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クレーム報告書の書き方や注意点は?記載項目や社内・社外向けの例文を紹介

クレーム報告書の書き方や注意点は?記載項目や社内・社外向けの例文を紹介

企業活動において、クレーム(顧客からの苦情)は避けられない要素の一つです。しかし、クレームを適切に処理し、その内容を社内で共有することで、同様の問題の再発防止や業務改善に繋げることができます。そのために重要な役割を果たすのがクレーム報告書です。本記事では、クレーム報告書の作成目的や記載項目、効果的な書き方のポイント、発生原因と対策の洗い出し方などを詳しく解説します。また、社内向けと社外向けの報告書例文も紹介しますので、実際の業務にすぐに活用できます。クレーム対応を組織の成長機会に変えるためのノウハウを身につけましょう。

【目次】

  1. クレーム報告書とは何?
  2. クレーム報告書を作成する目的
  3. クレーム報告書の記載項目と記入例
  4. クレーム報告書の書き方
  5. クレームの発生原因と対策の洗い出し方
  6. クレーム報告書を作成する際の注意点
  7. クレーム報告書の例文【パターン別】
  8. 「クレームは宝」顧客の声を改善のヒントに
  9. まとめ

 

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クレーム報告書とは何?

クレーム報告書とは、顧客から寄せられた苦情や不満、問題点などの内容と、それに対する対応や解決策、再発防止策などを記録した文書です。顧客からのクレームを受けた際に、その内容を正確に記録し、社内で共有するために作成されます。

クレーム報告書には、クレームの発生日時や顧客情報、クレーム内容の詳細、対応の経緯、原因分析、再発防止策などが記載されます。これにより、クレームに関する情報が一元管理され、組織全体で情報共有が可能になります。また、類似のクレームが発生した際の対応マニュアルとしても活用できます。

クレーム報告書は、社内で共有するための内部文書と、顧客に提出するための外部文書の2種類があります。それぞれ目的や記載内容、表現方法などが異なりますが、どちらも事実を正確に記録し、再発防止に繋げるという点は共通しています。

 

クレーム報告書を作成する目的

クレーム報告書を作成する目的は主に以下の点にあります。なぜクレーム報告書が必要なのか、どのような効果が期待できるのかを理解しましょう。

情報共有と再発防止策の検討

クレーム報告書の最も重要な目的は、顧客からのクレーム情報を社内で適切に共有し、同様の問題が再発しないための対策を検討することです。

クレームが発生した際、その対応は通常、顧客対応部署やコールセンターなどの特定の部署や担当者が行います。しかし、問題の根本的な解決や再発防止には、関連する他部署との情報共有や連携が不可欠です。例えば、製品の品質に関するクレームであれば製造部門や品質管理部門、サービスの内容に関するクレームであればサービス企画部門など、クレームの内容に応じた適切な部署に情報を伝える必要があります。

クレーム報告書は、この情報共有のための重要なツールとなります。クレームの内容や対応経過、原因、対策などを文書化することで、関係者全員が同じ情報を共有でき、部門を超えた協力体制を構築することができます。また、過去のクレーム事例をデータベース化することで、類似のクレームが発生した際の参考資料としても活用できます。

さらに、クレーム報告書を基に定期的な振り返りや分析を行うことで、頻発するクレームの傾向や潜在的な問題点を特定し、プロアクティブな改善活動につなげることが可能になります。

顧客満足度の向上と信頼関係の構築

クレーム報告書のもう一つの重要な目的は、顧客満足度の向上と信頼関係の構築です。

クレームを申し出る顧客は、単に不満を伝えるだけでなく、企業の対応や改善姿勢を見ています。クレームに対して迅速かつ適切に対応し、その結果を顧客にフィードバックすることで、顧客の信頼を回復し、満足度を向上させることができます。

クレーム報告書は、顧客への対応内容や説明内容を記録するだけでなく、顧客からの要望や期待も記録します。これにより、単に問題解決だけでなく、顧客のニーズに合わせたサービス改善やコミュニケーション方法の見直しなど、より良い顧客体験の提供につなげることができます。

また、クレーム対応の過程で得られた顧客の声や反応を報告書に記録し、社内で共有することで、顧客視点での製品・サービスの改善点を発見し、将来的な顧客満足度向上のための施策を検討する材料となります。

