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クレームと苦情の違いとは?意味や対応方法をわかりやすく解説

「クレーム」と「苦情」。どちらもネガティブな意見や不満を表す言葉ですが、実は明確な違いがあることをご存知でしょうか?

この違いを理解することは、お客様への適切な対応、ひいては顧客満足度(CS)の向上に欠かせません。

本記事では、クレームと苦情の意味合いの違いから、それぞれに求められる具体的な対応方法までを、わかりやすく解説します。対応の質を高め、ピンチをチャンスに変えるヒントを見つけましょう。

【目次】

  1. クレームと苦情の違いとは?
  2. クレームを伝えるお客様の心理
  3. クレーム・苦情対応の3ステップ
  4. やってはいけないNG対応
  5. 過剰な要求(悪質クレーム)への対処法
  6. まとめ
  7. よくある質問

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クレームと苦情の違いとは?

「クレーム」と「苦情」の定義の違いを理解することが、適切な対応の土台となります。

  • クレーム(Claim):「権利の主張」。損害に基づき、補償や是正を法的な根拠をもって要求すること。
  • 苦情(Complaint):「不満の表明」。商品やサービスに対する不快感や主観的な不満。損害や補償要求の有無は問わない。

本章では、この違いを「本来の意味」「日本での使われ方」「文句との違い」から掘り下げます。

① クレームの本来の意味(Claim):権利の主張

「クレーム」は、英語の「claim」を語源とし、本来「権利の主張」や「要求」を意味します。単なる不満ではなく、商品やサービスによって明確な損害を被った際に、その損害に対する賠償や是正を、正当な法的根拠に基づいて求める行為です。

これは、不当な要求ではなく、消費者が持つ正当な権利を行使する行為です。

具体的な要求の例

  • 損害賠償請求: 製品が原因で怪我を負った場合、治療費や慰謝料を求めること。
  • 契約不履行に対する是正要求: 契約と異なる商品が納品された際に、正しい商品の再納入や返金を求めること。
  • 保証に基づく無償修理要求: 保証期間内の故障に対し、無償での修理や交換を要求すること。

② 苦情の本来の意味(Complaint):不平・不満の表明

「苦情」は、英語の「complain」を語源とし、その本来の意味は「不平」「不満」の表明です。クレームと異なり、必ずしも法的な損害を伴いません。商品やサービスに対する個人的な不満や主観的な期待とのギャップを企業に伝える行為です。

苦情は、賠償を求めるよりも、状況の改善や意見の伝達を主な目的としています。企業が気づきにくいサービスの問題点を教えてくれる、貴重な改善のヒントとも言えます。

具体的な不満の表明の例

  • 接客態度への不満: 店員の言葉遣いや態度が不快だったなど、サービス提供者の質に対する不満。
  • 待ち時間への不満: 長時間待たされた、電話がつながりにくいといったオペレーションに関する不満。
  • 商品のイメージとの乖離: ネット画像と実物の色や質感が異なっていたなど、期待と現実のギャップによる不満。

③ 日本における一般的な使われ方と実務的な使い分け

日本では、「クレーム」という言葉が「苦情(不満の表明)」の意味合いを含めた総称として広く使われています。日常会話では、明確な損害の有無に関わらず、不満や意見全般を「クレーム」と呼ぶ傾向が強いです。

企業の顧客対応(CS カスタマーサポート)やリスク管理においては、対応の緊急度や目的のために両者を実務的に区別します。

  • クレームは、明確な損害に基づき補償や是正を求める緊急性の高い案件として、法務や経営層と連携して対処されます。
  •  苦情は、主観的な不満の表明であり、サービス改善のための貴重なフィードバックとして、現場担当者が傾聴・記録し、品質向上に役立てるために活用されます。

この使い分けが、適切なリソース配分と二次的なトラブル防止につながります。

④ 「文句」との違い

クレーム、苦情、文句は、不満を表現するという点で共通していますが、その目的やニュアンスに明確な違いがあります。

項目 クレーム(Claim) 苦情(Complaint) 文句
目的 権利の主張。損害の是正補償を求める。 不満の表明。改善のための情報提供。 感情の吐露。解決の意図が薄い。
背景 明確な欠陥損害(客観的)。 不快感期待とのギャップ(主観的)。 感情的な怒り苛立ち(非論理的)。

