剣道の試合では振りかぶって打突することは少ないのに基本打ちはなぜ大きく打たないといけないのか?
誰もが考える疑問だと思います。
この疑問に答えた正式な資料は見当たらないのですが、昔の先生方は大きく打ちなさいと常々指導されてきました。
戦前の武道専門学校でも遠間からの大技の打ちを徹底させていたそうです。
よく聞く説明をいくつか紹介したいと思います。
・小さく打つという技術は大きく打つという技術の延長線上にあるから。
・手の内は大きく打たないと習得できないから。
・大きく打つ稽古の目的は、当てるのではなく剣先の走る打突(斬る)を習得させるため。
・大きく打てるようになれば小さく打つ技術を教えなくても早く打つことを意識すれば自然と打てるようになるもの。
様々な解説がありますがどれも腹に落ちるものではないかもしれません。
難しくしているポイントは、例えば面打ちの場合は左拳を頭上にあげ、肩を使って大きく打突しなさい、と具体的な動作の説明が教科書に書かれているのですが、小さい打突にはこの解説がないということだと思います。
その理由は、おそらく小さい打突は範囲が広く一言で表せないからだと思います。
例えば、飛び込み面、出ばな面、すり上げ面など、状況により打突の振り幅は変わってきます。
但し、小さな打突は竹刀の振り幅が変わるだけで、そのほかの身体の使い方や手の内を変えないことが肝要です。
要するに大きな動作を小さな動作に生かすということであり、小さな打突用の手の内や振り方が存在するというわけではありません。
このような例はボクシングや野球など他の競技にも多く見受けられるものです。
人間の身体にはおよそ200個の骨があり、その上に乗っている筋肉が600ほどあるそうです。
優れたスポーツ選手は骨と筋肉を総動員しパフォーマンスを最大化しているそうです。
小さい動きに特化すると、それにあわせた骨と筋肉しか動かなくなるため、パフォーマンスをあげるためには、小さな動きをおこなう時にも、大きな動作の時に使われる骨や筋肉を連動させることが大切とのことです。
小さな打突でも手の内の効いた強い打突を生み出すためには、大きな打突を習得し、その動きを連動させることが大切ということだと思います。
以上です。