特に重大なクレームの場合は、対応後に顧客へのフォローアップを行い、改善策の実施状況や効果を報告することで、企業の誠実さや改善への姿勢を示し、長期的な信頼関係の構築に繋げることができます。

 

クレーム報告書の記載項目と記入例

クレーム報告書には、クレームの内容や対応を正確に記録するために、以下のような項目を記載します。各項目の記入例も併せて紹介します。

基本情報

  • 報告日: 2023年5月15日
  • 報告者: 営業部 山田太郎
  • クレーム発生日時: 2023年5月10日 14:30頃
  • クレーム受付方法: 電話

顧客情報

  • 顧客名: 株式会社○○○
  • 担当者名: 佐藤一郎様
  • 連絡先: 03-xxxx-xxxx
  • 顧客区分: 法人顧客(取引年数:5年)

クレーム内容

  • 対象製品/サービス: 業務用プリンターモデルXYZ-100
  • クレーム内容の詳細: 先週納品した業務用プリンターで印刷すると、用紙の右側に黒い線が入る。重要な資料の印刷に支障が出ており、早急な対応を求められている。

初期対応内容

  • 対応者: カスタマーサポート 田中花子
  • 対応日時: 2023年5月10日 15:00〜16:30
  • 対応内容:
  1. お詫びと状況確認
  2. リモートでの故障診断を実施
  3. 明日の午前中に技術者の派遣を約束
  4. 代替機の手配の提案(顧客了承)

原因分析

  • 直接的原因: プリンターのイメージドラムの不良
  • 根本的原因: 製造工程での品質チェック漏れ
  • 背景要因: 新規部品の導入に伴う検査項目の見直しが不十分だった

対策・改善策

  • 短期的対策:
  1. 不良品の交換と代替機の提供(5月11日実施)
  2. 同時期に製造された製品の抜き取り検査の実施
  • 中長期的対策:
  1. 製造ラインの検査項目の見直しと強化
  2. 品質管理マニュアルの改定
  3. 作業者への再教育

フォローアップ

  • 実施日: 2023年5月17日
  • 対応者: 営業部 山田太郎
  • 内容: 交換後の製品の動作状況確認と顧客の満足度確認
  • 顧客の反応: 迅速な対応に感謝の意を表明。問題なく使用できていると回答。

添付資料

  • 故障状態の写真
  • 技術者の点検報告書
  • 製品交換の納品書

この記載項目と記入例は一般的なものであり、企業や業種によって必要な項目は異なる場合があります。自社の状況に合わせて、必要な項目を追加・調整することが重要です。また、項目ごとに記入欄を設けた専用のフォーマットを作成しておくと、記入漏れを防ぎ、効率的に報告書を作成することができます。

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クレーム報告書の書き方

クレーム報告書を効果的に作成するためには、一定の手順を踏むことが重要です。ここでは、クレーム報告書を作成する際の基本的な流れを解説します。

1 クレームに関する情報の精査

クレーム報告書の作成に取り掛かる前に、まずはクレームに関する情報を正確に把握し、整理することが重要です。具体的には以下のステップで情報を精査します。

クレーム内容の確認

顧客から寄せられたクレームの内容を正確に理解します。メール、電話、店頭での対応記録など、顧客とのやり取りを全て確認し、クレームの本質や顧客の要望を把握します。特に、「いつ」「どこで」「何が」「どのように」問題が発生したのかを明確にします。

関連資料の収集

クレームに関連する資料を可能な限り収集します。例えば、製品の不良であれば、該当製品の製造記録や検査記録、取扱説明書、保証書などが該当します。サービスに関するクレームであれば、サービス提供時の記録や契約内容、担当者の報告書などを集めます。

関係者へのヒアリング

クレームに関わった社内の関係者(営業担当者、カスタマーサポート担当者、製造部門担当者など)からの情報を収集します。各担当者がどのように顧客と接し、どのような対応をしたのか、その過程で気づいたことなどを詳細に聞き取ります。

時系列での整理

収集した情報を時系列で整理します。クレーム発生前の状況から始まり、クレーム発生時の状況、初期対応、その後の対応までを時間の流れに沿って整理することで、事象の全体像を把握しやすくなります。

