2022年6月にスポーツ庁での有識者会議で提言された、公立中学校における休日の運動部の部活動を外部に移行する部活動改革の1つです。
移行先には地域のスポーツクラブや民間企業、スポーツ少年団などが想定されており、移行先では複数の中学校で集まることが可能となります。
従来の部活動では主に教員が指導を行っていましたが、部活動の地域移行では外部の部活動指導員が行うことになります。2023年度から3年間を「改革推進期間」とし、今後地域移行の準備が進められる予定です。
運動部の地域移行が先に進められる予定ですが、文化系の部活動においても運動部と同様の地域移行が行われると見込まれています。
なぜ中学校の部活動が地域に移行するという話になったのか?といいますと、2つの要因があります。
1つは、「少子化」、そして2つめは「教員の働き方改革」です。
1つめの「少子化」という要因ですが、少子化によて部活動が減少してきており、公立中学校の生徒数は1986年(昭和61年)以降、右肩下がりで減少しています。これは出生率の低下によるもので、今後もさらなる生徒数の減少が見込まれます。中学校の生徒数そのものが減っているため、部員が集まらない部活も増えており、特にサッカーや野球のように1チームあたりの人数が多いスポーツでは、やりたいスポーツができなくなる状況も考えられるでしょう。そんな中でも、複数の学校が地域のスポーツクラブなどに集まって部活動ができれば人数確保もできることでしょう。
このように、少子化による生徒数の減少からの部活動の減少を改善することが、部活動の地域移行の目的の1つです。
2つめの「教員の働き方改革」という要因ですが、中学校の部活動で指導を担当する教員は、当然ながら通常の授業も担当しています。平日朝から授業を行い、放課後に部活動の指導も兼務する教員は長時間労働となりがちで、さらに休日でも練習での指導や大会などへの引率なども行うことは、教員にとって負担が大きいものとなっていました。そこで教員の働き方改革の一環として部活動の地域移行を進め、地域の人材が部活動の指導を行うことにより、教員への負担を減らせる期待ができるというわけです。教員にとっては負担が減る上に、より授業へ注力しやすい環境を作れます。
上記はメリットについて2つ挙げましたが、デメリットも2つ考えられます。
1つは「家庭の費用負担」の問題、2つめは「人材確保」の問題です。
1つめの「家庭の費用負担」の問題ですが、これまで基本的に学校内で行われてきた部活動は、主に教員が指導を担当していたため、保護者の金銭的負担は最小限で済んでいました。しかし地域移行が進むと、部活動が地域のスポーツクラブや民間企業などに移行されるため、移行先への会費や指導料など月謝の支払いが必要となります。学校から離れた場所で部活動が行われる場合は生徒の送迎も必要となるため、学校内での部活動ではかからなかった送迎費用がかかる可能性もあり、結果的に学校外での部活動に参加するための費用負担が増えてしまうのです。困窮家庭が増加している現在、部活動にかかる費用負担が増えると家計を圧迫しかねず、経済状況が原因で参加できなくなる生徒が増え、生徒間での格差が生まれることが懸念されます。
2つめの「人材の確保」の問題ですが、部活動の地域移行では、人材確保も大きな課題です。外部の部活動指導員の確保は簡単ではなく、都市部と地方、スポーツの種類によっても人材確保に関わる状況は大きく変わってきます。地域内で指導に携われる人材を探そうとしても、特定のスポーツでは適切な人材が見つからないこともありえるでしょう。すると、競技内容や居住地域によっては参加できないスポーツが出てくることが想定でき、居住地域によって部活動への参加機会の格差が生じる可能性も考えられます。
では、部活動の地域移行を進めるために必要と思われることをあげますと、
1. スポーツ環境の整備
2. 地域スポーツ団体への対応
3. スポーツ施設の確保
4. 地域のスポーツ大会の見直し
5. 会費や保険の支援
6. 関連制度の見直し
などが考えられます。
部活動の地域移行は中学校での少子化や教員への負担軽減につなげられる方法ですが、一方で従来と大きく異なる部活動となることから、新たな課題が出てきます。部活動をするためには地域移行に伴い発生する課題を解決しながら、これまで以上に地域と協力や連携をし、話し合うことが求められています。