質問: お客様が脳梗塞で階段から落ちて死亡した。保険会社は、お客様の持病なので特別補償保険の適用外だというが、階段から落ちたのが原因で脳梗塞になったとしたら「急激かつ偶然な外来の事故」によると言えないのか。逆に脳梗塞が原因で階段から落ちたときの外傷によって死亡したとしたらどうなのか。お客様に「保険会社が適用外と言った」とそのまま伝えると、「判断するのは旅行会社だろう」と言われるかも知れない。
【回答】
旅行中に旅行者が死亡した場合に、それが補償金の支払対象になるものか否か直ちには判断できないケースがあります。
このような場合は、あまり結論を急がずに、関係書類を精査したうえで判断することが必要です。ご遺族からの問い合わせについても、「関係書類を見た後でなければ判断できません。」とはっきり伝えることが重要です。
特別補償規程では、死亡補償金を請求するにあたり公の機関の事故証明書や旅行者の死亡診断書・死体検案書などを提出することを請求者に義務づけています(同規程第14条1項)が、これらの書類は事故の状況、死亡の原因を証明する書類でもあります(実際の事故処理の局面では、これらの書類は、ご遺族からの請求書に添付されたものを受け取る前に、旅行業者が事故処理の過程で手に入れることがあると思います。)。
旅行業者は、事故証明書に記載された状況と死亡診断書に記載された死亡原因から、まず、(1)旅行者が「企画旅行参加中に急激かつ偶然な外来の事故によって傷害を被り(同第1条1項)、その直接の結果として死亡した(同第6条)」ものであるかどうかを判断し、次に、(2)特別補償規程に定める免責事項に該当しないかどうかを判断することになります(本問の事例では同規程第3条1項6号に該当するか否がポイントになるでしょう。)。
この判断にあたって保険会社の意見を聴くことは大変有効です。なぜなら、特別補償規程の条項は、それが創設された当時の傷害保険の約款をベースに作られ、また、旅行特別補償保険の約款の重要な部分は特別補償規程の条項と同じ内容の規定になっており、特別補償金の支払と旅行特別補償保険の保険金の支払いは表裏一体のものと言えるからです。そして、保険会社には、数多くの傷害保険についての処理実績があり、そのノウハウも利用できます。
しかし、特別補償規程は旅行者と旅行業者との契約なので、旅行者に対しては、あくまでも「当社の判断」として伝える必要があります。そのためにも、旅行業者の担当者は事故証明書の内容や死亡診断書の内容を理解してご遺族に説明できるようにしておくことが必要です。また、保険会社と十分な意見交換をして死亡補償金(=旅行特別補償保険の保険金)の支払の可否を決めておく必要があります。
事故と死亡の因果関係を巡る協議が決着できない場合は、最終的には民事訴訟で裁判所が判断する場合もあります。