顧客情報の確認

クレームを申し出た顧客の基本情報(氏名、連絡先、取引履歴など)を確認します。特に、過去にも同様のクレームを申し出ているか、他の製品やサービスについてのクレーム歴があるかなども重要な情報です。

これらの情報を精査することで、クレームの全体像を把握し、適切な対応策や再発防止策を検討するための基礎を築くことができます。また、精査した情報は、報告書の「事実関係」の部分に記載することになります。

2 クレーム発生の経緯と原因や対策を整理

クレームに関する情報を精査した後は、クレーム発生の経緯と原因、対策を整理します。

経緯の整理

クレームが発生した経緯を、時系列に沿って整理します。顧客がいつ、どのような状況で問題に気づき、どのようにして会社に連絡してきたのか。会社側はその連絡を受けてどのような初期対応を行い、その後どのような対応を継続したのかを明確にします。

原因の分析

クレームが発生した原因を多角的に分析します。直接的な原因(例:製品の不良部品)だけでなく、根本的な原因(例:品質管理体制の不備)や背景要因(例:コスト削減による検査工程の簡略化)まで掘り下げて考察します。後述する「なぜなぜ分析」などの手法を活用すると効果的です。

対策の検討

分析した原因に基づいて、再発防止のための対策を検討します。短期的に実施できる応急措置的な対策と、中長期的に取り組むべき根本的な対策を区別して整理します。また、各対策の実施責任者や期限も明確にしておくと良いでしょう。

顧客への対応策

クレームを申し出た顧客に対して、どのような対応や説明、フォローアップを行うかを検討します。謝罪や補償の内容、今後の改善約束など、顧客の納得と信頼回復のための具体的な対応策を整理します。

3 クレーム報告書の作成

情報の精査と原因・対策の整理が完了したら、実際にクレーム報告書を作成します。

報告書の作成にあたっては、事前に整理した情報を基に、前述の「記載項目」に沿って内容を記入していきます。特に重要なのは以下の点です:

  • 事実と推測を明確に区別して記載する
  • 専門用語や社内用語を避け、誰が読んでも理解できる表現を使用する
  • 顧客の言葉をそのまま引用する場合は、「」で囲むなど明示する
  • 原因分析や対策は具体的かつ実行可能な内容にする
  • 関連する資料や証拠(写真、メールのコピーなど)があれば添付する

完成した報告書は、関係部署や上司に回覧し、必要に応じて修正や追記を行います。また、報告書の内容に基づいて、顧客へのフォローアップや社内での改善活動を実施することが重要です。

 

クレームの発生原因と対策の洗い出し方

クレーム報告書を作成する上で最も重要なプロセスの一つが、クレームの発生原因を特定し、適切な対策を立案することです。ここでは、発生原因と対策を効果的に洗い出すための手法について解説します。

発生原因の洗い出しを行う際に活用できる手法

クレームの発生原因を体系的に洗い出すためには、以下のような分析手法が有効です。状況や問題の性質に応じて、適切な手法を選択・組み合わせて活用しましょう。

・なぜなぜ分析

なぜなぜ分析(5Why分析)は、問題の表面的な原因から根本原因を掘り下げるために、「なぜ」という問いを繰り返す手法です。通常、5回程度「なぜ」を繰り返すことで、根本的な原因にたどり着くとされています。

【具体例】 製品不良によるクレームの場合:

  1. なぜ製品が破損したのか? → 強度が不足していたから
  2. なぜ強度が不足していたのか? → 設計時の強度計算が不適切だったから
  3. なぜ強度計算が不適切だったのか? → 使用環境の想定が甘かったから
  4. なぜ使用環境の想定が甘かったのか? → 顧客の使用実態調査が不足していたから
  5. なぜ使用実態調査が不足していたのか? → 新製品開発プロセスに実態調査の手順が明確化されていなかったから

このように分析することで、表面的な「製品の破損」という現象から、「新製品開発プロセスの不備」という根本原因を特定できます。

・QC7つ道具/新QC7つ道具

QC(品質管理)7つ道具と新QC7つ道具は、品質管理や問題解決のための代表的なツールセットです。これらを活用することで、クレームの発生原因を多角的に分析できます。

