質問: ある募集型企画旅行のパンフレットには、「市内観光は放棄できません。」と注意書きをしているにもかかわらず、市内観光を放棄するお客様が絶えない。「市内観光を放棄したら違約金5,000円をお支払いただきます。」と記述することは可能か。
【回答】
市内観光を放棄したら違約金を支払っていただく旨を記述することは好ましくありません。
募集型企画旅行における旅行者の債務は、「旅行代金を支払うこと」(標準約款募集型企画旅行の部第12条1項)だけであると考えるならば、旅行者が市内観光に参加しないことは、正に「権利放棄」のみであって、そこに債務不履行は生じないことになります(市内観光の放棄が団体行動における指示違反(第24条)を構成するような場合は、債務不履行となる可能性があります。)。
債務不履行が無ければ損害賠償を請求できる前提がないことになり、違約金の請求は出来ないという考え方になります。
一方で、この募集型企画旅行契約は市内観光に参加することが条件となっていることから、旅行者は市内観光に参加する債務を負っており、これに参加しないことは債務不履行になるとの考え方を採った場合は、民法では債務不履行について「賠償額の予定」として当事者間であらかじめ損害賠償額を決めておく特約を結ぶことができると規定していますので(同第420条1項)、違約金(損害賠償金)を収受することは可能と考えられます。
しかしながら、この特約が標準約款が認めていない「旅行者の不利になる特約」(募集型企画旅行の部第1条2項)に該当するか否かを考える必要があり、違約金の支払いを定めた規定は旅行代金の不払いの場合(同第17条2項)にしかないことを考慮すると、違約金を請求するという特約は「旅行者の不利になる特約」に該当するものと考えるのが妥当でしょう。
いずれにしても違約金の請求には否定的な結論になるものと考えます。