質問: 新型コロナウイルスの蔓延を理由に旅行者から海外航空券(手配旅行契約)をキャンセルする旨の連絡を受けたので、航空会社に対して取消手続きを行った。
(1)その航空会社は「払い戻しの返金は6か月後」になるとのことだが、旅行者への返金も6か月後でも良いのか。
(2)航空会社はその後に経営破綻したため航空券代金の払い戻しがなされない見通しであるが、当社は旅行者に払い戻しをする義務があるのか。
【回答】
(1)旅行業者から旅行者への払い戻しは6か月後に行い、また、(2)航空会社が払い戻しをできない場合には旅行業者が旅行者へ払い戻しをする義務はありません。
手配旅行契約とはその言葉どおり、旅行を手配する契約であり、「当社が旅行者の委託により、旅行者のために代理、媒介又は取次をすること等により旅行者が運送・宿泊機関等の提供する運送、宿泊その他の旅行に関するサービスの提供を受けることができるように、手配することを引き受ける契約」をいいます(手配約款第2条1項)。
したがって、航空券の手配にあたって旅行業者は、以下の立場となります。
i)航空会社との間でIATA代理店などの航空運送代理店契約があれば航空会社の代理人(航空運送代理店)の立場 (注)
ii)航空運送代理店契約がなければ旅行者の代理人の立場(航空会社に航空券を買いにいく立場)
そして、上記i)ii)のいずれにおいても航空運送契約は旅行者と航空会社との間に成立し、旅行業者は代理人の立場にすぎません。
(1)については、契約の当事者の一方である航空会社が「払い戻しの返金は6か月後」としていることから、i)の場合は、旅行業者は航空会社の代理人として旅行者に対して「6か月後の返金」を案内することになり、ii)の場合では、航空会社から「6か月後の返金」の案内を旅行者の代理人として受けたことになりますので、その旨を旅行者に案内すれば良いことになります。
(2)についても、i)の場合は、航空会社が旅行者に対して負う航空券代金返還債務を、その代理人にすぎない旅行業者(航空運送代理店)が負うことはなく、ii)の場合も、委託をした旅行者の代理人である旅行業者が航空券代金返還債務を負う理由はありません。
(注)判例では、航空運送代理店資格を併せ持つ旅行業者が旅行者と契約を結ぶ場合、それが航空券の販売契約に止まるものであるかあるいは手配旅行契約に当たるものであるかはその契約の具体的内容如何によって決定されるとされていますが、本問では手配旅行契約との前提としました。なお、航空券の販売契約に止まるものであっても考え方は上記i)と同様です。