ビジネスシーンと日常会話での使い分け

ビジネスシーンでは、損害と補償を伴うものをクレーム、改善のための意見を苦情として明確に区別し、緊急度や対応部門を分けて対処します。企業は「文句」のような非生産的な言葉を避け、顧客の意図を正確に分類し、適切なリソースを配分します。

一方、日常会話では、「文句」は個人的な愚痴や批判といったネガティブなニュアンスが強く非公式な場で使われます。「クレーム」は不満全般を指す総称として使われることもありますが、企業への公式な不満を伝える際に使われ、「苦情」はややフォーマルな改善意見として使われます。

クレームを伝えるお客様の心理

お客様がクレームを伝える際の代表的な心理を理解することが、適切な対応の第一歩です。

  • ①謝罪を求めている
  • ②共感・理解してほしい
  • ③改善を期待している 

① 謝罪を求めている心理

お客様は、商品やサービスへの不満以上に、「不快な思いをさせられた」という感情的な被害に対し、企業からの承認と敬意を求めています。

形だけではない、誠意が伝わる謝罪が極めて重要です。傾聴の姿勢で相手の感情と状況を理解し、「不快な思いをさせて申し訳ない」と心から伝えることで、お客様の怒りの感情は鎮まり、その後の解決策の提示がスムーズに進む土台が築かれます。謝罪を軽んじると、二次クレームに発展するリスクが高まります。

② 共感・理解してほしいという承認欲求

お客様は、トラブルに伴う自身の苦労や不便、感情的な部分を企業側に正しく理解してもらいたいという承認欲求を強く持っています。

「お困りのご状況だったことと、お察しいたします」といった共感を示す言葉は、「あなたの状況と気持ちを理解しています」というメッセージを伝え、お客様の怒りの感情を和らげます。共感によって信頼関係が回復し、冷静な話し合いへ移行できるようになります。傾聴と共感は、トラブル解決の鍵となる初期対応です。

③ 改善を期待しているという建設的な意見

クレームを伝えるお客様の中には、企業のサービスや製品の向上を心から願っている心理を持つ方が多くいます。それらのクレームは、企業への期待の裏返しであり、一種の愛着や貢献意欲から生まれていると言えます。

このような建設的な声は、企業にとって市場調査では得られない、非常に貴重なビジネス改善のヒントとなります。企業の潜在的な問題や顧客の真のニーズを浮き彫りにし、真摯に対応し分析することで、品質向上、競合他社との差別化、ひいては顧客ロイヤリティの強化へとつなげることができます。

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クレーム・苦情対応の3ステップ

クレームや苦情に対応する基本的な手順は、以下の3ステップです。

  • ステップ1:傾聴と共感で受け止める
  • ステップ2:事実関係を正確に確認する
  • ステップ3:解決策や代替案を提示する

ステップ1:傾聴と共感で受け止める

クレーム対応で最も重要なのは、「傾聴(けいちょう)」です。これは、お客様の話を途中で遮らずに最後まで聞く姿勢を意味します。お客様の感情を吐き出させることで、怒りを鎮め、冷静さを取り戻すことができます。

相手の意見を受け止める言葉の例

  • 「ごもっともです。」
  • 「おっしゃる通りです。」
  • 「ご指摘の点は重く受け止めます。」
  • 「大変なご不便・ご迷惑をおかけし、心よりお詫び申し上げます。」

このように、まず非を認め、感情に寄り添う姿勢を示すことで、お客様の承認欲求を満たし、信頼関係を築くことができます。これが、クレームをスムーズに解決するための土台となります。

ステップ2:事実関係を正確に確認する

感情が落ち着いたら、次は問題解決のために事実関係を正確に確認する段階に移ります。情報を整理するための有効な手法が「5W1H」です。

5W1H(いつ: When、どこで: Where、誰が: Who、何を: What、なぜ: Why、どのように: How)を用いて、クレームの情報を構造的に整理します。

  • When: いつ問題が発生したか(日時)
  • Where: どこで問題が発生したか(場所)
  • Who: 誰が関与したか(担当者、顧客)
  • What: どのような問題が起きたか(具体的な事象)
  • Why: なぜ問題が起きたのか(原因)
  • How: どのような結果になったか、どうしてほしいか(要求内容、経緯)

