。