ユーザー数30倍に増えるも問い合わせ件数横ばい Tayoriフル活用の“クリニック運営”大解剖【マーチクリニック】


マーチクリニックは、東京都荒川区にある美容クリニックです。来院が基本となる一般的な医療施設とは異なり、オンライン診療を主体とした医療サービスを提供しています。
同院の院長を務めている尾崎氏は、「労働集約型の問い合わせ対応」に課題を感じていました。新サービスの立ち上げによって時間的余裕がなくなり、いずれ問い合わせ対応に手が回らなくなることを危惧していたからです。
「診療以外の業務もすべて私一人で行っていたので、早々に限界がくると感じました」と尾崎氏は語ります。今回はTayori導入の背景や検討時の選定ポイント、クリニックならではの活用方法などを伺いました。
【目次】
- 「いずれ限界がくる」一人でクリニック運営、問い合わせ対応が大きな負担に
- 「気軽にすぐはじめられる」導入後3日で新FAQリリース
- Slack連携で問い合わせ一元管理。AIチャットボットもフル活用
- 「クリニック運営にTayoriを」ユーザー数30倍に増えるも問い合わせ件数横ばい
「いずれ限界がくる」一人でクリニック運営、問い合わせ対応が大きな負担に
——まず、貴院の診療内容について教えてください。
当院は東京都荒川区にある美容クリニックです。一般的なクリニックとは異なり、診療はオンラインがメインになります。
当院は株式会社Wrustyとオンライン診療システム「march」の共同開発を行っており、予約、問診、ビデオ診察、決済までをLINE上で完結できる仕組みを導入しています。また、オンライン診療とお薬の定期配送を組み合わせた医療サービス「エニーオンライン」も提供しています。
私は医師であると同時にITエンジニアの肩書きも持っていまして、労働集約型の医療現場をITの力で良くしたいという想いが強くあります。医療分野はデジタル化の遅れをよく指摘されますが、当院ではデジタル技術を積極的に活用し、患者さんにより便利な医療サービスを提供することを目指しています。

マーチクリニックは自宅からでも受診できるオンライン診療主体の医療サービスを提供している。
——Tayori導入のきっかけとなった「課題」を教えてください。
Tayoriを導入したのはエニーオンラインを立ち上げて数ヶ月後ぐらいのタイミングで、当時の問い合わせ件数は1日数件ほどでした。数はさして多くありませんでしたが、予約管理や問い合わせ対応など、診療以外の業務もすべて私一人で行っていたので、このままではいずれ回らなくなると危惧しました。
当時のユーザー数(LINE公式アカウントの登録数)は1,000人ほどでしたが、ユーザー数の伸びを勘案すると早々に限界がくると感じました。実際、問い合わせへの返信が遅れてしまい、ユーザーにご不安な思いをおかけしてしまう場面もありました。診療への集中と丁寧なサポートを両立するため、サービスの立ち上げ期から問い合わせ対応を減らしていきたいと思いました。
問い合わせの内容はある程度パターン化されているので、いかに効率よく“アンサー”を届けられるかが鍵になります。例えば、「薬はいつ届きますか?」といった配送に関する問い合わせが多く、こういった内容には定型的に答えられるので、FAQをしっかり載せておくことが重要です。
Tayori導入前は、GoogleスプレッドシートとWordPressで構築したWebサイトでFAQを公開していました。しかし、時間がないなかで急いで作ったということもあり、テキストを羅列しただけの粗末な出来で、更新も滞っている状態でした。
——エニーオンラインはLINE公式アカウントを基盤としたサービスですが、LINEのチャットボット機能では問い合わせは減らなかったですか?
LINEのチャットボットも効果はありましたが、定型的な問い合わせは依然として来ました。当初はカスタマーサポートもLINEだけで完結できたほうが便利だろうと思っていたのですが、意外と「FAQはどこですか?」「問い合わせフォームが見当たらないです」という声が一定数届きました。
ユーザーからすると、情報が一覧化されているFAQを見たいし、チャットボットではなく明確な問い合わせ先としてフォームを用意してほしいということだったんです。その点、TayoriはFAQとフォームが一体化しており当院のニーズと合っていました。
「気軽にすぐはじめられる」導入後3日で新FAQリリース
——カスタマーサポートツールとして、Tayoriを選んだ「決め手」はなんですか?
現在は有料プランを利用していますが、当時は「無料ですぐはじめられる」というハードルの低さが決め手でした。エニーオンラインを立ち上げて間もない時期だったので、運用工数や費用を極力抑えられるツールをじっくり選びたかったんです。
ただ、他社のツールだと、商談をセッティングして、営業の方から説明を受けて、初期費用をお支払いして、ようやく利用開始という長いフローがありました。その点、Tayoriはフリーミアム(※1)なので、まずは早く試してみたいというニーズに一番合っていました。無料プランでTayoriの使いやすさをすぐ体験でき、早々に本格活用することを決めました。
※1…基本的なサービスは無料で提供し、追加機能やより高度な機能を有料で提供するビジネスモデル。
また、Googleアナリティクスと連携できるのも魅力的でした。各機能がどれだけ利用されているか、どのFAQがよく閲覧されているかなど、ユーザーの動きを確認することができます。データをしっかり可視化しないと、客観的な検証・改善が難しいですよね。Tayoriならデータ可視化、分析、更新までをスムーズに行えて、改善を楽に進められると思いました。

