西日本電信電話株式会社(NTT西日本)は、従業員数が1,400名を超える大手通信会社です。2023年10月、NTTビジネスソリューションズ株式会社が提供するビジネスチャット「elgana(エルガナ)」が、同社に事業譲渡をされました。
同社への事業譲渡後、elganaのPMMを担当している萩本氏、田中氏、山下氏は、VoC(Voice of Customer)の管理体制に大きな課題を感じていました。サービス提供開始からこれまで、VoCが一元的に収集・管理されておらず、数千件にも及ぶデータの分散・揺らぎが放置されていたからです。
「VoCを積極的に活用するため、まずは管理体制の見直しが必要でした」田中氏は語ります。今回はTayoriの導入背景や活用方法、VoC活用に向けた具体的な取り組みなどを伺いました。
【目次】
数千件のデータ分散・揺らぎ、VoCの管理体制が大きな壁に
——Tayoriの導入先である御社のプロダクト「elgana」について教えてください。
山下氏:
elganaは、NTT西日本が提供しているビジネスチャットです。2020年4月に提供を開始し、ユーザー数は210万IDを突破しました。直感的に使えるシンプルなデザインが好評で、主に中小・中堅企業で多くご利用いただいています。
elganaにはさまざまな特徴がありますが、最近はチャット機能だけでなく、外部サービスとの連携機能の強化に力を入れています。連携をすることで、例えば、チャットボットから勤怠打刻ができたり、領収書などの画像データ(電子帳簿)をチャットボットにアップロードすることでクラウドに自動保存できたりします。
今後もビジネスチャットとしての機能強化を進めることで、社内のコミュニケーション活性化や情報管理はもちろんのこと、より多くの業務効率化を実現していきたいと考えています。
——Tayori導入の背景にあった「課題」を教えてください。
山下氏:
「VoCの管理体制」に大きな課題がありました。elganaでは、収集したVoCを開発チームにフィードバックする定例会議を行っています。ユーザーの要望を整理し、優先順位を見極めながら開発計画に組み込んでいます。
このフィードバックサイクルは始めたばかりで、まだ試行錯誤の段階なのですが、最初にぶつかった壁がVoCの管理体制でした。というのも、VoCの一元管理ができておらず、データ分析基盤が全く整っていなかったんです。
田中氏:
Salesforce、Backlog、Excelなど、各部署がそれぞれ利用しているツールに記録がなされ、数千件にも及ぶVoCが分散して眠り続けている状態でした。また、収集のフォーマットが統一されていないため、5W1Hといった背景情報が十分に揃っていないなど、データの揺らぎも数多く存在しました。
そこで手始めに、サービス提供開始から数年分のたまりにたまったVoCを取りまとめ、一週間かけて一元化を行いました。ただ、これは暫定的な対応にすぎず、管理体制そのものを見直さないかぎり根本的な解決にはなりません。
ボリュームとして、毎月50件ほどのVoCが届きます。そして、そのぶんデータの分散・揺らぎが発生し続ける状況です。フィードバックサイクルをしっかり継続させるためにも、専用フォームでVoCの一元管理を行い、データ分析基盤を整えたいと考えました。
——フォーム作成ツールを導入するうえで、Tayoriを選んだ理由はなんですか?
田中氏:
Tayoriを選んだ理由はいくつかあります。前提として、広告が表示される無料のフォーム作成ツールは候補から除外しました。お客様の体験的に、広告表示のあるフォームは好ましくないという判断です。
そのうえで、Tayoriは「使いやすさ」が大きな魅力でした。操作の学習コストがほとんどなく、簡単にフォームを作成できるのが良かったです。また、ページへの埋め込みができるので、Webサイトやアプリにも問題なく対応できると判断しました。
山下氏:
Tayoriの無料プランでまずは操作性を確かめましたが、本当にわかりやすくて、これならすぐに使い始められると直感的に理解しました。
他ツールと比較して「価格が安い」のも高評価でした。機能と価格の両面で、私たちのやりたいことをシンプルに実現できると思い、Tayoriの導入を決めました。
——大企業の場合、新しいツール導入は時間がかかりそうですが、決裁はいかがでしたか?
田中氏:
ケースバイケースですね。導入するサービスやツールによっては決裁に時間がかかりますが、Tayoriの場合は時間がかかりませんでした。
決裁者にはいちからTayoriの説明をしましたが、知名度があるPR TIMESが運営していると伝えると、一定の安心感を持ってもらえました。最終的には、「価格も安いし使いやすそう」という評価をもらい、スムーズに導入が決定しました。
投げっぱなしにしない、VoC活用に向けた地道な部署横断
——Tayori導入後、VoCの一元管理はうまく進みましたか?
山下氏:
正直、Tayoriの定着には時間がかかりました。VoCを記録するツールやフローが各部署で異なっていたので、それらを統一するための移行期間が必要だったんです。一度声掛けをしただけでは思うように進まないので、各部署に地道に依頼をして徐々にTayoriを定着させていきました。
田中氏:
導入当初、社内向けにTayoriを説明する場を設けたのですが、すぐには使ってもらえず……。よくある話ですが、業務の仕方を変えたくないという意識が働いたのかもしれません。VoCを収集するには部署間の連携が必要不可欠なので、粘り強く説明と依頼を続けました。
例えば、elganaを有償プランでご利用いただいているお客様には、サポート担当がフォローアップを行っています。その際に、「ご要望はこちらのフォームからお送りください」という風に、お客様へのフォームの案内をお願いしています。まだ、Webサイトやアプリにフォームを設置できていないので、近日中には設置をしてVoC収集の導線を拡充したいですね。
——フォームを社内向けにも作られていますね。社外・社内で分けている理由はなんですか?
