
💡この記事でわかる「主要な3つのポイント」
- ファンになる瞬間は予測できない——だからこそ、どの接点においても誠実であり続けることが積み重なる
- 言葉の届き方は相手と媒体によって異なる。「わからない」を正直に伝える誠実さが、信頼をつくることもある
- 全ての関係は一対一から始まる。一本の電話・一通のメールが、長く続く関係性の起点になり得る
カスタマーサポートは、クレームやトラブルに対応する“守りの仕事”——そんなイメージを持っている人は少なくないかもしれません。でも、もしその一つひとつのやり取りが、サービスへの愛着を生む起点になるとしたら?
6月10日(水)に開催したTayori主催「Customer Support Conference 2026 Spring」では、独自の言語感覚と鋭い視点を持つお笑いコンビ「Aマッソ」の加納さんをゲストに迎え、「対応で終わらせない関係性とは?人が”ファンになる瞬間”を考える」をテーマにトークセッションを実施しました。
モデレーターは、PR TIMESのカスタマーサポートを経てTayori事業部で営業を担う吉田優が務め、言葉・コミュニケーション・関係性のつくり方について、約45分にわたって語り合いました。
登壇者プロフィール:Aマッソ・加納 氏(ワタナベエンターテインメント所属)

1989年生まれ、大阪府出身。幼馴染のむらきゃみとお笑いコンビ「Aマッソ」として活動。
独自の言語感覚と鋭い視点を活かした漫才・コントで注目を集める。ライブ活動に加え、テレビやラジオ、執筆など幅広く活躍。近年はエッセイ・小説の発表やトークイベントへの出演など、表現の幅を広げている。
人はなぜ、誰かのファンになるのか
最初のテーマは、「人はなぜ、誰かのファンになるのか」。
💡このセクションのポイント
ファンになるきっかけは一つではない:一瞬で落ちるタイプ、じわじわ好きになるタイプ、間口は人によって異なる
サービスではなく”人”がきっかけになる:その人の対応が良かったから、また使いたいと思う体験はカスタマーサポートでも起きている
どこから好きになるかは予測できない:だからこそ、すべての接点で誠実であることが意味を持つ
加納さんは、ファンになる瞬間を「覚えているタイプ」だと言います。お笑いのネタをきっかけに好きになったケースもあれば、「この店員さんがいいから通う」というケースもあるそう。どちらも、明確な瞬間として記憶に残っているのだとか。

そんな加納さんが直近で印象に残っているというのが、駅の窓口でのエピソード。チケットの変更手続きの際、丁寧な対応をしてくれたスタッフに出会い、「この窓口、また使いたい」と感じたといいます。
サービスの内容ではなく、その人の対応が好きになるきっかけになった——という体験は、カスタマーサポートに携わる方にとっても、思い当たる節があるのではないでしょうか。
また、今回の登壇前にラジオでファンの方に「どこから自分のファンになったか」を募ってみたところ、「このロケを見て」「このネタを見て」「あの番組のゲストで見て」と、予想もしなかった多様な入口があることがわかった、というエピソードもシェアしてくれました。
ファンになる瞬間は一つではなく、予測もできない。だからこそ、どの接点においても誠実であり続けることが、長い目で見たときに積み重なっていく——そんな気づきを得られた話でした。
人に届く言葉とは何か
続いてのテーマは、「言葉の届け方」。ラジオ、テレビ、エッセイ、SNS——さまざまな場で言葉を発する加納さんに、媒体ごとの使い分けや、言葉を選ぶ際に大切にしていることを聞きました。
💡このセクションのポイント
声色・トーンは内容以上のことを物語る:媒体によって言葉の届き方は変わり、使い分けが必要になる
「わからない」を正直に伝える誠実さが信頼をつくる:迷いをそのまま伝えることが、かえって相手との距離を縮めることがある
受け取られ方のズレは日常茶飯事:一個一個に落ち込まず、どう届けるかを考え続ける姿勢が大切
加納さんが強調したのは、「声色やトーンは、内容以上のことを物語る」という感覚です。ラジオでは、答えが出ていないことをそのまま「どうなんやろうな」と投げかけることができますが、文章は違う。迷いをそのまま書き続けるわけにはいかないから、発信する媒体によって言葉の形を変える必要があると言います。

