TOP剣道の礼法について礼式でおこなう「正面に礼」の正面とはなんですか?
最終更新日 : 2021/06/02

礼式でおこなう「正面に礼」の正面とはなんですか?

稽古の前と後におこなう礼式の中で「正面に礼」があります。

「正面」とはなにか?

実は正面に関して具体的に記載された資料はなく、全日本剣道連盟発行の「剣道和英辞典」には、正面を「大会会長席を中心とした場所」、正面への礼は「正面に向かって行う礼」との記載があるだけです。

全日本剣道連盟発行の「剣道試合・審判・運営要領の手引きP18」では、「選手と審判員の正面への礼に対する審判長の答礼は、大会の申し合わせによる」と記載があります。審判長は答礼する場合もあれば役員席の後ろに掲げられている国旗や正面の壁に礼をする場合もあるということですね。

このように「正面」の定義は曖昧です。

そもそも昔は剣道の修行をおこなう場所が道場であり、稽古前と後に清掃をおこない場内を清め、道場の中央には神棚を設けて、稽古前と後に、怪我や事故がおきないように祈ったり、正々堂々と試合をすることを誓ったり、稽古をさせてもらえたことに感謝をするための礼をしていました。

道場では「正面に礼」ではなく「神前に礼」だったのです。

この場合の神は、剣の神である鹿島大明神(タケミカヅチノカミ)や武の神である香取大明神(フツヌシノカミ)や、天照大神(アマテラスオオミカミ)や、八百万の神(ヤオヨロズノカミ)であったりしました。

このように昔は神棚を設け、稽古の前後に礼をしていても問題なかったのですが、昨今では宗教上の問題から神への礼を強制すると忌み嫌われたり、剣道の国際化により外国人にも受け入れられる礼式の対応が求められていたり、稽古をする場所が道場から神棚がない体育館などに変わってきたこともあり、必要に迫られて「正面への礼」という呼び名に変わってきたという背景があるようです。

ですので、こう理解するといいと思います。
「正面」とは、神棚、国旗、団体旗などを設置している所とし、「正面に礼」は剣道をおこなう上でのすべてのものへの感謝の心を示すためにおこなうものであり、そこに特定の神などの宗教性は含まれない、とする。

いずれ全日本剣道連盟から「正面」に関する具体的な説明があるのかもしれませんが、それまではこのように考えて頂けましたらわかりやすいかと思います。

以上です。

神棚.JPG