QC7つ道具

  1. パレート図: クレームの種類や発生頻度を視覚化し、重点的に取り組むべき問題を特定します。例えば、製品別のクレーム件数をグラフ化し、特に多い製品を優先的に改善します。
  2. 特性要因図(魚骨図): 問題の原因を体系的に整理します。「人・機械・材料・方法・環境・測定」などのカテゴリーごとに原因を分類し、関連性を視覚化します。
  3. ヒストグラム: データのばらつきや分布を把握します。例えば、製品の寸法誤差の分布を分析し、規格外品の発生パターンを確認します。
  4. 管理図: プロセスの安定性を監視します。製造ラインの特性値を時系列でグラフ化し、異常の発生タイミングを特定します。

新QC7つ道具

  1. 連関図: 複雑な問題の要素間の関係性を視覚化します。クレーム発生のメカニズムを構造的に理解するのに役立ちます。
  2. 系統図: 目標達成のための手段を階層的に展開します。クレーム削減という目標に対して、具体的な対策を体系的に整理できます。
  3. マトリックス図: 複数の要素間の関係を表形式で整理します。例えば、クレーム内容と原因の関連性を可視化します。

これらのツールを状況に応じて選択・組み合わせることで、クレームの原因を多角的に分析し、効果的な対策を立案することができます。

・FMEA(故障モード影響解析)

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)は、製品やプロセスで発生し得る故障モード(不具合)を事前に予測し、その影響度、発生頻度、検出難易度を評価することで、重点的に対策すべき項目を特定する手法です。

FMEAでは、以下の3つの要素に数値(通常1〜10点)を割り当て、その積(RPN:Risk Priority Number)を算出します:

  • 影響度(Severity): 故障が発生した場合の影響の深刻さ
  • 発生頻度(Occurrence): 故障が発生する確率
  • 検出難易度(Detection): 故障を検出する難しさ

RPNの高い項目から優先的に対策を講じることで、効率的なリスク低減が可能になります。

例えば、食品包装の密封不良によるクレームの場合、「シール部の強度不足」という故障モードに対して、影響度(8点:食品の腐敗)、発生頻度(6点:時々発生)、検出難易度(7点:目視検査では発見困難)を評価し、RPN(8×6×7=336)を算出します。高いRPN値に基づき、シール工程の改善や検査方法の強化などの対策を優先的に実施します。

QAネットワークを活用して対策内容を決める

QAネットワーク(Quality Assurance Network)は、品質保証のための体系的なアプローチで、発生防止(不良を作らない)と流出防止(不良を出さない)の両面から対策を検討するフレームワークです。クレームの根本原因が特定されたら、QAネットワークを活用して効果的な対策を立案しましょう。

・発生防止

発生防止とは、クレームの原因となる不良や問題が発生すること自体を防ぐための対策です。根本的な解決につながる重要なアプローチです。

主な発生防止策:

  1. 設計・仕様の見直し: 製品やサービスの設計段階から問題を防ぐ。例えば、強度不足が原因の破損クレームには、設計時の強度基準の引き上げや材質変更を実施。
  2. 標準作業手順の改定: 作業手順を明確化し、ヒューマンエラーを減らす。例えば、組立工程での部品の取り付け忘れを防ぐため、チェックリストの導入や作業手順書の改訂を行う。
  3. 教育・訓練の強化: 従業員のスキルや意識を向上させる。例えば、接客対応のクレームには、顧客対応研修の実施や成功事例の共有を行う。
  4. 設備・システムの改善: 自動化や機械的な制御によりエラーを防止する。例えば、計量ミスによるクレームには、自動計量システムの導入や計量器の定期校正を実施。

・流出防止

流出防止とは、問題や不良が発生した場合でも、それが顧客に届く前に発見・除去するための対策です。発生防止策と組み合わせることで、より効果的なクレーム防止が可能になります。

主な流出防止策:

