TOP第12回入賞作品第12回 佳作「定期検診受けて良かったと心から思う」
最終更新日 : 2026/06/29

第12回 佳作「定期検診受けて良かったと心から思う」

「定期検診受けて良かったと心から思う」
まつこさん(広島県)

 母方はがん家系かもしれない。母は七人兄弟姉妹の五番目。私は一人っ子だがイトコは十二人いて、子供の頃は、盆暮れ正月楽しかった。

 私は結婚し、新潟から遠く離れた広島へ。子供が三人。交通費の負担が大きく新潟には帰らなくなった。訃報の連絡が数年おきにあり、十二人いたイトコが七人だけに。原因はがんだ。でも、なぜか自分はがんとは無縁だと思っていた。それが、毎年受けている健康診断を五十一歳で受けた時。いつもと違う封筒で検査結果が送られてきた。恐る恐る見ると、右側の乳房の要精密検査と書かれた紙と画像の入ったCD。頭が真っ白。お腹が緊張で痛くなった。心を落ち着かせようと、私は二人を思い浮かべた。一人は十歳年上のイトコの由子さん。由子さんは自分で胸のシコリに気づいたが、すぐに病院に行かなかった。私の母に電話で相談後、ようやく病院に行ったが、がんは大きくなっていた。それからは前向きに闘病生活を続けたが、三年後、七歳の息子を残して他界。もう一人は私の母だ。母が四十歳の頃、右の乳がん発症、全摘出手術。五年間の定期検診後寛解。八十歳の時、左の乳がん発症。全摘出手術。五年間の定期検診を経て寛解。九十歳になった。再建手術の勧めがなかった母は、平たい胸に負い目を感じつつ、生きてこそと自分で自分を励ましている。そんな元気な母の姿を思い、悩んですぐ病院にいかなかった由子さんを反面教師にして、すぐに乳腺外来に行った。再度、こちらでもマンモグラフィー検査、エコー(超音波)検査を行った。エコーで先生が気になる箇所があるというので、後日、細胞採取することになった。組織診(マンモトーム生検)という。右の乳房に部分麻酔。直系5mm程の針を採取したい箇所にさし細胞を取り出した。一週間後の結果は乳がん。非浸潤性アポクリンがんという名のトリプルネガティブがん。がんの中で治療が一番難しいと説明を受けた。不安がる私に、「初期でステージ0だから切除したら大丈夫ですよ!」と優しく話してくれた。こちらには手術設備がないので、連携先の病院で三ヶ月先に手術の予約、同時に、他にも転移していないか確認の為のMRIとCTの予約を取ってくれた。手術は二種類あって、一つは全摘出手術。再発の心配なし。乳房再建手術を同時に行えるとのこと。もう一つは部分切除。がんとその周囲だけ切除して、後は再発防止で、一ヶ月放射線治療に通う事により、全摘と同じ効果が得られる。迷った末、部分切除を選択。家族に話すのは怖かった。まずは、家の事を任せたい同居中の大学生の長女に。あまり感情を表に出すタイプではなく淡々と「わかった。」とだけ返事した。最近、不仲な夫は、始めは「はっ?」と怪訝な顔をしたが、手術前の執刀医の診察を一緒に受けてくれた。心強かった。それから、高校生の次女と小学六年生の長男に伝えた。娘と息子は、不安で泣きそうだったが、私は明るく「ステージ0だから問題ない。」と笑顔で言った。娘も息子も安心したようだった。母の前例のおかげで、本当にすぐ治ると思えていた。

 入院初日、主人が仕事前に、病室まで付き添ってくれた。いつでも連絡だけは取れるようにはしてくれるようだ。

 入院、手術前、手術の流れ、手術後の説明と歯医者の口内確認。手術前は食事と水分なし。緊張をテレビでごまかす。いよいよ手術。看護師さんに支えられながら、手術室に移動、全身麻酔の後から記憶がない。目が覚めると病室にいた。右腕に点滴、左腕に血圧計がはめられて、両足には、血流をよくするためのポンプが装着され膨らんだりしぼんだり。全身麻酔で爆睡した後なので眠れないし、手術した箇所が痛くてたまらない。看護師さんに何度も痛み止めを頼むも、決まった時間が経過しないと与えられないと断られ、それを数回繰り返す。痛がる私に夜勤の看護師さんが背中をさすってくれた。優しさに感謝。

 相部屋で、毎晩おばあちゃんが夜な夜な大声で歌ったり叫んだり、痛みが落ち着いた後も、なかなか眠れる環境ではなかったが、上げ膳据え膳で、栄養バランスの良いご飯を食べるのも幸せだった。ゴロゴロしてテレビ見たり読書したり。子育て、パートや家事に追われて、こんなにゆっくりする時間はなかったなーと、入院生活を楽しんだ。それもステージ0だったからだ。退院後、数週間あけてから一日三十分程度の放射線治療を二十日間休まず通院。乳腺と放射線の先生達から、「もうこちらでの治療は終わりです。」と言われ、今は、元の乳腺外来の病院に三ヶ月毎、通っている。定期検診では「異常なし、健康で心配なし。」と言ってもらっている。まだまだ続くが、心から健康診断で、乳腺外来で、がんを見つけてもらえて良かった。今も明るく生きていられるのは、丁寧で精度の高い検査、医療に携わる方々、家族のおかげ。定期的に健康診断受けることを心からおすすめしたい。