
「一人ひとりの状況に合わせたマネジメント」は、多くの企業が理想として掲げながらも、組織が大きくなるほど実現が難しくなるテーマです。
株式会社NTT HumanEXは2026年7月14日、NTT東日本グループ約3万人の社員を対象に、自律的な成長やキャリア形成、マネジメントの支援に取り組むと発表しました。大規模組織における人的資本経営の高度化を、どのように具体化しようとしているのかを見ていきます。
「経験や勘」に依存したマネジメントからの転換
発表によると、NTT東日本ではこれまでも自律的なキャリア形成支援や成長機会の拡充、1on1の強化に取り組んできました。しかし、事業領域の拡大や働き方・価値観の多様化が進む中で、マネージャーの経験や勘に依存した従来型のマネジメントでは、社員一人ひとりの状況に応じた支援が難しくなっているという課題が背景にあります。
この課題に対応するため、グループ会社である株式会社NTT HumanEXが、人的資本経営コンサルティングの知見とAIによるデータ分析を組み合わせた伴走型のコンサルティングを、2026年7月13日から提供開始しました。
具体的には、タレントマネジメントデータや人事評価、育成履歴、社員が設定した目標、エンゲージメントデータといった人事関連データに加え、外部サービス「ミキワメAI」による社員一人ひとりの性格特性・コンディションデータを統合し、組織や個人が抱える課題を多面的に可視化する仕組みです。
可視化した結果をもとに、コンサルタントが改善施策の立案・実行支援、効果検証までを一貫して伴走するとしています。
データと対話を組み合わせる狙い
大規模な組織においては、データによる可視化だけでは組織は変わらず、マネージャーと社員の対話の質そのものを高めていく必要があります。
今回の取り組みが目指すのは、データ分析を「対話のきっかけ」として位置づけ、社員の自律的なキャリア形成と、マネージャーによる個別最適な支援を両立させる点にあると見られます。単にツールを導入するのではなく、可視化から施策の実行・定着までを一貫して支援する体制を敷いている点が特徴と言えそうです。
なお、コンディション可視化に用いられている「ミキワメAI」は株式会社リーディングマークが提供するHRサービスで、2026年5月時点で約6,000社・200万人の利用実績があるとされています。
今回の取り組みは、NTT HumanEXの組織開発の知見と、こうした外部サービスのデータ分析力を組み合わせた事例として位置づけられます。
蓄積したデータをどう活かすか
今回の取り組みでは、NTT東日本グループの一員であるNTT ExCパートナーグループが、NTT東日本のタレントマネジメントデータや人事評価・育成履歴などの分析・活用を担っており、そのデータ基盤が土台となっている点も特徴です。
発表では、今後の展開として、大規模組織への伴走支援を通じて得られた実践知やベストプラクティスを蓄積・体系化し、NTTグループ各社をはじめ人的資本経営の高度化に取り組む幅広い企業・団体へサービスを展開していく方針も示されています。
単発の施策で終わらせず、継続的にデータを蓄積しながら組織づくりの型を磨いていこうとする姿勢がうかがえます。
大規模組織のEX向上に共通する課題
社員数が数千人、数万人規模になると、経営層が掲げる理念と、現場一人ひとりが感じる実感との間にギャップが生まれやすいことは、これまでも指摘されてきました。特に、マネージャーが部下一人ひとりの状況を把握しきれないまま画一的な対応をしてしまうことは、大規模組織が共通して抱えやすい課題です。
NTT HumanEXによる今回の取り組みは、そうしたギャップを埋めるために、データに基づく可視化とマネージャーによる対話の両輪を回していこうとする試みと捉えられます。
人的資本経営に関する情報開示が上場企業を中心に進む中、開示すべき指標をそろえること自体が目的化してしまう懸念も指摘されています。
その意味で、データを「対話の質を高めるための材料」として位置づけ、現場のマネジメントに落とし込もうとする今回のアプローチは、開示のための取り組みにとどまらない実践例として参考になりそうです。
「大規模組織でどう働きがいを底上げするか」という課題は、業種や企業規模を問わず、多くの組織にとって共通する論点ではないでしょうか。
出典:NTT東日本グループ、約3万人の社員の働きがい向上に向けた自律的成長・キャリア形成・マネジメント支援の取り組みを開始
💡あわせて読みたい
「理念」8割、「実感」は半数未満―人的資本経営に見る、従業員体験(EX)のギャップ
【Tayoriサポートからのおたより】新メンバーの定着を後押し!EXを高めるマニュアル「3つのルール」