このステップで最も重要なのは、「先入観を持たず、客観的な事実確認に徹する」ことです。お客様の訴えを鵜呑みにしたり、先入観を持ってしまうと、問題の真の原因を見誤ります。事実と感情を切り分け、正確な情報のみを用いて原因を究明することで、根本的かつ永続的な解決策を導き出します。

ステップ3:解決策や代替案を提示する

事実確認の結果に基づき、お客様が納得できる具体的な解決策や代替案を提示します。

解決策提示の手順

  1. 解決の方向性の確認: お客様の最終的な要求(補償、交換、返金など)を再確認し、企業として可能な対応範囲を明確にします。
  2. 実行可能な解決策の提示: 企業側の責任を認めつつ、具体的な補償(例:代替品の発送、全額返金)や代替案(例:迅速な修理対応、次回利用時の割引)を提示します。
  3. 提案理由の説明: その解決策に至った事実に基づいた理由を説明し、論理的な納得感を提供します。

お客様の要求が企業の対応範囲外である場合や、法的に不可能な場合は、「大変心苦しいのですが、この点についてはお応えできません」と、できないことは正直に伝えます。ただし、断るだけでなく、「ご期待に沿えず申し訳ありません。しかし、今後のサービス改善のために貴重なご意見として承り、社内で〇〇を改善することを約束いたします」といった形で、今後の改善策を約束します。この誠実な姿勢が、要求が満たされなくてもお客様の信頼維持につながります。

やってはいけないNG対応

クレーム対応時に絶対に避けるべきNG対応として、主に以下の3点があげられます。

  • ①相手の話を遮る・否定する
  • 感情的になる・言い訳をする
  • ③不適切な謝罪(安易な謝罪)

このようなNG対応を行うことで企業の信頼を大きく損なうリスクがあり、問題をさらに悪化させる可能性があるため注意が必要です。

① 相手の話を遮る・否定する

クレーム対応中に「でも」「しかし」といった否定的な接続詞を使うことは、お客様の感情を逆撫でする大きなリスクがあります。これらの言葉は、直前の相手の訴えを否定したり、言い訳を始めたりする印象を与え、「話を聞いてもらえなかった」という不信感を強めてしまいます。

大切なのは、たとえ事実と異なると感じても、まずは「お客様がそう感じた」という事実を一旦すべて受け止める姿勢を示すことです。「さようでしたか、大変申し訳ございません」といった言葉で共感と謝罪を先に挟み、感情的な壁を取り除くことが極めて重要です。この受け止める姿勢こそが、冷静で建設的な対話を進めるための揺るぎない土台となります。

② 感情的になる・言い訳をする

担当者がお客様の怒りや感情的なトーンに引きずられ、感情的になって反論したり、自己防衛のために安易な言い訳をしたりすることは、問題をさらに悪化させる最大の要因となります。担当者が個人的な感情で対応することで、「会社の体質が悪い」という不信感を決定づけ、二次クレームやSNSでの炎上といった大きなリスクに発展する可能性があります。

担当者は、「個人の感情」ではなく「企業の代表」として対応しているという意識を強く持つ必要があります。一貫して冷静でプロフェッショナルな態度を保ち、個人的な意見や見解ではなく、「会社としてこの問題にどう対処するのか」という組織としての方針を伝えることに徹します。この意識が、お客様に信頼感と安心感を与え、建設的な解決へと話を戻すための重要な鍵となります。

③ 不適切な謝罪(安易な謝罪)

事実確認を行う前に、クレームの内容の是非を含めて全面的に謝罪することは、大きなリスクを伴います。お客様の要求をすべて受け入れたと誤解され、後から事実と異なると判明した場合に「謝罪を撤回した」と見なされ、さらなる強い怒りを招く原因ともなりかねません。企業の非ではない部分まで責任を負わされるリスクも生じます。

