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HRテック導入のメリットとステップを事例で解説!人事が知るべき知識

近年、働き方の多様化や人材の流動化が進み、人事・労務業務は複雑化しています。本記事では、この課題を解決するHRテックについて、その定義からメリット、そして具体的な導入ステップまでを徹底解説します。
HRテックは、煩雑な定型業務を自動化し、勘ではなくデータに基づく戦略的な意思決定を可能にすることで、人事部門を企業の成長を牽引する部門へと変革させます。貴社の人事DXを成功に導くための実践的な知識をご紹介します。

【目次】

  1. HRテックとは?人事領域のDXを解説
  2. HRテックが急速に普及した3つの背景
  3. HRテックの主要7領域とできること
  4. HRテック導入の2大メリット
  5. HRテック導入を成功させる3ステップ
  6. HRテック導入で失敗しないための注意点
  7. まとめ
  8. よくある質問

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HRテックとは?人事領域のDXを解説

HRテック(HR Tech)は、AI・ビッグデータなどの技術で人事労務業務を効率化し、戦略的な人材活用を目指す手法です。

従来の管理が「紙やExcel中心」であるのに対し、HRテックは「データ分析・活用」で意思決定の質を向上させ、人事領域のDXを実現します。 テクノロジーの進化と人手不足を背景に、人事戦略の重要性が高まり、今、最も注目されているアプローチです。

HRテックの定義と読み方

HRテック(エイチアールテック)とは、「HR(Human Resources:人事・人的資源)」と「Technology(テクノロジー:技術)」を組み合わせた造語です。

これは、AIやビッグデータ解析といった最先端の技術を活用し、採用、育成、労務管理など人事が抱える課題を解決し、業務の効率化と戦略的な人材活用を実現する概念です。従来、紙やExcel中心だった人事管理をデータドリブンな意思決定に変え、人事部門のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進します。

従来の人事管理との違い

HRテック導入によって、人事管理は「属人的な管理」から「データに基づく管理」へと劇的に変化します。従来は担当者のスキルや経験に依存し、紙や散在したExcelでの集計に多くの時間を費やしていました。

しかしHRテックでは、全社員のデータを一元管理し、AIや分析ツールを使って客観的な事実(例:離職率が高い部門の傾向、ハイパフォーマーの特性)を素早く把握できます。

これにより、「勘」ではなく「データ」に基づいた、戦略的で効果的な人材配置や施策を実行できるようになるのです。

比較項目 従来の人事管理(紙・Excel) HRテック(HR Tech)
情報管理 部署ごと、個人ごとの属人的な管理 システムによる一元化・可視化
データ活用 集計・分析に手間がかかり、活用が限定的 リアルタイムな分析が可能
意思決定 経験や勘、過去の慣習に基づく データに基づく客観的な意思決定
業務効率 手作業が多く、時間とコストがかかる 自動化により定型業務から解放

HRテックが急速に普及した3つの背景

HRテックの普及背景には、下記の3つの要素が深く関わっています。

  • 働き方の多様化 テレワーク、副業など、管理すべき人事情報が複雑化
  • テクノロジーの進化 AI・クラウドなどの普及で、安価かつ高機能なシステム利用が可能に
  • 戦略的人事の重要性 人材不足解消や企業成長のため、データ活用による人事戦略の必要性が増大

働き方の多様化と人材の流動化

近年、リモートワークの普及や副業・兼業の増加により、社員の働く場所や時間が多様化し、一律的な管理が困難になっています。これに伴い、転職や離職といった人材の流動化も加速しています。

このような状況下で、企業には、多岐にわたる複雑な人事情報を正確に把握し、個々の従業員の状況に応じたサポートを提供することが求められています。従来の管理手法では対応が難しくなったため、柔軟な勤怠管理や従業員エンゲージメントの把握を可能にするHRテックが不可欠となりました。

HRテックは、多様な働き方を支えながら人材の定着を促し、個々の能力が最大限に発揮される環境を整備するために極めて重要です。

クラウド(SaaS)技術の進化

HRテックの急速な普及を決定づけたのが、クラウド(SaaS)技術の進化です。従来型のシステムのように高額な初期費用や自社サーバーの構築が不要になり、インターネット経由でサービスを利用できるSaaS型が主流となりました。