一方で、「わからない」「一緒に迷いましょう」と正直に伝えることが、かえって信頼につながる場合もあるという話も印象的でした。加納さんの後輩で、芸人から保険の営業に転じた方が、なかなかお客様に強く勧められず「どうですかね、難しいですね」と言い続けていたところ、その誠実さが長期的に評価されて成績が上がっていったというエピソードです。
カスタマーサポートの電話対応でも、お客さまが迷っているのを感じた時に「一緒に考えましょう」と伝えることで、安心感が生まれる場面はあるのではないでしょうか。確信を持てる内容はメールで伝えきる、迷いが残る内容は会話で丁寧に——そんな手段の使い分けは、カスタマーサポートの現場にも通じる感覚かもしれません。
また、「自分が伝えたつもりなのに、思った通りには受け取られなかった」という経験について聞くと、加納さんは「日々それ」と笑いながらも、受け取られ方のズレに一個一個落ち込んでいたら前に進めないが、どう届けたら伝わりやすいかを考え続けることはやめない、という姿勢を話してくれました。
カスタマーサポートの現場でも、「この伝え方は合っていたかな」と持ち帰ることは多いはず。完璧な言葉はないかもしれませんが、相手を想像しながら選び続けることが、関係性を育てていくのだと気づかせてくれる話でした。
一度きりで終わらない関係性はどう生まれるのか
最後のテーマは、継続する関係のつくり方です。
💡このセクションのポイント
たった一通が、続ける力になる:大勢に届かなかった瞬間があっても、一人に届くことで救われる体験は、カスタマーサポートでも同じ
「次が楽しみ」と思ってもらえる関係をつくる:自分自身がワクワクしていることが、ファンの期待とイコールになる
全ての関係は一対一から始まる:大きな組織になっても、最初の接点は必ず人と人のやり取りから生まれる
加納さんが話してくれたのは、M-1グランプリの予選で何度も敗退を繰り返していた時期のこと。自信を持って作ったネタが評価されず、「このまま続けていていいのか」と思い悩んでいたとき、劇場での公演後にファンレターをもらったと言います。その一通が、今でも忘れないくらい励みになったのだとか。

「大勢に届かなかった瞬間があったとしても、ひとりに届くだけで救われることがある」——これはカスタマーサポートでも同じかもしれません。対応後のアンケートで「あの担当の方がとても良かった」という声をもらった経験がある方は、その言葉がどれだけ力をくれたか、思い出せるのではないでしょうか。
また、加納さんはファンの方からよく「次に何をしてくれるのかワクワクしている」という言葉をもらうと言います。漫才だけでなく映像・小説・イベントとさまざまな表現に挑み続ける加納さん自身も、自分の次の展開をワクワクしながら考えているそう。自分の気持ちと周りの気持ちがイコールであることが、ずっと応援し続けてもらえる関係をつくっているのかもしれない、という話は、「自分が一番自分のサービスのファンであること」の大切さにも重なりました。
セッションの最後、加納さんはカスタマーサポートに携わる参加者へ向けてこんなメッセージを伝えてくれました。
人って、本当に見ているんです。自分が何気なく流したと思っていても、その人はしっかり受け取っていることがある。大きな組織になればなるほど、一人ひとりへの対応が見えにくくなるけれど、全ては細かいところから始まっている。
一本の電話、一通のメール——それが誰かの記憶に残り、関係性を続かせていく起点になり得る。カスタマーサポートという仕事が持つ可能性を、改めて感じさせてくれるセッションでした。
まとめ
本セッションを通じて浮かび上がったのは、カスタマーサポートが「対応を完結させる場」ではなく、「関係性をつくっていく場」であるという視点でした。
ファンになるきっかけは予測できないからこそ、すべての接点において誠実であり続けることが積み重なる。言葉の届き方は相手や媒体によって変わるからこそ、相手を想像しながら選び続けることに意味がある。そして、どんなに大きな組織になっても、最初の関係は必ず一対一の人と人のやり取りから始まる——加納さんの言葉と経験は、日々お客さまと向き合うカスタマーサポートという仕事の根幹を、改めて気づかせてくれるものでした。
なお、「Customer Support Conference 2026 Spring」は、6月18日(木)にアーカイブ配信を予定しています。ライブ配信をご覧いただけなかった方は、ぜひこちらをお楽しみください。