最初に行うべき謝罪は、「限定的な謝罪」です。これは、まずはお客様が不快な思いをされたことやご迷惑をおかけした事実に対してのみ、心からお詫びを伝える方法です。

例:「この度は、弊社の商品でご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。」

このように、「感情的な不快感」と「問題の責任」を切り離して謝罪することで、リスクを回避しながら次の事実確認へスムーズに移行できます。

過剰な要求(悪質クレーム)への対処法

土下座の要求や金品の過剰要求といった不当な要求(カスタマーハラスメント)に対しては、以下2点の基本姿勢を貫きます。

  • 毅然とした態度で断る
  • ②組織として対応し記録を残す

また、過剰な要求(悪質クレーム)は、担当者にとって大きな精神的負担となりがちです。組織として情報と対応方針を共有し、適切なサポート体制のもとで冷静かつ一貫した対応をとることで、担当者の心身を守り、公正な解決に導くことができます。

① 毅然とした態度で断る

社会通念上、常識の範囲を超える不当な要求に対しては、決して曖昧にせず、毅然とした態度で応じられない旨を明確に伝えることが重要です。要求をのむことは、さらなるエスカレーションを招くため避けます。

要求に応じられないことを伝える際は、相手の感情を刺激しないよう冷静に、しかし断固として伝える必要があります。感情的な反論は避け、組織の方針として応じられないことを示します。

例:

・「ご要望は承知いたしました。しかしながら、当社の規定や社会通念に照らし、この度の金銭的なご要求にはお応えすることができません。」

・「大変心苦しいのですが、当社の責任範囲を超えるご要求には応じかねます。」

担当者は、お客様がヒートアップしても、自分の感情を制御し、常にプロフェッショナルな態度を保つ必要があります。目的は問題解決であり、相手を非難することではないと意識し、建設的な姿勢を崩さないことが重要です。威圧的な言動が続く場合、法務担当者や上席にエスカレーションするなど、次のステップを冷静に示しましょう。

② 組織として対応し記録を残す

不当な要求や困難なクレームへの対応は、担当者個人の力量に依存させるのではなく、組織全体として取り組む体制を構築することが不可欠です。

まず、クレームや不当要求に対する対応マニュアルを整備し、「どこまでが許容範囲か」「どの時点で上司に報告すべきか」といった判断基準を明確にします。これにより、どの担当者が対応しても一定の品質と基準で判断・対応できる体制が整い、対応のブレを防ぎます。

対応のたびに、対応日時、内容の要約、お客様の要求、担当者の氏名などを詳細に記録し、組織内で情報を共有します。

  • 対応の継続性: 担当者が変わっても、過去の経緯を踏まえた一貫性のある対応が可能になります。
  • リスク管理: 不当要求がエスカレートした場合や、法的対応が必要になった場合、正確な記録は重要な証拠となります。
  • 担当者の保護: 対応記録と組織的な関与があることで、担当者が一人で責任を負わされることを防ぎ、精神的な負担を軽減し保護します。

困難な状況でこそ、組織的な連携が企業の信頼を守る鍵となります。

関連記事:カスタマーハラスメント対応策:企業が取るべき具体的なステップ

まとめ

「クレーム」は本来権利の主張(損害に基づく要求)、「苦情」は不満の表明(感情的な意見)であり、企業は実務上、これらを区別し対応します。

クレーム対応では、まず謝罪と共感で感情を受け止め、次に5W1Hで事実を正確に確認し、誠実な解決策を提示する3ステップが重要です。感情的な反論や安易な謝罪といったNG対応は避けましょう。

また、不当な要求には毅然とした態度で断り、組織として記録・対応することで、企業の信頼を守り、サービス改善に繋げることが可能です。

​​クレームは決してネガティブなものではなく、お客様が期待を寄せてくれている証でもあります。改善の糸口として受け止め、より良いサービスづくりに活かしていきましょう。

よくある質問

クレームとカスハラの違いは何ですか?

  • クレーム: 商品やサービスへの不満に基づき、正当な権利の主張や改善を求める行為。
  • カスハラ(カスタマーハラスメント): 社会通念上不相当な要求や言動で、従業員の就業環境を害する行為。

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著者:Tayoriブログ編集部
日頃からカスタマーサポートと向き合うメンバーが、問い合わせ対応の課題解決とビジネス成長を支援するため、カスタマーサポートや業務効率化に役立つ情報を発信しています。

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