質問: 旅行者が宿泊した旅館から問い合わせがあり、旅行者の携帯電話番号やクレジットカード番号を教えてほしいと言う。冷蔵庫の利用について未精算のままチェックアウトしたようだ。A社パッケージの受託販売だったのでA社に問い合わせたところ「販売したのは貴社であるから、そちらで対応してほしい」と言われた。旅行者はA社には自宅の電話番号しか伝えていないようだ。
【回答】
旅行者の携帯電話番号は、旅行者の氏名と照合すれば特定の個人を識別することができますので個人情報に該当します。
本問では、貴社はA社の代理人として旅行者との間で募集型企画旅行契約を締結し、その契約に基づき携帯電話番号を取得したものと考えられますので、A社が旅行者の個人情報を取得したことになります。したがって、本来はA社が携帯電話番号を貴社に問い合わせたうえでA社から旅館に通知すべきであり、旅館には「A社を通じて問い合わせてください」と貴社は回答すべきものと考えます。
A社は、自らの判断で旅館に対して携帯電話番号を通知すれば良いのですが、通常、旅行業者が旅行者の個人情報を取得した際に公表又は明示している利用目的は、「旅行者への連絡」と「手配に必要な範囲内での運送・宿泊機関等への提供」等となっています(「JATA個人情報取扱ガイドライン」44ページ参照)ので、旅館に個人データを知らせた場合には、「利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱って」いるとしてクレームが入る危険性があります(個人情報の保護に関する法律第16条1項・第23条1項)。
そこで考えられる方法としては、旅行者に連絡をして、旅館に電話番号を教えて良いのか確認を取ることですが、旅行者がこれを拒否した場合には情報提供するべきではありません。仮に旅館が警察署に被害届を出した場合は、警察署からA社に対して「捜査関係事項照会」がなされることがあります。その照会に対して回答するという方法を採るのであれば、「警察の犯罪捜査に対して任意の協力をした」という形で正当に情報提供をすることが可能です(刑事訴訟法第197条2項・個人情報の保護に関する法律第16条3項4号)。
次にクレジットカード番号ですが、これは貴社やそのカード会社から見れば特定の個人を識別することができますのでやはり個人情報となります。
こちらはA社の代理人として個人情報を取得したものではなく、カード会員への信用販売のために、貴社はカード加盟店としてカード会員の個人情報を取得したことになります。したがって、上記と同じ理由で、旅行者の同意を得ないでクレジットカード番号を旅館に提供することはできません。
また、カード会社と加盟店との間のカード加盟店契約には、クレジットカード番号等の会員情報をカード会社の機密情報として管理し第三者に漏えいしてはならないといった機密保持の条項や、これらに違反した場合は契約の解除事由になるとの条項が規定されているのが通例であり、やはり第三者である旅館にこれを通知することはできません。もし、警察署から「捜査関係事項照会書」によりクレジットカード番号を問い合わせてきた場合は、カード会社に相談してください。