TOP第11回入賞作品第11回 佳作 「日本の健診と連携スピードはすごい!」
最終更新日 : 2025/07/01

第11回 佳作 「日本の健診と連携スピードはすごい!」

「日本の健診と連携スピードはすごい!」
林 尚美さん(兵庫県)

2024年1月3日、私以外の家族が実家に帰っている間に片付けと掃除をしようと掃除機を持ち上げた時に、なぜかふと自分の胸が気になって、乳がんの自己チェックを始めた。左手で右の、右手で左の乳房の脇に触れてみて何もないのを確認して、安堵してまた掃除機を持ち上げようとした時に、「いやいや、いつもと違うところもチェックしてみよう。」と、再度普段気にしていない左乳房の脇の下の方を触った時、戦慄が走った。

「何かある。」

不自然なボタンの大きさの塊がある。しかも二つも。

 途端に頭がぐらっと揺れて、なんとか体勢を戻した私は、

「嘘だ。がんじゃないよね。」

一昼夜悩んで1月5日の朝イチで、仕事始めのかかりつけの女医さんのクリニックに行った。ここは市の健診の指定医でもある。

 きっと年明けでものすごく混んでいるんだろうと思ったら反対にガラガラで、すぐに名前が呼ばれて診察室に入ると、いつものニコニコの女医さんが待っていてくれた。

「今日はどうされましたか?」

「今年度、まだ受けていなかったので健康診断をお願いします。それと胸にしこりらしきモノがあるのですが…。」

言うが早いか、医師はどれどれと私が指を差す箇所に触れた途端、

「これはあかん!すぐ専門医に行って!今日!今日!」

と言いながら、自分のスマホを取り出して、すぐに近くの乳腺クリニックの検索をし始めた。そして、

「ここは私の友達が経営しているクリニックだから、今すぐ紹介状を書くね!それ持って今日午後イチで行ってきて。検索できる?」

と聞くので、私がスマホでサイトを開けると、そのクリニックの午後2時のボタンを押すように促され、その通りにして予約を取った。

 目指す乳腺クリニックに時間通りに着いて、すぐに診察が始まった。

 朝のクリニックで言った通りのことを院長に告げると、触診してからエコーでの検査が始まった。続いてマンモグラフィーも終えた後、

「99%がんです。」

 医師は意外と普通に、ただ私の顔を真っ直ぐに見て告げた。

 なぜ即日告知だったかと言うと、私は1週間後に仕事で半年ほど日本を離れることになっていた。それを知っていた医師は、普通は一人で来た人に告知はしないと前置きしてから告知してくれたのだった。

「日本にいる時にわかってよかった!」

これが私のがんを告げられた時の最初の感想だった。海外でなかなか検査を受けられず、手遅れで星になった友人が3人もいる。

 もし私がアメリカに滞在していて同じことになっても、予約が取れるのは次の月か数ヶ月後と言うこともあるし、診てもらえても運が悪いと見立ての悪い医師に当たって何も異常はないと言われることが多々ある。星になった内の2人はそのケースだった。

 日本は主治医制ではないが、その反面スピード感がすごい。当日告知なんて海外では考えられないことだ。そのおかげで私は命拾いした。健診医で内科の女医から乳腺科の女医への連携後、生検の手続きが即日行われ、生検を受けて大学病院への紹介状を渡されたのがそれからたった4日後だった。

 最終的な結果は、ステージ2。でも一番進行の早いHER2の+3と言うタイプだった。半年も放っておいたら状況はかなり悪くなっていたはずと、治療にあたっている大学病院の医師は言う。日本の医療関係者は気がついていないかもしれないが、まず健診を受けられるスピードと、そこからの連携スピードが世界一速いと私は感じる。健診機関にもよるが予約が取りやすい、判断が早い、行動が早い。

 だから私のように助かる命が増える。

 これらは日本の健診を行う医療従事者や、受ける人たちももっと知るべきだし、誇るべきだと思う。

 私は今回のことでそれがしっかりわかったし、関係者には感謝の気持ちでいっぱいだ。がんが治っても、引き続き定期的に健康診断に行こうと思
う。