カスタマーハラスメントの事例集:実際のケースとその対策
現代のビジネス現場において、カスタマーハラスメントは深刻な問題です。顧客からの過剰な要求や不適切な言動により従業員が心身の健康を崩す、業務に支障をきたすなど企業に悪影響を及ぼしているためです。本記事では、カスタマーハラスメントの事例とともに対策のポイントを解説。迅速かつ適切な対策で、カスタマーハラスメントから従業員を守りましょう。
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カスタマーハラスメントとは
厚生労働省が作成した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル※1」において、カスタマーハラスメントは「顧客等からのクレーム・言動のうち、要求の内容の妥当性に照らして、社会通念上不相当な手段・態様により労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。カスタマーハラスメントは従業員の心身や企業のパフォーマンスに悪影響を及ぼすリスクが高く、適切な対策をとる必要があります。
※1 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル|厚生労働省
カスタマーハラスメントの定義
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先から従業員に対する過剰な要求や不当な言いがかり、嫌がらせなどの迷惑行為のことです。特徴としては、暴言や罵声、威圧的な態度、過大な要求、長時間の拘束、人格否定、執拗な嫌がらせ、セクハラまがいの発言などが挙げられます。これらの行為は従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、企業の生産性や業績にも重大な影響を与えています。
カスタマーハラスメントの種類
カスタマーハラスメントには、さまざまな種類があります。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル※1」の中から、典型的なケースとともにいくつか紹介します。
1、暴言
大声・暴言で執拗に従業員を責める、恫喝・罵声を繰り返し浴びせる。
例)商品の在庫切れや従業員の対応ミスに対して、「死ね」「馬鹿」などの侮辱的な言葉を用いて責め立てる。
2、権威型
優位な立場にいることを利用して高圧的な態度で従業員を威嚇する、特別扱いを要求する。
例)「自分が商品を買っているからお前の給料が支払われるんだ、だから何でも言うことを聞け」とルール外のサービスを求めてくる。
3、正当な理由のない過度な要求
言いがかりによる金銭および返金、値下げなどの要求、制度上対応できないサービスの強要。
例)自分で服を汚したにもかかわらず言いがかりをつけてクリーニング代を要求する、購入履歴や保証書の有無を確認できない汚破損品の返品要求。
4、時間拘束
一定時間を超える長時間の拘束、長時間の電話対応、業務に支障を及ぼすレベルの時間拘束。
例)閉店時間を過ぎても店舗が要求を呑むまで帰らない、当初の話題から話をすり替えて長時間執拗に責め続ける。
5、SNSへの投稿
従業員の個人情報をインターネット上に公開する、従業員を撮影した画像や動画を誹謗中傷とともに投稿する。
例)自分の要求を呑まなかった従業員に対して、SNSに「○○店の△△というスタッフの接客態度が悪い」と投稿、拡散する。
6、リピート型
毎日電話をかける、来店するなどして同じクレームを繰り返す。
例)即時対応が難しい、もしくは制度上対応できない要求をしておいて、改善が見られないと毎日のようにクレームを言い続ける。
7、セクハラ
特定の従業員へのつきまとい、わいせつな行為や発言。
例)電話口で問い合わせと称して卑猥な言葉を言わせようとする、特定の従業員に対してプレゼントを渡そうとする。
カスタマーハラスメントの具体的な事例
カスタマーハラスメントの事例を知ることで、企業は同様の問題が発生する前に予防策を講じることができます。また、実際の事例をもとに研修やシミュレーションを行えば、従業員はカスタマーハラスメントへの対応スキルが身につきます。法的措置が必要な場合の対応方法や手順の整備もできるでしょう。ここでは、実際に起きたカスタマーハラスメントの事例を紹介します。
カスタマーハラスメント事例①
JR東日本では、多い時で月30件ほどのカスタマーハラスメントが発生しています。具体的な事例としては、「切符を紛失した乗客に再購入を促した際に罵声を浴びせられた」「グリーン券を持たない乗客に普通車を利用するよう伝えたら乗務員室のドアを蹴られた」などです。従来から駅係員や乗務員に対するカスタマーハラスメントが問題となっていたこともあり、対応方針を策定。身体的・精神的な攻撃、執拗な言動、過剰なサービス要求などを「カスハラ行為」として明示し、該当する行為が行われた場合はサービスを休止する対応を取るとしています。※2
※2 カスハラと正当なクレームの違いは?JR東日本など対応事例 現場では“線引き難しい”との声も|NHK
