質問: 風邪をひいて旅行に参加できなくなった旅行者が取消料を支払いたくないので、「同行のお客様にうつすなど、“他の旅行者に迷惑を及ぼす”おそれがあるので旅行業者側が旅行契約を解除せよ。」と、約款を引き合いに出して要求してきたがどうすれば良いのか。
【回答】
この規定(標準約款募集型企画旅行の部第17条1項3号)は、本来、旅行業者は旅行を提供するという義務を負っているところ、旅行者が他の旅行者の目に余るような行動をとるおそれがあることが客観的に認められる場合に、旅行業者の権利として旅行契約を解除することを認めたものです。旅行者自らこの規定を根拠に「旅行契約を解除せよ」と要求するのは筋違いといえます。
常識ある旅行者のみであればこのような規定は不要ですが、非常識な旅行者が無理をして参加すると主張すれば、他の旅行者にもご迷惑がかかりますし、病気によっては航空機の搭乗も拒否されるおそれがあることから、旅行業者側にも解除権を置いたのがこの規定の主旨です。旅行者が取消料の支払いから逃れようとするために、「旅行業者から解除権を行使せよ」と主張するのは本来筋違いです。
旅行者には、この規定の適用が無いことを根気強く説明して、旅行者から契約を解除していただくように案内をしてください(病気を他の人にうつす可能性が強いことを知っていながら強引に旅行に参加して実際に感染させた場合、当該旅行者自身が賠償責任を問われる可能性もあります。)。
体調管理は旅行者自身が行うべきものであり、風邪をひいて旅行に参加できなくなってしまったのは個人的な事情ですので、旅行者は取消料を支払って契約を解除するのが原則です(同第16条1項)。
しかしながら、説得してもなお応じていただけない場合に旅行者の容態によっては旅行業者から契約を解除しなければならない事態もありえますが、この場合は旅行者から取消料をいただくことはできません。