  1. 検査・テストの強化: 出荷前の品質チェックを徹底する。例えば、外観不良のクレームには、検査基準の明確化や検査工程の追加を実施。
  2. 自動検知システムの導入: 機械やセンサーを活用して不良を自動的に検出する。例えば、寸法誤差のクレームには、画像処理による全数自動検査システムを導入。
  3. サンプリング検査の最適化: 効率的かつ効果的なサンプリング方法を採用する。例えば、ロット単位の抜き取り検査から、リスクベースのサンプリング方法に変更。
  4. 中間検査の導入: 工程の途中でも検査を行い、早期に不良を発見する。例えば、組立工程の途中で機能テストを実施し、不具合の早期発見を図る。

QAネットワークでは、これらの発生防止と流出防止の両方の観点から対策を検討し、短期的・中長期的な視点で実行計画を立てることが重要です。また、対策の実施後は効果を検証し、必要に応じて見直しや強化を行います。

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クレーム報告書を作成する際の注意点

クレーム報告書を効果的に作成するためには、いくつかの重要な注意点があります。ここでは、報告書作成時に陥りがちな問題点と、それを避けるためのポイントを解説します。

事実と推測を明確に区別する

クレーム報告書では、確認された事実と推測を明確に区別して記載することが非常に重要です。事実と推測が混同されると、誤った原因分析や的外れな対策につながる恐れがあります。

事実は、「〇月〇日に顧客から電話があり、製品Aが動作しないとの申し出があった」「現場で確認したところ、電源ケーブルの接触不良が見られた」など、客観的に確認された情報です。一方、推測は「おそらく輸送中の振動で接触不良が生じたと考えられる」など、直接確認できていない事柄についての見解です。

報告書内では、「事実」と「推測・考察」の項目を分けて記載するか、推測部分には「と考えられる」「可能性がある」などの表現を用いて明示することが望ましいです。また、重要な事実については、写真や動画、記録データなどの客観的な証拠を添付すると説得力が増します。

事実と推測を区別することで、クレームの本質的な原因を正確に把握し、効果的な対策を立てることができます。また、後日の検証や類似事例の分析にも役立ちます。

顧客の言葉をそのまま記録する

クレーム報告書では、顧客が実際に述べた言葉や表現をできるだけそのまま記録することが重要です。担当者の解釈や言い換えを加えると、本来の意図や感情が失われる可能性があります。

顧客の言葉をそのまま記録する際は、「」(かぎかっこ)で囲むなど、直接話法であることを明示します。例えば、「商品が期待していたものと全く違う。こんなはずではなかった」という顧客の言葉は、その表現やニュアンスが重要な情報となります。

ただし、感情的な発言や不適切な表現がある場合は、社内文書としての性質を考慮し、適宜配慮することも必要です。その場合でも、本質的な内容や顧客の不満点が失われないよう注意しましょう。

顧客の言葉をそのまま記録することで、クレームの背景にある感情や期待を理解し、より適切な対応や改善策を検討することができます。また、顧客の表現から、製品やサービスに対する認識のギャップを発見できることもあります。

対策は具体的かつ実行可能な内容にする

クレーム報告書の重要な目的の一つは、同様の問題の再発を防止するための対策を立案することです。この対策は、具体的かつ実行可能な内容にすることが重要です。

抽象的な対策(「品質管理を強化する」「顧客対応を改善する」など)では、実際に何をすべきかが不明確で、効果的な改善につながりません。代わりに、「製造ラインに自動検査装置を導入し、寸法誤差を全数チェックする」「顧客対応マニュアルに苦情処理の手順を追加し、全スタッフに研修を実施する」など、具体的な行動計画を記載します。

また、対策には以下の要素を含めると実効性が高まります:

  • 実施内容(何をするか)
  • 担当部署・責任者(誰が行うか)
  • 実施期限(いつまでに完了するか)
  • 評価方法(効果をどう測定するか)

対策が複数ある場合は、短期的に実施できる応急措置と、中長期的に取り組む根本的対策を区別して記載すると良いでしょう。また、優先順位や対策間の関連性を明確にすることで、効率的な改善活動が可能になります。

具体的かつ実行可能な対策を立てることで、クレームの再発防止だけでなく、組織全体の品質向上や業務改善にもつながります。さらに、対策の進捗状況や効果を定期的に確認し、必要に応じて修正や強化を行うことも重要です。