これにより、低コストかつ短期間での導入が可能となり、特にIT予算が限られる中小企業においてもHRテックを活用するハードルが大幅に下がりました。 加えて、インターネット環境があれば場所や端末を問わずアクセスできる利便性が、リモートワークなどの多様な働き方を強力に支え、普及を大きく後押ししています。

データに基づく戦略人事の重要性の高まり

従来の勘や経験に頼る属人的な人事では、急速に変化する経営環境に対応することが難しくなっています。

少子高齢化による人手不足が深刻化する中、企業成長のためには、人事活動を経営戦略と一体化させ、戦略的に人材を確保・育成・配置する必要性が増しました。

HRテックは、社員データやパフォーマンスデータを客観的に分析し、データに基づいた意思決定を可能にします。これにより、最適な人材配置や効果的な育成計画を策定でき、経営戦略の実現に直接貢献する「攻め」の人事への転換が求められています。

HRテックの主要7領域とできること

HRテックは人事プロセス全般をカバーし、以下の7領域で課題を解決します。

領域 解決する人事課題
1. 採用管理 煩雑な採用業務を効率化し、最適な人材獲得を実現する。
2. 勤怠管理 複雑な労務コンプライアンスを遵守し、管理工数を削減する。
3. 給与計算 正確かつ迅速な給与支給を保証し、法改正に対応する。
4. 人事評価 評価の公平性を高め、社員の成長と目標達成を結びつける。
5. タレントマネジメント 社員の能力・スキルを可視化し、最適な人材配置と育成を行う。
6. eラーニング/LMS 社員の体系的な育成を効率的に行い、学習成果を管理する。
7. 従業員エンゲージメント 組織の状態を把握し、社員の意欲向上と離職防止につなげる。

採用管理・育成

「採用管理」では、ATS(Applicant Tracking System:採用管理システム)が中心的な役割を果たします。ATSは、求人サイトとの連携による母集団形成から、応募者情報の受付、選考進捗管理、面接日程調整、合否連絡までを一元管理し、採用担当者の業務負荷を大幅に軽減します。

これにより、データに基づいた迅速な意思決定が可能となり、採用の質とスピードが向上します。

さらに、採用した人材の入社後もHRテックは活用されます。「育成」領域では、LMS(Learning Management System:学習管理システム)が、入社時研修(オンボーディング)のデジタル化や、社員向けのスキルアップ研修の配信・受講管理を担います。 採用管理と育成システムが連携することで、人材を継続的に活用・成長させる仕組みを構築します。

タレントマネジメント

タレントマネジメントシステムは、全社員のスキル、経験、評価、志向などの人材情報をシステム上で一元化・可視化します。これにより、人事部門や経営層は、誰がどのような能力を持っているかを即座に把握できるようになります。

この可視化されたデータに基づいて、戦略的な人材配置や計画的な育成が可能になります。

  • スキル管理: 必要なスキルを持った人材を社内から素早く検索し、プロジェクトへのアサインや異動に活用します。社員自身も現在の能力と目標達成に必要なスキルとのギャップを認識できます。
  • 後継者育成(サクセッションプラン): 将来の幹部候補や特定の重要ポジションの後継者を早期に特定し、計画的な教育や経験を積ませるための育成プログラムをシステム上で管理・実行します。

このように、タレントマネジメントは、勘や経験に頼らないデータドリブンな人事戦略を実現し、企業の持続的な成長を支えます。

労務・勤怠・給与管理

この領域のシステムは、人事部門の定型業務の自動化による効率化を最大のメリットとします。

  • 労務管理: 従業員の入社・退社時の社会保険手続きや年末調整の書類作成をWeb上で完結・自動化し、紙でのやり取りや記載漏れの手間を削減します。
  • 勤怠管理: GPSやPCログと連携した正確な打刻、複雑なシフトや残業時間の自動集計により、給与計算に必要なデータ作成の手間を大幅に短縮します。
  • 給与計算: 勤怠データや人事情報と連携し、税金や保険料を自動計算するため、ヒューマンエラーをなくし、給与計算にかかる時間を劇的に短縮します。

さらに、これらのシステムは法改正(社会保険、雇用保険など)に自動で対応するため、担当者が常に最新の法規を把握・反映する必要がなくなり、法令遵守(コンプライアンス)の強化に大きく貢献します。