TayoriのFAQ編集画面。直感的な操作で簡単にFAQを作成できる。
——新しいFAQの公開に向けて、どのように作業を進めましたか?
はい、GoogleスプレッドシートとWordpressで管理していたFAQが数十件ほどあったので、まずは内容の精査を進めました。一つひとつ文章を確認し、より伝わりやすいようリライトをしたり、不要そうな情報は削除したりしました。見直しが済んだらTayoriにFAQを作成していき、併せてフォームも作成し、導入開始から3日ほどでFAQサイトを公開することができました。

Tayoriで構築したエニーオンラインのFAQサイト。
その後、FAQやフォームへの導線としてLINEのリッチメニューを設計しました。現在は「お問い合わせ」のボタンをタップすると、4つの選択肢が表示されるようにしています。左から「AIチャット」「よくある質問集」「LINEで質問」「フォームから質問」という形で選択肢を複数提示し、ユーザーの自己解決を促しつつも、すぐに問い合わせができる導線を設けています。

エニーオンラインLINE公式アカウントのリッチメニュー。
Slack連携で問い合わせ一元管理。AIチャットボットもフル活用
——少人数でのクリニック運営に対して、問い合わせの窓口が多いと感じました。ユーザー目線では便利ですが、そのぶん管理が大変ではないですか?
そうですね。現在、LINE、Tayoriフォーム、メール、電話の4つの窓口を設けています。当然ながら、窓口が多ければ多いほど管理は煩雑になりますし、対応漏れが起きないよう、より一層注意を払わねばなりません。ただ、一番身近な問い合わせ方法は人によって異なりますので、多少労力をかけてでも窓口の選択肢は広げたほうがいいと判断しました。
運用上の工夫としては、LINE、Tayoriフォームからの問い合わせは、すべてSlackに通知がいくよう連携しています。問い合わせの大半はこの2つの経路から来ているので、実質的にSlackで問い合わせを一元管理しているような運用です。Slackであれば情報共有がスムーズですし、ピン留めやブックマークなどで対応漏れを防ぐことができます。
現在、対応にあたるスタッフは私ともう1名の2名体制を敷いています。患者さんからたまに「薬の飲み合わせは問題ないですか?」といった医療知識が絡む問い合わせが来ることもあり、そういった内容には必ず私が対応しています。患者さんによって回答内容は千差万別ですので、治療に関する専門的な情報はFAQにも載せないようにしています。
Tayori経由の問い合わせ受信を知らせるSlackの通知ポスト。
参考:TayoriとSlackを連携してカスタマーサポートの質を向上させる方法
——TayoriのAIチャットボットも活用されていますね。使い勝手はいかがですか?
はじめは興味本位での利用でしたが、回答精度の高さに驚いたのを覚えています。作成済みのFAQをデータソースにしているので準備する手間がほとんどなく、LINEと連携することもできました(※2)。これなら、さらなる効率化、負担軽減を実現できると直感的に思いました。
※2…TayoriとLINE公式アカウントを連携することで、LINE上でAIチャットボットを利用することができる。
参考:月額1万円のTayori AIチャットボット、LINE公式アカウントと連携開始
運用方法にもよるかもしれませんが、シナリオ型のLINEチャットボットより、AI型のTayoriチャットボットのほうが使い勝手はいいと感じています。AIが自然な話し言葉で受け答えしてくれるので、人とやり取りしているような親近感もありますね。
あと、改善がしやすいのも気に入っています。管理画面から回答できなかった質問を分析し、FAQを追加したり、質問に含まれているキーワードをFAQに反映させたりしています。これを続けることで正答率が着実に上がっていったので、日々の改善意識がいかに大事かを再認識しました。
エニーオンラインLINE公式アカウントで利用できるTayoriのAIチャットボット。
「クリニック運営にTayoriを」ユーザー数30倍に増えるも問い合わせ件数横ばい
——Tayoriの具体的な「成果」を教えてください。
はい、ユーザー数と問い合わせ件数の推移を見ると、Tayoriの成果は顕著でした。Tayori導入当初のユーザー数は1,000人ほどで、それから数年経ち現在は30,000人を超えましたが、問い合わせ件数は全く増えていないんです。
実感としても、定型的な問い合わせが明らかに減ったと感じています。元々活用していたLINEに加え、TayoriのFAQやAIチャットボットを組み合わせることで、ユーザーの自己解決を一気に後押しできました。
また、副次的な効果として、FAQをスタッフ向けのマニュアルとしても活用するようになりました。診察の流れ、お支払いの方法、お薬の配送など、サービスに関する基本情報がFAQにはまとまっているので、問い合わせ対応のマニュアルとしても役立っています。
——最後に、カスタマーサポートを効率化したい医療従事者に向けて、メッセージをお願いします。
当院が目指すクリニック運営における目標は「労働集約型からの脱却」です。その目標のもと、さまざまなデジタル化、自動化の仕組みづくりを行っています。ただ、何事も大きくはじめようとすると前に進みづらいですよね。なので、Tayoriのような安くて使いやすいツールを活用し、「小さくはじめてみる」というのが医療DXには大事なのではないかと思います。
Tayoriは、FAQ、フォーム、さらにはAIチャットボットが一つのパッケージとしてまとまっており、当院のような小さなクリニックに特にオススメできます。スタッフの数やITリテラシーに依存することなく簡単に導入・活用できるので、ぜひ一度使ってみてほしいです。
マーチクリニック
院長 尾崎 功治氏
北京大学医学部卒業後、中国医師免許・日本医師免許を両国で取得。帰国後、都内大学病院・総合診療科常勤医として勤務し外国人患者に特化した診療・医療インバウンドに従事。現マーチクリニック院長として外国籍患者の診療や医療インバウンドを行う傍ら、前職エンジニアで現在も医療アプリの開発・コンサルテーション等、医療分野における事業展開のサポートに携わる。





