日本剣道形解説書(全日本剣道連盟)14ページに1・2・3・5本目は「先々の先」の技で、4・6・7本目が「後の先」の技で仕太刀が勝つと記されています。
仕太刀の技はすべて打太刀の技に応じて打突する「後の先」の技と思われるのですが、なぜ1・2・3・5本目は「先々の先」の技なのか?
この疑問に関しては、そもそも「先」の定義が定まっておらず正式な回答はないのですが、各先生方の考え方等を参考に解説してみたいと思います。
一般的に「先」とは、相手の機(心と体と術の変わり際に起こる時のきざし)を制して勝つ機会のことであり、「先々の先」「先」「後の先」の3つの種類があると言われていますが統一された定義は定まってはおりません。全剣連が発行する資料にも3つの先の解説はありません。
そういった中で、「3つの先」を現象面(動作)からとらえたものと、古流を統一した日本剣道形における精神面(相手の心を読むことを重視した)からとらえたものの2つの考え方を紹介いたします。
現象面からとらえた3つの先とは、
・先々の先・・・出はな技
・先・・・仕かけ技
・後の先・・・応じ技
※ 先々の先と先の意味を逆にする説もあります。
一方、日本剣道形における精神面を重視した3つの先の考え方は次のようなものです。
・先々の先・・・相手の打突を予知した仕かけ技、出はな技、応じ技
・先・・・相手の打突を予知せず反射で動いた仕かけ技、出はな技
・後の先・・・相手の打突を予知せず反射で動いた応じ技
すなわち、先々の先は「予知」、先、後の先は「反射」で対応する技となります。
ですので、日本剣道形の場合は、1・2・3・5本目は「先々の先」(相手の打突を予知した応じ技)で仕太刀が勝ち、4・6・7本目は「後の先」(相手の打突を予知せず反射で動いた応じ技)で仕太刀が勝つという解釈になるそうです。
このことを体系化したものが下図です。
ちなみに、3つの先という言葉が最初に登場したのが宮本武蔵の五輪書(懸の先、待の先、対々の先)です。
その後、昭和の剣聖、高野佐三郎が著書「剣道」の中で、いま使われている3つの先(「先々の先」「先」「後の先」)という言葉を解説しております。
このふたりの3つの先は現象面をとらえたものですが、一方、3つの先を精神面から解説したのが三橋秀三氏の著書「剣道」です。
補足ですが、昭和8年に開催された大日本帝国剣道形を見直す討議の記録によると、参加メンバーであった、中山博道、斎村五郎、大島治喜太ほか錚々たる大家の先生方が3つの先の意味がわかりづらいので明確な定義を示すべき、と強く要望していたそうです。しかし主査委員の高野佐三郎が修正を決断できず現状のまま今に至ってしまったとのことです。
そう考えると、大家の先生方でも混乱していた3つの先については、あえて触れなくてもいいのかもしれません。
あくまで先とは、相手に先んじて、打つぞ、という気持ちで攻めて、ここだ、と思ったら思い切って技を出し、その状況によって仕かけ技や応じ技になる、というような説明でもよいのかと思います。
以上です。