TOP22. 個人情報の取扱いNO.166 旅行者同士の傷害事故で、被害者が加害者の保険で治療代を支払わせるので住所を教えろというが、どうしたら良いか?
最終更新日 : 2024/03/18

NO.166 旅行者同士の傷害事故で、被害者が加害者の保険で治療代を支払わせるので住所を教えろというが、どうしたら良いか?

質問: 海外旅行で市内観光中、旅行者どうしがぶつかって一方が怪我をした。被害者は日本に帰ってから入院したが、「俺の傷害保険を使いたくない。相手が入っている賠償責任保険で支払って欲しい。」と言い、このため、「相手の住所を教えろ」と言っている。どうしたらいいか。

【回答】

 同意なく加害者の住所を電話等で被害者に教えることは、形式的には個人情報保護法で禁止された「個人情報の目的外利用」(個人情報保護法第16条1項)になる可能性があり、本人の同意を得ない第三者提供として(同法第23条1項)、損害賠償を請求される危険性がありますので慎重な対応が必要です。

 旅行会社としては双方に連絡先の交換について打診し、同意がある場合に限り連絡先を開示して、あとは当事者間で直接やり取りしてもらうのが現実的な対応と思われます。

 また、被害者の「相手が入っている賠償責任保険で支払って欲しい。」という主張については被害者が加害者に対して法的主張をすればよいことです。賠償金の支払いにあたって保険を使うかどうかは加害者が決める問題だからです。

 本問のようなケースについては、事故発生時に現地の警察に連絡することが望まれます。また、後日の話し合いに備え、その場で当事者の氏名、住所、電話番号等を交換してもらっておくべきでしょう。

 仮に、双方が警察に連絡することを望まなかったような場合でも、後になって、旅行者が掛けている傷害保険等の保険金請求、また旅行業者の特別補償規程の補償金の請求などに支障が生じる可能性があること(注)などを説明したうえで、当事者に判断していただく必要があります。

 また、一連の経緯をしっかりと記録しておき、後日に備えておくことも必要です。間違っても、スケジュールの都合を優先して、旅行業者サイドから旅行者に「警察に連絡することを思いとどまらせる」ようなことがあってはいけません。

 注: 特別補償規程の入院見舞金や通院見舞金等の請求、海外旅行保険の治療費用保険金請求にあたって、「公の機関(やむを得ない場合には第三者)の事故証明」を提出しなければならないとされています。(東京海上日動火災保険(株)の場合:特別補償規程第14条、海外旅行保険治療・救援者費用担保特約条項第11条他)