カスタマーハラスメント事例②
タリーズコーヒージャパン株式会社では、店舗スタッフがネームプレートの名前をもとにSNSで検索され、つきまとわれるトラブルが発生しました。このトラブルをきっかけに従来のカスタマーハラスメント対応では不十分と判断し、本格的に対策を検討。ネームプレートの氏名をイニシャル表記に変更しました。変更後、従業員へのつきまとい被害はほぼなくなり、スタッフからも「安心して働ける職場になった」との声が寄せられているとのことです。※3
※3 取組のきっかけはSNSでのつきまとい行為|厚生労働省「あかるい職場応援団」
カスタマーハラスメント事例③
日本航空株式会社では一部の利用客からの過剰な言動や要求により従業員が疲弊し、業務の生産性が低下してしまう事態に陥っていました。そこで、自社におけるカスタマーハラスメントの判断基準を作成し、従業員へ対応方針の周知と研修を実施。従業員に、「過剰な要求に対して怖い、辛いと感じた際にはその気持ちを表現してもよい」と伝えました。従業員が冷静かつ毅然と対応できるようになった結果、怒鳴っていた利用客が冷静さを取り戻すケースも見受けられたそうです。従業員の職場に対する安心感や働きやすさも向上しました。
※4 世界一のサービス品質と安心して働ける職場環境の両立を目指して|厚生労働省「あかるい職場応援団」
事例に基づく対策のポイント
先述のとおり、現在はカスタマーハラスメントから従業員や職場環境を守るために対策を講じる企業が増えてきました。2024年1月にTayoriが実施したカスタマーサポート調査※5では、カスハラにおける企業の取り組みとして「従業員へのトレーニング」「事例の報告と記録」「エスカレーションによる迅速な対応」などが挙がっています。下記に挙げるポイントを参考にしてカスタマーハラスメント対策に取り組んでみてください。
※5 生成AIのCS活用は二極化 最新カスタマーサポート調査をTayoriが公開|株式会社PR TIMES
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対応方針の策定と従業員教育
カスタマーハラスメントに対処するためには、対応方針の策定と従業員教育が有効です。企業としてカスタマーハラスメントに対する基本方針を明確にすることで、全従業員が一貫した対応を取れます。フォームで社内から過去の事例を集めて、対応マニュアルやナレッジを作成するのも手です。従業員向けにカスタマーハラスメント対策の研修を実施するのもおすすめです。基本方針の周知や対応マニュアルを踏まえたシミュレーション訓練を行えば、従業員のカスタマーハラスメントへの対応スキルが向上するでしょう。
迅速な対応とエスカレーション
カスタマーハラスメントから従業員の安心・安全を確保するためには、迅速な初期対応とエスカレーションが重要です。フォームを活用して事例を共有する、対応を属人化させないなどチーム全体でフォローする体制を整えておくと良いでしょう。現場だけで解決できない事案が発生したら、速やかに上司や専門部署に報告して指示を仰いでください。迅速な対応により、従業員が悪質な顧客から不当な扱いを受け続けることを防げます。また、早期にカスタマーハラスメントの問題を解決することで、従業員のストレスやメンタルヘルスへの悪影響を最小限に抑えられます。
法的措置の検討
状況によっては法的措置の検討も必要です。近年はカスハラに対する法整備も進み、「旅館業法改正※7」「車内におけるタクシーとバス運転手の氏名掲示義務の廃止※8」などカスタマーハラスメントから法的に従業員を守る仕組みが整いつつあります。
※7 令和5年12月13日から 旅館業法が変わります!|厚生労働省
※8 バス、タクシーなどの車内における乗務員等の氏名表示がなくなります!|国土交通省
法的措置の手段としては下記が挙げられます。
1、警察への通報
暴力や脅迫などの犯罪行為が含まれる場合は警察に通報し、必要に応じて被害届を提出のうえ対処してもらいましょう。
2、裁判所への訴訟
名誉毀損や業務妨害などの被害を受けたときは、裁判所に訴訟を提起して損害賠償を求めることが可能です。
3、弁護士への相談
カスタマーハラスメントの事案が法的措置に値するか判断に迷ったら、弁護士に相談して法的助言を得るのも手です。
上記のどの手段を取る場合でも、重要なのはハラスメント行為の記録を残しておくことです。フォームで事例を報告する、FAQを活用してナレッジにまとめておくなど、いざというときのために書面でカスタマーハラスメント事例を記録しておきましょう。
まとめ
本記事では、カスタマーハラスメントの定義や種類、対応策について解説しました。企業がカスタマーハラスメントの対策を講じるうえで、他社のカスタマーハラスメントの事例を知るのは有効な手段です。対応マニュアルの作成や法的措置が必要かどうかの判断基準の参考にもなるでしょう。Tayoriでは簡単にフォームやFAQが作成できます。カスタマーハラスメント対策にフォームやFAQを活用したいと考えている人は、下記リンクよりお試しください。