TOP19. 賠償責任NO.146 手配旅行契約で海外航空券の手配を引き受けたが、旅券の残存有効期間不足により出国できなかった場合、当社の責任はあるか?
最終更新日 : 2024/03/18

NO.146 手配旅行契約で海外航空券の手配を引き受けたが、旅券の残存有効期間不足により出国できなかった場合、当社の責任はあるか?

質問: 海外航空券のみを手配旅行契約で引き受けた。渡航先である○○○○共和国への入国には旅券の残存期間が入国時に6ヵ月以上必要と定められていたが、お客様の所持していた旅券はその条件を満たしておらず航空会社により搭乗を拒否されてしまった。お申し込みの際には「ご旅行に要する旅券・査証・予防接種証明書等の渡航手続は、お客様ご自身で行ってください。」と記載した取引条件説明書面を交付しているが、お客様は「前回、航空券を申し込んだときに旅券のコピーを提出しているのだから、旅行会社が確認するべきだ」と主張している。当社に責任はあるのか。

【回答】

 標準約款手配旅行契約の部第2条1項によれば、手配旅行契約とは「当社が旅行者の委託により、旅行者のために代理、媒介又は取次をすること等により旅行者が運送・宿泊機関等の提供する運送、宿泊その他の旅行に関するサービスの提供を受けることができるように、手配することを引き受ける契約」となっています。

 本問のケースでは、旅行業者は航空券の手配を行うことが手配旅行契約に基づく債務であり、旅券の残存有効期間の確認までは含まれません。

 また、「ご旅行に要する旅券・査証・予防接種証明書等の渡航手続は、お客様ご自身で行ってください。」と記載した取引条件説明書を交付していれば、旅券や査証などについて必要な手続きはお客様自身が行うものとして、手配債務に残存有効期間の確認が含まれていないことを確認したといえますので、航空券代金の全額までを返金すべき理由はないものと考えます。

 ただし、過去の取引で旅券のコピーを預かったような場合、その理由がスペルの確認であったとしても、お客様は旅券の残存期間まで確認することを暗に期待されますし、この期待はリピーターになるほど膨らみます。

 このような場合には、渡航手続きの代行をしないことを取引条件説明書で明確にしたとしても、信義則上、旅行者には“一般的な案内”として旅券の残存期間を伝えるべき義務があったと考える余地がないとは言えません。“一般的な案内”とは、どの範囲までを指すのかはケースバイケースになりますが、本問のケースでは渡航先国の安全情報や査証必要の有無、入国に必要な旅券の残存期間などの情報提供が想定されます。