山下氏:
社外と社内(グループ企業)で回答傾向が違うのではという仮説のもと、差異を確かめる目的でフォームを分けています。
具体的には、elganaの導入企業は中小・中堅企業が大多数ですが、NTT西日本グループは連結の従業員数が約35,000人にも及ぶ大企業です。企業内におけるユーザー数が大幅に違いますし、グループ企業は言ってしまえば身内になるので関与度(商品と消費者の結びつき)も違います。
社外と社内でフォームを分けたことで、回答傾向の差異を把握しやすくなりました。VoCの解像度をより高められるのでオススメです。
——VoCのフィードバックサイクルを始めるにあたって、開発チームの反応はいかがでしたか?
萩本氏:
フィードバックサイクルを始めることは前向きに受け入れてもらえました。ただ、当初は収集したVoCを開発チームにただ投げているだけで、「開発に落とし込みづらい」「実装後のインパクトが見えづらい」という意見が挙がりました。
基本的には、ターゲットユーザーにとって価値が高いもの、ROIが高いものを見極めながら優先順位をつけています。とは言っても、私たちはまだ妥当な判断基準を持ち合わせていないので、優先順位をつけるのが一番難しいです。
田中氏:
挙がった意見を受け止め、まずは一つひとつのVoCを丁寧に解釈し、わかりやすく分類することを心掛けました。そして、開発チームとより良い意思決定ができるよう、データ共有と改善提案をセットで行うようにしました。
いまではVoC起点でいくつかのアップデートを行い、「使いやすくなった」とユーザーから好意的な声が届くようになりました。フィードバックサイクルの成果が徐々に見えてきたので、今後は優先順位のつけ方、共通の判断基準をより確かなものにしていきたいです。
「VoCが共通言語」最大の成果は、部署間のコミュニケーション改善
——Tayoriの具体的な成果を教えてください。
田中氏:
TayoriがVoCのデータ分析基盤となり、一元管理を実現することができました。そして、定量・定性の両面で成果が出ています。
定量面では、データ管理の工数を削減できました。定例会議に向けて、毎回6〜7時間もかけてデータの分散・揺らぎに対処していたんです。この作業がなくなったことで、分析や改善提案に集中しやすくなりました。
定性面では、VoCを起点に部署間の連携がより緊密になりました。Tayoriとフィードバックサイクルの導入によって、VoCの収集目的・活用方法が明確になったのが大きいですね。VoCが共通言語となって、部署間の目線合わせが以前より円滑に進んでいます。
——VoCの活用が進んだことで、部署間のコミュニケーションも変化していったのですね。
萩本氏:
そうですね、個人的には「部署間のコミュニケーション改善」が最大の成果だと思っています。
当初のフィードバックがお世辞にもいいとは言えず、収集したVoCを営業サイドが開発サイドにただ投げているだけでした。そして、そのまま投げっぱなしで終わってしまい、具体的な開発に進展しませんでした。
営業サイドからすると、結局言っても変わらない。開発サイドからすると、雑すぎて検討のテーブルに乗せられない。それぞれのスタンスが平行線のまま、次第に諦めムードが漂うようになりました。いま振り返ると、部署間のコミュニケーション不足もVoCの活用が進まない大きな原因だったと思います。
そんななか、フィードバックサイクルの継続は営業サイドに変化をもたらしました。「この要望はこの観点から優先度が高い」「具体的にこういう機能を開発してほしい」と、徐々にフィードバックの質が上がるようになったんです。
これにより、開発サイドとの合意形成も進むようになり、実装までこぎつけるケースが増えていきました。まだまだ道半ばではありますが、VoCの活用が進んだことで、プロダクト改善に向けた組織力も上がっていると強く感じます。
——最後に、Tayoriを導入しての総括をお願いします。
山下氏:
一先ずあれこれ考えずに、まずはお試しでTayoriの無料プランを使ってみるのがいいと思います。フォームの作成がとても簡単で、VoCの収集・管理をすぐに始めることができました。機能、デザイン、価格など、Tayori全体に漂うシンプルさがとても気に入っています。
田中氏:
私たちの場合、プロダクトマーケティングの一環でTayoriを導入し、ユーザー理解を深めることに役立ちました。カスタマーサポートツールではありますが、マーケティング用途でも使えて、コア機能の汎用性は高いと思います。フロントサイドだけでなく、管理者サイドも大変使いやすくて、総合的にバランスの整ったツールですね。
西日本電信電話株式会社(NTT西日本)
バリューデザイン部 DXプラットフォーム部門
DXビジネス担当 エルガナG
萩本 将訓氏
2007年にNTT西日本に入社後、通信系商材の代理店営業や販売企画を経験し、その後採用人事を担当。海外トレーニーや国内外でのデータセンター営業を経て、現在はビジネスチャットelganaのPMM・デジマ担当のマネージャーとして、サービス提供価値向上に向けた市場や顧客状況の分析や、ビジネスサイドの戦略立案を行う。
田中 勝敏氏
2020年に中途採用でNTT西日本に入社。前職のSaaS系企業においてはサービスの立ち上げからGTM、ピボットなど各フェーズを経験。入社時よりelganaのPMMとして、ユーザーデータの分析やSaaS市場動向等を踏まえた戦略の企画立案を担当。
山下 真林氏
2021年にNTT西日本に入社後、NW系商材の販売をおこなう法人営業を担当。現在はelganaのPMMとして、VoCの収集分析や開発連携を進める。