
Tayori Blogでは、CX(顧客体験)とEX(従業員体験)に関する情報を継続的にウォッチし、業界の動きを定点観測しています。
2026年7月31日から8月31日にかけては、2026年10月に施行される改正労働施策総合推進法によるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化を前に、対策の中身を具体化する動きが目立ちました。
「対策済み」から「機能する対策」へ
① 通話の記録・可視化に関する動き
迷惑電話対策サービスを提供するトビラシステムズ株式会社が、電話によるカスハラ被害を受けたことがある人を対象に実施した調査では、被害経験者の4人に1人が「週1回以上」の頻度でカスハラを受けていることが分かりました。
実際に導入され、効果を実感した対策として上位に挙がったのは自動通話録音や通話前の録音告知アナウンスで、証拠の保全とカスハラ抑止の両立を狙う動きが広がっているようです。
② ウェアラブル端末による早期検知
株式会社アイフォーカスは、接客対応する従業員が身につけたスマートウォッチで音声を記録し、AIがカスハラに該当する発言などを検知して管理者へ通知する「カスハラ対策Watch」を発表しました(2026年10月1日よりサービス提供開始)。
心拍センサーによる体調モニタリング機能も備えており、対応の記録だけでなく、対応中のスタッフの状態そのものを見守る方向へ、対策の焦点が広がりつつあることがうかがえます。
③ 保険・実践ガイドなど、対策を裏付ける周辺サービスの登場
日新火災海上保険株式会社は、初期対応支援から費用補償までを一体化した「カスハラから従業員をまもる保険」の提供を開始しました。
株式会社ヴァンガードスミスによる有償研修と組み合わせることで、東京都の「カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金」の申請要件も満たせる設計になっているといいます。
また、株式会社SAグループの一般社団法人クレア人財育英協会は、「相談窓口の設置だけでは現場を守れない」として、一次対応・二次対応の役割分担を解説する動画と、現場配布用のカスハラ対応マニュアル・チェックリストの無料提供を始めました。
マニュアルや相談窓口といった「制度」は多くの企業ですでに整いつつある一方、それを裏付ける保険商品や、現場ですぐ使える実践的なガイドが登場し始めていることは、対策の重心が「あるかないか」から「実効性があるか」へ移りつつある表れと見られます。
まとめ
今回集まった動きに共通しているのは、2026年10月の義務化そのものよりも、その先にある「対策をどう機能させるか」に関心が移っている点です。
通話録音やウェアラブル端末による記録・検知の仕組み、対応を金銭的・体制的に支える保険や資格研修など、対策の手段は多様化しています。
一方で、対応マニュアルの内容が現場に浸透していなければ、こうした周辺サービスを整えても効果は限定的になりかねないという指摘もあります。
義務化まで残り1ヶ月というタイミングで、制度を整えるフェーズから、現場で実際に機能させるフェーズへと、企業の関心が移り変わっていく様子を今後も注視していきたいと思います。
💡あわせて読みたい
カスタマーハラスメントの理解と対策
カスタマーハラスメントの事例集:実際のケースから学ぶ

