質問: 旅行者本人が死亡したことに伴い旅行代金を返金するが、法定相続人の誰に返金すればよいか。
【回答】
法定相続人の特定にあたっては、遺族から亡くなった旅行者の出生から死亡に至るまでの全ての戸籍謄本(除籍謄本)を提出してもらい、これを詳細に調べなければなりません。こうして法定相続人を特定したうえで遺産分割協議書を作成してもらうか、そのうちの一人に代表者となってもらい、その代表者に支払うことについての他の法定相続人全員の同意書(必要に応じて印鑑登録証明書を添付)を提出してもらうなどの作業が必要になります。
しかし、さほど大きくない金額の払い戻しに際して、このような負担を遺族に求めれば、「杓子定規に過ぎる。」と非難されることが予想されます。そのような場合には、亡くなった旅行者の一番親しい法定相続人の方に、例えば、「私は、故○○○○の法定相続人を代表して旅行代金の払戻金を受領します。もし、他の法定相続人との間で紛争が生じた場合は私の責任で処理し、貴社には一切の迷惑をおかけしません。」というような文言を記載した領収書と引き換えにして払い戻すのもひとつの現実的な方法です。
このような簡便な方法は、法的に考えた場合は必ずしも万全な措置とはいえず、後日、他の法定相続人から請求があった場合には、旅行業者がトラブルに巻き込まれる可能性がないとは言えません。そのようなリスクを避けるために、杓子定規に先に述べたような方法を取るのか、あるいはそのようなリスクを承知のうえで簡便な方法を取るのか、それぞれのケースごとに申込時の状況、金額などを勘案して旅行業者が判断しなければならないでしょう。
ちなみに、特別補償規程に基づく死亡補償金の支払いのように大きな金額を支払う場合は、法定相続人を厳密に特定しなければならないことはいうまでもありません。このため、特別補償規程では、死亡補償金の請求にあたっては、旅行者と法定相続人の戸籍謄本(除籍謄本)や法定相続人の印鑑登録証明書などの提出を求めています。(同規程第14条)