関係者全員で内容を確認する

クレーム報告書は、一人の担当者だけで作成するのではなく、関係者全員で内容を確認することが重要です。複数の視点からチェックすることで、報告書の正確性や対策の妥当性が向上します。

確認すべき関係者には、以下のような人々が含まれます:

  • クレーム対応に直接関わった担当者
  • 関連部署の責任者や担当者
  • 品質管理・品質保証の責任者
  • 必要に応じて法務担当者(特に重大なクレームの場合)

関係者間で報告書の内容を確認する際は、以下の点に注目することが有効です:

  • 事実関係の正確性(日時、数量、状況などの記載に誤りがないか)
  • 原因分析の妥当性(他の可能性や見落としはないか)
  • 対策の実行可能性(リソースや期限は現実的か)
  • 顧客対応の適切さ(顧客の要望に十分応えているか)

関係者からのフィードバックを基に報告書を改善し、最終版としてまとめます。このプロセスを通じて、報告書の品質が向上するだけでなく、関係者間での情報共有や問題意識の統一にもつながります。

また、定期的にクレーム報告書の内容や形式を見直し、より効果的な報告書作成のためのノウハウを蓄積していくことも重要です。

 

クレーム報告書の例文【パターン別】

クレーム報告書は、社内向けと社外向けで目的や記載内容が異なります。ここでは、それぞれのパターンに応じた例文を紹介します。

社内向けのクレーム報告書

社内向けのクレーム報告書は、クレームの詳細情報や原因分析、再発防止策などを社内で共有するために作成されます。以下に例文を示します。

クレーム報告書

 

【基本情報】

報告日:2023年6月15日

報告者:営業部 鈴木一郎

クレーム発生日時:2023年6月10日 15:30頃

クレーム受付方法:電話

 

【顧客情報】

顧客名:株式会社ABC商事

担当者名:田中部長

連絡先:03-XXXX-XXXX

顧客区分:法人顧客(取引年数:3年)

 

【クレーム内容】

対象製品:業務用空調システム(型番:AC-2000X)

内容詳細:設置から2週間で室外機から異音が発生。「カタカタという金属音がして、夜間も近隣住民に迷惑がかかるほどうるさい」とのこと。緊急対応を要望されている。

 

【初期対応内容】

対応者:カスタマーサポート 佐藤

対応日時:2023年6月10日 16:00〜16:30

対応内容:

  1. お詫びと状況確認
  2. 翌日(6月11日)に技術者の訪問を約束
  3. 一時的な対処法として、運転モードの変更を案内

 

【原因分析】

直接的原因:室外機のファン固定ボルトの緩み

根本的原因:施工マニュアルにおけるボルト締め付けトルクの指定が不明確

背景要因:施工担当者の教育不足と、完成検査項目に「異音確認」が含まれていなかった

 

【対策・改善策】

短期的対策:

  1. 該当顧客の製品修理(6月11日実施済み)
  2. 同時期に施工した全顧客(15社)への点検実施(6月30日までに完了予定)

 

中長期的対策:

  1. 施工マニュアルの改訂(ボルト締め付けトルク値の明確化):担当 技術部 山本(7月15日までに完了)
  2. 施工担当者への再教育実施:担当 工事部 井上(7月末までに完了)
  3. 完成検査チェックリストに「異音確認項目」を追加:担当 品質管理部 木村(7月15日までに完了)

 

【フォローアップ】

実施日:2023年6月20日

対応者:営業部 鈴木

内容:修理後の状況確認と顧客満足度の確認

顧客の反応:修理後は異音が解消され、満足しているとの回答。迅速な対応に感謝の意を表明された。

 

【添付資料】

  1. 不具合状態の写真
  2. 技術者の点検・修理報告書
  3. 改訂予定の施工マニュアル案

 

以上

この社内向け報告書は、クレームの詳細情報から原因分析、対策まで網羅的に記載されています。特に原因分析では直接的原因だけでなく根本的原因や背景要因まで掘り下げ、対策では短期的・中長期的な視点で具体的な計画が示されています。

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社外向けのクレーム報告書

社外向けのクレーム報告書(お客様への報告書)は、クレーム内容の確認と対応結果、改善策などを顧客に報告するために作成されます。社内向けと比較して、より丁寧な表現と簡潔な内容が特徴です。以下に例文を示します。

