TOP25. その他NO.197 募集型企画旅行の旅行代金を誤って過少表示した場合、旅行業者は錯誤を理由に契約を取り消せるか。
最終更新日 : 2026/03/06

NO.197 募集型企画旅行の旅行代金を誤って過少表示した場合、旅行業者は錯誤を理由に契約を取り消せるか。

質問: ウェブサイトに募集型企画旅行の旅行代金を誤って過少に表示して旅行契約を締結してしまった場合、契約を取り消すことはできるか。

【回答】

 契約の重要な要素について誤解したまま行った意思表示を民法では「錯誤」といい、旅行業者が旅行代金を誤って過少に表示した場合もこれに該当するといえます。「錯誤による意思表示は取り消すことができる」(民法第95条第1項)とされていますが、錯誤であっても、「表意者の重大な過失によるものであった場合」には取り消すことはできません(同第3項)。
 本件のように、ウェブサイト上で過少な代金表示をしてしまった場合でも、旅行業者は旅行契約の「錯誤取消」を主張できるのでしょうか。

 通達「インターネット取引を利用する旅行業務に関する取扱について」(国総観事第289号)では、旅行業者がインターネットを利用して旅行契約を成立させる際には、旅行者が入力内容を確認できるページを設けた上で、旅行者に確認のアイコンをクリックさせる等して了承を得た場合に限り契約を締結できるものとすることが求められています。
 これは、旅行者による契約内容の誤入力を防止するための措置であるのに加えて、万が一、旅行者が「誤って契約したので取り消したい」と主張した場合であっても、確認ページを経て契約している以上、その錯誤は旅行者の「重大な過失」によるものとして取り消すことはできないという、電子消費者契約法第3条ただし書きとも整合するものです。
 旅行者が錯誤取消を主張することができない根拠ともなる確認ページを旅行業者が設けて契約成立に至っている以上、旅行業者自身が「旅行代金を誤って過少に表示したので錯誤取消したい」と主張することに合理性を見出すのは難しいと言わざるを得ません。旅行業者にも「重大な過失」があったと判断される可能性が高いと思われます。

 なお、表意者に「重大な過失」があっても、相手方が表意者に錯誤があることを知っていた場合には取消しの対象となり得る(民法95条第3項第1号)ことから、過去には、旅行業者が旅行者の悪意(表示されている旅行代金が誤っていることを知っていた)を主張したケースもありました。裁判例には、その主張に対する直接的な判示ではないものの、一般的に海外旅行の代金が条件等によって様々であること等を理由に、旅行者が誤表示であることを認識していたとまでは認められないと述べられた例もあります。
 「重大な過失」の有無は、実際には個別具体的に判断されることになり、金額の乖離の程度によっても異なる判断になることが考えられますが、電子商取引において価格は最も重要な要素のひとつであり、「重大な過失」が認められる場合が多いものと思われますので慎重な対応が求められます。

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