
Tayori Blogでは、CX(顧客体験)とEX(従業員体験)に関する情報を継続的にウォッチし、業界の動きを定点観測しています。
2026年6月30日から7月31日にかけては、カスタマーサポートや問い合わせ対応の現場でAIを活用する動きが大きな潮流として見られました。
顧客体験(CX)の動き
① FAQ・ナレッジの自動化
問い合わせ対応の一次窓口をAIに任せる動きが目立ちました。
noco株式会社は、AIカスタマーサポートシステム「ヘルプドッグ」の提供にあわせて、FAQ運用のノウハウを紹介する学習メディア「サポートの教科書」を開設しました。
株式会社シーラベルは、BtoB製造業向けに問い合わせ対応の負担を減らしながら商談化を後押しする製品データベース・資料管理ツールを提供開始しています。
株式会社エスタイルは、加盟店4,800社を抱える株式会社IBJの問い合わせ対応工数を約40%削減したと公表しており、具体的な効果値を示す事例として目を引きます。
ツールの提供だけでなく、運用ノウハウの発信までセットで行う動きが増えているのは、「導入したものの使いこなせない」という失敗を防ぐための工夫と言えそうです。
FAQやナレッジをAIが扱える形に整備すること自体が、一次対応の自動化における実質的なハードルになっているとも読み取れます。
② 業界特化型のAI活用
医療・宿泊など特定業界向けのAI活用も広がっています。
株式会社VISTAは秋田市と協働し、通院・退院の搬送手配を自動化するAIコールセンターの実証事業を、NutmegLabs Japan株式会社は宿泊施設向けの問い合わせ対応AI基盤を本格提供開始しました。
株式会社BOTANICOが発表した調査では、既存クライアントの60%がクレーム対応でAIを活用している、または活用を希望しているという結果も示されています。
汎用的なチャットボットではなく、業界特有の問い合わせパターンに合わせたAIが増えているのは、AI活用が「導入するかどうか」の段階から「自社の業務にどう最適化するか」という一段先の検討フェーズに移っていることの表れと見られます。
従業員体験(EX)の動き
① 社内ヘルプデスクへの波及
社外向けのカスタマーサポートだけでなく、社内問い合わせ領域でのAI活用も目立ちました。
GMOインターネットグループ(GMOペパボ)は新ソリューション「GMO即レスAI for CS」を、株式会社TOKIUMは「TOKIUM AIヘルプデスク」のChrome拡張機能を、それぞれ提供開始しています。
株式会社AIXも取引先企業のカスタマーサポート業務効率化支援を開始しました。顧客向けの窓口だけでなく、社内の問い合わせ対応にも同じAI技術が転用され始めているのは注目したい点です。
CX(顧客体験)向けに培われた自動応答の仕組みが、EX(従業員体験)の向上にもそのまま活用できることを示す動きと言えそうです。
② 人手不足・育成負担への危機感
サービスの提供各社によるプレスリリースだけでなく、業界の課題感を示す調査結果の公表も見られました。
株式会社インゲージの調査では、カスタマーサポート現場で新人が独り立ちするまで「半年以上」かかると回答した企業が過半数にのぼり、育成コストの限界を背景に6割超がAI活用に期待を寄せていることが明らかになっています。
ここまで見てきた動きは、まさにこの調査が示す危機感への回答と位置づけられそうです。
人手を増やす余地が限られる中、AIに一次対応やナレッジの整理を任せることで、限られた人員を育成や難易度の高い対応に振り分けようとする狙いが各社に共通して見られます。
まとめ
今回の動きに共通しているのは、「AIによる一次対応の自動化」と「そこで蓄積したナレッジの活用」が同時並行で進んでいる点です。
特に、新人育成に割ける時間の不足や、対応ノウハウが属人化し組織に残っていないという課題感は、業種や対象領域を問わず共通して見られました。
カスタマーサポートの現場でAI活用を検討する際は、個々のツールの機能比較だけでなく、そこで得られる対応データをどう組織のナレッジとして資産化していくかという視点が、今後より重要になっていきそうです。
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