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HRテック導入の2大メリット

下記のようなメリットにより、人事部門はコストセンターからプロフィットセンターへと変わり、経営戦略の実現と企業価値の向上に直接的に貢献できるようになります。

  • 業務効率化: 勤怠・給与計算、入退社手続きなどの定型業務を自動化・デジタル化し、人事担当者の工数とコストを大幅に削減します。
  • 戦略的人事の実現: 人材データを一元管理・分析し、勘や経験ではなくデータに基づく採用、配置、育成などの意思決定を可能にします。

定型業務の自動化による業務効率化

HRテックは、給与計算、勤怠管理、入退社時の社会保険手続き、年末調整などの定型的な手作業を自動化し、人事部門の作業負荷を大幅に削減します。特に給与計算や勤怠集計は、毎月の締め切りに追われる煩雑な作業でしたが、システム連携によりヒューマンエラーなく処理できるようになります。

この自動化によって、人事担当者は集計や入力などのノンコア業務から解放され、戦略的なコア業務へ時間とリソースを集中できるようになります。 具体的には、経営戦略と連動した人材育成計画の策定、データ分析に基づく組織課題の特定、従業員エンゲージメント向上施策の企画など、企業成長に不可欠な業務に注力することが可能になります。

データ活用による戦略的人事の実現

HRテックは、社員のスキル、評価、エンゲージメントなどの人材データを一元的に分析し、人事の意思決定を勘や経験から客観的な事実へと転換させます。

具体的な活用例として、データに基づいた最適な人員配置があります。ハイパフォーマーの属性を分析し、その特徴を持つ人材を適切な部署に配置することで、組織全体の生産性を向上させます。また、エンゲージメントサーベイの結果と離職予兆データを分析し、リスクの高い社員に対して先手を打った離職防止策(面談やサポート)を講じることも可能です。

このように、客観的なデータに基づくことで、組織の意思決定の精度とスピードが向上し、経営戦略と連動した「攻め」の人事が実現します。

HRテック導入を成功させる3ステップ

HRテック導入を成功に導くためのステップは以下の通りです。

  1. 目的設定・計画策定: 解決したい経営課題・人事課題を明確化し、導入目標とKPIを設定する。
  2. サービス選定: 現場の利用状況を想定し、目的達成に最も適した機能と操作性を備えたサービスを選定する。
  3. 運用・改善: 導入後も利用状況を継続的にチェックし、効果測定と機能の改善を繰り返す。

成功のポイントは、ツールを導入すること自体が目的化するのを避け、「何のために導入するのか」という目的(課題解決)を常に意識し、現場を巻き込んだ継続的な運用と改善を行うことです。

STEP1:導入目的の明確化

HRテック導入における最初の、そして最も重要なステップは、「誰の」「どの業務の」「どんな課題」を解決したいのかを具体的に定義することです。

単に「最新のシステムを入れたい」「業務を効率化したい」という曖昧な目的では、最適なツールの選定ができず、導入自体が目的化して失敗に終わるリスクが高まります。

  • 誰の課題か: 現場社員か、人事担当者か、経営層か?
  • どの業務か: 勤怠管理か、人材育成か、採用活動か?
  • どんな課題か: 手続きが煩雑か、データ分析ができないか、離職率が高いか?

これらの問いを深く掘り下げ、課題解決後の「理想の状態」を具体的に描くことが重要です。「勤怠入力時間が半分になり、残業時間が可視化される」「タレント情報が一元化され、後継者候補を3日で特定できる」といった具体的なゴールを設定することで、導入すべき機能やサービス選定の軸が定まり、導入プロジェクトを成功に導くことができます。

STEP2:サービスの比較検討と選定

導入目的が明確になったら、その目的に合致するHRテックサービスを複数ピックアップし、以下の項目で徹底的に比較検討します。

比較検討の主要項目 確認すべきポイント
機能適合性 課題解決に必要な機能(例:OKR管理、パルスサーベイ)が搭載されているか
操作性・UI/UX 人事担当者だけでなく、現場社員がストレスなく使える直感的な操作性か
料金体系 初期費用、月額費用、アカウント数に応じた費用など、総コストは予算内か
連携性 既存の会計システムや他のHRシステムとデータ連携が可能か
サポート体制 導入時のサポート、導入後の問い合わせ対応、法改正への対応はどうか

