剣道では左足から座り、右足から立ち上がる左座右起という礼法が普及していますが、そもそも武道の礼法は鎌倉時代に誕生した小笠原流が基盤になっています。
小笠原流とは、弓術、馬術、武家礼式の代表的流派の一つで、鎌倉時代に源頼朝が武家社会の中に、統一した礼法を取り入れるべく臣下の小笠原長清に作らせたことが始まりと言われています。
その後、小笠原流は各時代の為政者に支持され、今日まで続いてきました。
但し、小笠原流による武家の礼法では、日本刀は右手で提刀していたため左座右起ではなく右座左起でした。
つまり、現在の剣道で行っている左座右起の作法は、古来からの武家作法とは異なるということです。
日本刀や木刀は、右手に提刀(さげとう)します。これは刀を抜く意志がないことを相手に示すためと言われていますが、このように刀を持つ場合は、右座左起の方が理にかなっており、古来作法では右座左起が優勢であったと考えられます。
ちなみに当時の作法では、男性は「右座左起」、女性は「左座右起」と、男女でも異なりました。このように立居振舞の礼法は、その状況や流儀によりさまざまでした。
明治38 年に学校における礼法全般の見直しが始まり、女性の左座右起の作法が採用され、武道の礼法にも影響し、右座左起から左座右起へと一本化されていったと言われています。剣道においては、現在の作法である竹刀の左提刀(防具着装時の竹刀の取り回しを考え、略式作法として普及したと言われています)には、左座右起の作法の方が理にかなっていたことも、作法統一促進の理由のひとつになったと思われます。
ちなみに講道館柔道でも、嘉納治五郎氏の時代は右座左起でした。これが昭和18年、左座右起へ改正されています。
一方合気道においては、合気会本部が発行している合気道教本で、現在でも「右座左起」を指導しています。弓道も右座左起が作法になっています。空手では、流派によってさまざまのようです。
※武道の礼法に関する参考資料
http://budo2009.nifs-k.ac.jp/images/pdf/tnakamura.pdf
以上です。