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最終更新日 : 2026/06/29

第12回 優秀作品賞「これからもよろしく」

「早く知るという勇気 ― 母が隠した理由」
トンちゃんさん(石川県)

 毎年一月に会社の健康診断を受けています。
ここ数年ドカ雪に見舞われることも多く(石川県に住んでいますので)指定病院に出向くだけでも億劫ながら、『受けないとダメだ』というので受けています。
 受診後二週間ほどするとその結果が郵送されてきますが、毎度のことながら血圧が高いのγ -GPTがどうの腹回りがこうのとうるさく
てしょうがありません。
 一度肺のレントゲンで異常ありと言われ、さすがにうろたえ精密検査をしたら『普段通りの生活で良いですよ』とドクターから拍子抜けする言葉を賜り、〝勘弁してよ〞と思ったこともあります。

 そして去年の健康診断。
 便検査二日分のうち一日分で陽性反応が出ました。
 実は以前にも同じことがあり精密検査を受けた結果は『異常無し』。日ごろから快食快便ですし二日分ともに陽性なら嫌ですが、一日だけだしまあ良いだろうと健診結果をテーブルに放置しておいたらそれが女房の目に留まりました。
『再検査して下さいね』、『受けなくていいよ』
『受けて下さいよ』、『だから いいって』
 何度かこういったやり取りをした挙句、押し切られる形で再検査を受けることにしました。
 前日から食事を制限し内視鏡検査を実施、どうせ何もないだろうと高を括って臨んだところ
『ポリープを三つ切除しました。詳しい結果は一週間後にお知らせします』といわれ少々驚いたも
のの、六十六歳という年齢を考えれば珍しい事でもないだろうと軽く考えていました。

 そして一週間後、ドクターから『三つのうち 二つは良性でしたがもう一つは悪性、つまりがんで
す』と言われ今度はかなり驚きました。
その場でさらに検査し他部位への転移等がないか確認してもらいました。
 すべての検査が終わってから『早く見つかって良かったですね、良性のものも放置していたら悪性化する可能性がありますし、すべて切除出来て何よりです。あと転移等は見られませんでした。普段通りの生活で結構ですよ。次は三ヶ月後にまた検査しましょう』と言われました。つくずくオレは暢気な男だなぁ、と同時に運の良い男だなぁと思いました。
 定期的に健康をチェックしてくれる社会、『面倒がらずにね』と再検査を強く勧めてくれる女房、そして適切に対処してくれる医療機関。
『オレは生かしてもらってるんだなぁ』と痛感しながらここでハタと考えました。
 順調に処置されたとはいえ、がんだったなんて女房にどう言おうか、取り乱すんじゃないかと病院からの帰り道そのことがひどく気になったのです。 
 帰宅後、言葉を選びつつ『落ち着いて聞けよ、大したことじゃないからな』と前置きしながら話
すと『あらそう、早く見つかって良かったわね』と実にあっさりした返事。
 四十年も連れ添っておきながらいまだ女房のキャラクターを掴み切れていないオレってホントに暢気だなぁと今日二度目ですが己の暢気さに気付かされ、我ながら呆れ返った次第です。

・・・あれから一年
健康診断は渋々でなく積極的に受診しています。
 健康管理に対してもストイックになりました。
 お酒はそれまで毎日飲んでいたものが週に二〜三日に、食事のバカ食いも無くなり体重は
5キロ減、腹回りも5㎝ スリムになりメタボ脱出、担当の看護師さんに褒めて貰いました。
 六十七歳になりましたが、いくつになろうと褒められると嬉しものですね。

あっそうだ!まだだった!
『あの時何度も再検査を勧めてくれてありがとう。おかげで命の大切さや家族との幸せな暮らしを
あらためてしっかり考えるようになったよ。こんな暢気なオレだけどこれからもよろしく』
・・・ 早く女房に言わなくっちゃ。