TOP14. 特別な配慮を要する参加者NO.101 ハイキングツアーに参加する妊婦から念書を取っても良いか?
最終更新日 : 2024/03/18

NO.101 ハイキングツアーに参加する妊婦から念書を取っても良いか?

質問: 旅行先地でのハイキングを含む日程の海外募集型企画旅行に妊娠6か月の方が参加を希望している。ついては「旅行中に本人の体調が悪くなっても自己の責任であること、保護措置に係る費用一切は本人が負担すること」についての念書を差し入れてもらおうと考えているが、念書作成上の注意点を教えてほしい。

【回答】

 旅行業者が「念書」という場合には、多くの場合、旅行業者の責任を免除することを内容とするものが多いようですが、旅行業者の法律上の責任を軽減したり、免除したりすることには役立たないケースがほとんどです。

 「旅行中に本人の体調が悪くなっても自己の責任であること」とする念書があったところで、実際に旅行者が何らかの保護を必要とする状態にあることを旅行業者が知ったときに、「旅行業者は何らの措置もしないでも良い」ということにはなりません。

 標準約款では「保護を要する状態にあると認めたときは、必要な措置を講ずることがあります。」(募集型企画旅行の部第26条)と規定されていますが、このような規定がある以上、信義則上も、旅行業者には保護措置をとる義務があると考えられます。

 また、「保護措置に係る費用一切は本人が負担する」と記載することについては、既に標準約款に規定があります(募集型企画旅行の部第26条)ので、旅行者に再確認してもらう意図であればそれなりの意味があるものと考えられますが、敢えて「念書」という方法で確認することには抵抗感を示す消費者も少なくないでしょう。

 これらのことから、「念書」を提出してもらったとしても、旅行業者には法律的には何の利益もないと思われます。

 なお、企画旅行業者が旅行者の参加を認めるのであれば、突然の容態の変化があったときに、迅速に医療機関への移送手配ができる体制にあることなどを確認したうえの判断であるべきだと思います。そのようなチェックをせずに漫然と参加を認めた場合には、たとえ本人から「念書」をとってあったとしても、旅行中に何かの損害があれば旅行業者に損害賠償責任があると判断される可能性は否定できません(個々のケースについては、実際に裁判で争ってみないと分かりません。)。そのような確認ができないのであれば、「当社の業務上の都合があるとき」(標準約款募集型企画旅行の部第7条八号)に該当するとして、旅行契約の締結を拒否するのが無難と思われます。

 旅行者の参加の可否の判断は、企画旅行業者がその責任において行うべきものであると考えてください。