TOP何をしていいか分からない方へ新たな販路を開拓したいが、これまで培ってきた世界観やブランドイメージも大事にしたい。どのように展開をするのがよい?
最終更新日 : 2020/06/17

新たな販路を開拓したいが、これまで培ってきた世界観やブランドイメージも大事にしたい。どのように展開をするのがよい?

ご相談者様プロフィール

横浜を拠点とする創業71年の老舗洋菓子メーカー。豪華客船の司厨長を務めた先々代(創業者)が横浜橋に開いた喫茶店がルーツ。その後伊勢佐木町に洋食屋を、山下町にフランス料理店を開店し、現在は工場での洋菓子製造を専業としている。

看板商品であるレーズンサンドは地元横浜で高い知名度を持つロングセラー。創業者親族による販売会社を通じ、同社が山下町に所有するビルの路面店のほか、地元有名百貨店で販売している。

主なターゲットはF2〜3相当のハイソな層(ホテルのティーラウンジを利用する層)。

ご相談内容(1)関連会社の販社に依存せず、自社独自に販路を開拓したい

自社ではこれまで製造のみを担当してきたが、独自に販路を開拓し、製造販売会社として再出発したい。

新型コロナの影響を受けて直近2ヶ月の売上高が前年比5割を切っており、抜本的な打開策が求められているが、諸般の事情により販売を担当する親族会社の協力が望めない状態にある。これを契機とし、アフターコロナの消費者動向を的確に捉えた上で製販を担う企業に生まれ変わりたい。

既存のブランドを自社で販売することは難しいが、製造する商品を独自のブランドで展開することはできる。現在売上の約1割程度を占めるこれら商品群の効率的なPR及び販売企画を考えたい。

ご相談内容(2)山下町にある親族会社所有ビルの活用

喫緊の課題ではないが、親族の販売会社が山下町に所有する店舗ビル(以下、店舗ビル)も将来的に集客施設として活用したい。

同ビルの立つ場所は「日本最初のホテル創業の地」として知られ、ビル自体も創業当時の雰囲気を色濃く残したレトロな雰囲気から映画やCMなどのロケ地として多く使用されている。

もともとは同ビル内でフランス料理店が経営されていたが、現在休業中。路面店に隣接して喫茶店も経営していたが、新型コロナウイルスの影響を受け、こちらも現在一時休業中である。ただしいずれも内装や什器は営業当時のまま、きれいな状態で残っている。

場所は異国情緒あふれる山下町の一等地にあり、歴史的建造物である神奈川県庁や市庁舎にも近い。観光的な価値が非常に高いものの、活用できていない現在の店舗ビルをゆくゆくは有効活用したい。

ご提案

ヒアリングをさせていただくなかで、これまで71年間守り続けてきたブランドに対する深い思い入れ、そして山下町の店舗ビルに代表されるように、お店が重ねてきた重厚な歴史を強く感じました。

日本最初のホテルにはじまる老舗の喫茶店、という、他には容易にコピーできないルーツの要素を取り入れた「アナザーストーリー」を構築することで、もともとブランドが構築してきたイメージを活かしつつ、新たな展開をデザインできると良いのではないでしょうか。

たとえば「山下町にある、架空のホテルのティーラウンジメニュー」というようなコンセプトはいかがでしょうか。「創業者様がもしも喫茶店ではなく、ホテルを創業していたら…」というコンセプトで、本物のホテルラウンジのようなトンマナを持つパッケージをデザインし、架空のホテル案内を綴ったリーフレットなどを同梱することによって、商品を購入した人だけが「バーチャルなホテル」を訪れることができる、というものです。

これならば、現状のレーズンサンドはもちろん、共通の世界観のなかでさまざまなサイドメニューの可能性も広がりますし、コロナが落ち着いた際にツアーやイベントなどといった副次的な体験商品にその幅を広げていくこともできます。

現在は活用されていない店舗ビルについても、これらストーリーの「聖地」として将来的に接続することで、これまで以上に強いブランド体験が作り出せることが期待できるでしょう。

まとめ

コト消費という言葉ももはや使い古された感がありますが、いまや生活者にとってお金の払いどころはモノそのものよりも「ストーリー」であり、共感度や感情移入度が高い(=自分ごと)であるほど、その価値は膨らみ、持続し続けます。

もともとお店が培ってきたリアルなストーリーを最大限に膨らませ、まずはお客様を魅了するような、大きなファンタジーをまず作りましょう。そして、商品をその世界への入り口としてデザインしましょう。

みんなでひとつの大きなストーリーを共有することで、お客様はもちろん、私たちにとっても「理想の場所」が生まれるはずです。