特に重要なのが、無料トライアルやデモ環境の活用です。パンフレットやウェブサイトの情報だけでは分からない、実際の操作性や使用感を必ず確認してください。社員が日常的に利用するシステムであるため、現場部門のメンバーに実際に触れてもらい、使いやすさに関するフィードバックを収集することが、導入後の定着率を高める鍵となります。最もコストパフォーマンスと目的適合性の高いサービスを選びましょう。

STEP3:社内への導入と定着

システムを導入するだけでなく、実際に従業員に使ってもらい定着させることが成功の最終ステップです。そのためには、導入目的とメリットを従業員へ丁寧に説明する必要があります。

従業員にとっては、これまでとやり方が変わることに抵抗感や不安を抱きがちです。「なぜ新しいシステムが必要なのか」「自分の業務がどう楽になるのか」を明確に伝え、納得感と期待感を持って利用を促しましょう。

導入を成功させるには、全社一斉ではなく、一部門や特定のチームで試行的に導入する「スモールスタート」を強く推奨します。

  1. 試行導入: 負荷が少なく、効果が出やすい部門で限定的に運用し、操作性やエラーを検証する。
  2. 改善と教育: 現場からのフィードバックを基に設定や運用方法を改善し、マニュアルや操作研修を充実させる。
  3. 全社展開: 成功体験を他部門に共有しながら、順次、全社へと展開していく。

この段階的なアプローチにより、リスクを抑えつつ、スムーズな定着を実現できます。

HRテック導入で失敗しないための注意点

システム導入後も、「導入目的の再確認」と「現場を巻き込んだ継続的な運用改善」を行うことが重要です。

主な失敗例:

  • 導入が目的化する: 最新技術を入れることがゴールになり、具体的な課題解決につながらない。
  • 現場の理解を得られない: 操作が煩雑、メリットが不明瞭などの理由で従業員に使われず定着しない。

目的と手段を混同しない

HRテック導入でよくある失敗は、ツール導入自体が目的になってしまうことです。最新のシステムを入れることや他社の導入事例を真似することがゴールになり、「離職率の改善」や「評価プロセスの公平化」といった本来解決すべき課題が置き去りにされます。

結果として、高機能なシステムを導入しても使われなかったり、課題解決に繋がらないムダな機能ばかりを使うことになったりします。

これを避けるためには、常に「私たちはこのシステムを使って、何を解決したいのか」という原点(導入目的)に立ち返ることが不可欠です。システムはあくまで手段であり、課題解決という目的に沿って運用・活用することが、投資対効果を最大化する鍵となります。

費用対効果(ROI)を意識する

HRテック導入にあたっては、システムの初期費用や月額費用といった導入コストだけでなく、それによって得られる効果を具体的に試算することが極めて重要です。

システム導入のROI(Return On Investment:投資対効果)を正確に測るためには、削減できる工数(時間)や、それによる人件費の削減効果を数値化する必要があります。

例えば、「手作業で10時間かかっていた給与計算が1時間に短縮される」といった具体的な試算です。

また、ROIは短期的なコスト削減だけでなく、長期的な視点で判断する必要があります。システムの活用による離職率の低下や、優秀な人材の早期育成など、企業成長への貢献度を含めて総合的に判断することで、その投資が企業経営にとって真に価値があるものかを評価できます。

まとめ

HRテックは、定型業務の自動化による効率化と、データに基づく戦略的人事の実現という2つの変革をもたらします。

これにより、人事はコストセンターから企業成長を牽引するパートナーへと進化します。

導入成功の鍵は、目的を明確化し、費用対効果を意識しながら、現場を巻き込んだ継続的な運用と改善を徹底することです。

よくある質問

HRテックの有名な企業は?

HRテックの有名企業には、SmartHR(労務管理)、カオナビ(タレントマネジメント)、ビズリーチ(採用)などがあります。

HRテックの業界シェアは?

日本のHRテック市場は、2025年度には1,000億円超規模(クラウド市場)と拡大基調にあります。 個別領域では、タレントマネジメントシステム市場でカオナビなどが高いシェアを占めています。

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著者:Tayoriブログ編集部
日頃からカスタマーサポートと向き合うメンバーが、問い合わせ対応の課題解決とビジネス成長を支援するため、カスタマーサポートや業務効率化に役立つ情報を発信しています。

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