TOP日本剣道形について剣道形を学ぶ意味がわかりません
最終更新日 : 2020/04/17

剣道形を学ぶ意味がわかりません

たしかに日本剣道形は、現代剣道とかけ離れた構えや技(八相、脇構え、折敷の胴など)があり、多くの方が昇段審査の前ににわか仕込みで覚えるくらいのもので、剣道形を学ぶ意味がわからないと思うのも当然かもしれません。

2017年剣道指導者講習会(勝浦市)にて、剣道形講師の中田琇士範士八段(警視庁)から次の説明がありました。

剣道形を指導する際に、いきなり実技指導に入るのではなく、はじめに剣道形が制定された経緯や学ぶ目的について説明してほしい。ここが腹に落ちていないと剣道形の意義が理解できず学習効果が低くなる、と述べられていました。

そこで簡単に経緯と目的にふれたいと思います。

そもそも剣道は形の文化によって伝承されてきた歴史があります。

平安時代に日本刀が生まれ、武士が台頭し、真剣勝負で培った技を形として後世へと残してきました。

竹刀や防具が発明されていない時代の武士たちは伝えられた形の修練を積み重ね、真剣勝負に挑んでいました。

江戸時代になり、世が泰平になるにつれて形稽古の実戦性が薄れていき、実際に相手と打ち合うことができる竹刀と防具が考案されました。

形稽古と違って、安全に相手と打ち合うことができる竹刀剣道の面白さは一気に広がり、現代の剣道に至ることになります。

競技性の強い竹刀剣道が普及した半面、見切り、太刀筋といった昔の武士が真剣勝負の場で培ってきた技の奥義や、人間完成への高邁な精神世界など形稽古で学ぶことができた貴重な機会も同時に失っていきました。

そこで生まれたのが大正元年に制定された剣道形です。

剣道形には、一刀流をはじめ、神道無念流など様々な流派の優れた要素が盛り込まれており、剣道理念の剣の理法(心法、刀法、身法)そのものであるとも言われています。

だからと言って、今の時代に剣道形の稽古だけおこなうというのは違和感のある修行方法と言えるでしょう。

竹刀剣道と剣道形は車の両輪のような存在と言えます。スピードと力による叩きあいに陥りがちな竹刀剣道に、剣道形で学ぶ剣の理合を活かすことで、生涯剣道に通じる理合の剣道の習得を目指す、、これが剣道形を学ぶ目的です。

剣道形は打太刀と仕太刀との間で決められた動きを何度も何度も繰り返す形稽古です。

剣道だけに限らず決められた動きを繰り返し修練し最終的にそこから脱していくのが昔からの日本の稽古法であり、このような形文化は日本ならではの伝統なのだそうです。

伝統でもあり奥義でもある剣道形を学び、後世に継承していくことは剣道人である我々の使命なのかもしれません。

以上です。