質問: 旅行者と交した契約書面の保存期間については規定があるのか。
【回答】
旅行業法上に保存期間についての直接の規定はありません。
そもそも契約書を保存する意味合いは、契約内容や旅行者とのやり取りなどの事実関係の記録を明確に保存することによって将来起こるかもしれない苦情やトラブルに備えるためです。
標準約款では、旅行者が旅行業者の故意又は過失によって損害を被ったときは、損害発生の翌日から起算して2年以内に旅行業者に通知があったときに限り旅行業者は損害賠償責任を負うと規定しています(募集型企画旅行の部第27条1項・受注型企画旅行の部第28条1項・手配旅行の部第23条1項)。旅行者との取引に関しては旅行終了日から2年間は苦情等の通知が来る可能性がありますので、少なくともこの期間中は旅行者との契約内容や事実関係の記録を保管しておく必要があるでしょう(※)。
また、ウェブ取引における取引条件の説明に関して、省令では最低2年間、記録の保存を義務付けています(契約規則第6条2項2号)。旅行者が旅行業者の用意した専用のフォルダー(いわゆる「マイページ」)に保存されたデータを閲覧する方法により取引条件の説明をする場合は、旅行終了日の翌日から2年を経過した日(その間に苦情の申出があれば苦情が解決した日のいずれか遅い日)までの期間は、旅行業者は、これを消去又は改変できません。
以上のことから、最低でも2年間保存しておけばほぼ良いことになりますが、消滅時効は債権者(旅行者)が権利を行使することが出来ることを知った時から5年間(民法第166条1項1号)ですので、例えば2年を超えて旅行代金の精算が済んでいないというような特別な事情があれば、5年間は保存することが望ましいでしょう。
また、保存方法については、万一、苦情やトラブルが発生した際に直ぐに検索できるように保管してあれば良く、実務では、書面は書面のままで、電子データは電子データのままで保存するのが通常でしょう。
なお、領収書の控えは、旅行契約の成立時期を明示する契約書面の一部となりますが、同時に経理書類でもありますので、経理のルールに従う必要があります。
※渡航手続代行契約及び旅行相談契約については、この通知期間は「損害発生の翌日から起算して6ヶ月以内」となります(渡航手続代行の部第8条1項・旅行相談の部第6条1項)。