TOP17. 契約内容の変更NO.201 企画旅行契約締結後の円安や原油高に伴う「旅行代金の値上げ」は可能なのか?
最終更新日 : 2026/07/16

NO.201 企画旅行契約締結後の円安や原油高に伴う「旅行代金の値上げ」は可能なのか?

質問: 昨今の円安・物価高騰により、すでに旅行契約を締結済みのツアー(企画旅行)の仕入れ値が当初の想定を大きく超えてしまう事態が生じています。このような場合、旅行業約款第14条を根拠として、旅行者に対して旅行代金の増額(値上げ)を請求することは可能でしょうか?

【回答】

 結論から申し上げますと、昨今のインフレや円安、燃油高を理由に、すでに契約が成立している旅行代金を後から値上げすることは、実務上きわめて難しく、原則としてできないと考えるべきと思われます。

 標準旅行業約款(募集型企画旅行契約の部、受注型企画旅行契約の部)第14条第1項には、「利用する運送機関の運賃・料金が、著しい経済情勢の変化等により、通常想定される程度を大幅に超えて改定された場合」に旅行代金を変更できる規定がありますが、法には「一度成立した契約は守らなければならない」という大原則(契約の拘束力)があります。そのため、後から契約内容の変更を例外的に認める「事情変更の原則」について、裁判所は適用に極めて慎重です。最高裁判所の判例ではゴルフ場の法面が崩壊して巨額の改修費用が発生したため会員の優先利用権を消滅させた例などで事情変更の原則の適用を否定しています。契約締結後の事情変更が当事者にとって予見不可能であり、かつ責めに帰すことのできない事由であること、事情変更により当事者を契約に拘束することが信義則上著しく不当と認められることなど厳格な要件が求められており、経済情勢の変動を理由とした契約内容の変更は容易に認められません。

 一般的に旅行契約は、契約締結から出発日までの期間は長くとも半年程度です。昨今の社会情勢や燃油高騰を踏まえても、その短期間に契約締結時には想定できなかったような極めて急激かつ特殊なインフレ等がない限り、「著しい経済情勢の変化」とは認められにくいと考えられます。

 今後、万が一オイルショックに匹敵する急激なインフレが発生した場合には、改めて約款第14条1項の適用を検討すべき余地が生じると思われますが、現段階ではまだその状況に至っていない(その段階にない)と考えるのが妥当でしょう。