報告書

 

株式会社ABC商事

田中部長

 

                          2023年6月20日

                          株式会社XYZ

                          営業部 鈴木一郎

 

業務用空調システムに関するご報告

 

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

 

この度は、弊社が納入いたしました業務用空調システム(型番:AC-2000X)から異音が発生し、ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

 

下記の通り、調査結果と対応内容についてご報告申し上げます。

 

【調査結果】

6月11日に弊社技術者が現地調査を実施いたしました結果、室外機のファン固定ボルトの緩みが原因で異音が発生していたことが判明いたしました。この緩みは、施工時の締め付け不足によるものと考えられます。

 

【対応内容】

  1. 室外機のファン固定ボルトの増し締めと固定部品の交換を実施いたしました。
  2. 動作確認を行い、異音が解消されたことを確認いたしました。
  3. その他の部分についても点検を行い、異常がないことを確認いたしました。

 

【再発防止策】

このような事態を二度と起こさぬよう、以下の対策を実施いたします。

  1. 施工マニュアルの見直しと改訂
  2. 施工担当者への再教育の徹底
  3. 完成検査項目の強化

 

今回の件につきましては、弊社の施工管理体制の不備が原因であり、田中様をはじめ貴社の皆様に多大なるご心配とご迷惑をおかけしましたことを、改めて深くお詫び申し上げます。

 

今後このようなことがないよう、品質管理体制を一層強化し、より一層信頼される製品・サービスの提供に努めてまいります。

 

何かご不明な点やご質問等がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。

今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

敬具

 

【連絡先】

株式会社XYZ

営業部 鈴木一郎

TEL:03-XXXX-XXXX

Email:suzuki@xyz.co.jp

この社外向け報告書では、顧客への謝罪と丁寧な表現を心がけつつ、調査結果や対応内容を簡潔に伝えています。専門用語や社内事情の詳細には触れず、顧客にとって必要な情報に焦点を当てています。また、再発防止策を示すことで、品質向上への取り組みをアピールし、信頼回復を図っています。

 

「クレームは宝」顧客の声を改善のヒントに

クレームは一見すると否定的なフィードバックに思えますが、「クレームは宝」という考え方は、顧客の不満や苦情を真摯に受け止めて、サービスや製品の改善に活かす姿勢を表しています。

クレームを通じて、顧客は製品やサービスの問題点や改善すべき点を直接教えてくれています。多くの顧客は不満を感じても声に出さずに離れていくことを考えると、実際にクレームを申し出てくれる顧客は、改善のためのヒントを提供してくれる貴重な存在と言えます。

クレームから得られる情報は、社内では気づきにくい視点や問題点を含んでいることが多いです。例えば、製品の使いにくさ、説明不足、期待とのギャップなど、実際のユーザー体験に基づく具体的な課題が浮き彫りになります。

クレームを前向きに捉えるためには、以下のような姿勢が重要です:

  1. 謙虚に耳を傾ける: クレームを防御的に受け止めるのではなく、改善のチャンスとして謙虚に耳を傾けましょう。
  2. 感謝の気持ちを伝える: クレームを申し出てくれたことに対して、誠実に感謝の気持ちを伝えましょう。
  3. 迅速かつ誠実に対応する: クレームへの対応は、スピードと誠実さが重要です。問題解決に向けた姿勢を示すことで、信頼関係を構築できます。
  4. 組織的な学習につなげる: 個別のクレーム対応で終わらせず、報告書を通じて組織全体で学び、システムや仕組みの改善につなげましょう。

クレームを「宝」として活かすことで、顧客満足度の向上、製品・サービスの品質改善、そして企業としての成長を実現することができます。クレーム対応は単なる問題処理ではなく、顧客との信頼関係を深め、ビジネスを発展させるための重要な機会なのです。

 

まとめ

クレーム報告書は、顧客からの苦情や不満を適切に記録し、原因を分析して再発防止策を立案するための重要なツールです。本記事では、クレーム報告書の作成目的から具体的な記載項目、効果的な書き方、発生原因と対策の洗い出し方、作成時の注意点、そして社内向け・社外向けの例文まで、クレーム報告書に関する包括的な情報を解説しました。

クレーム報告書を作成する際は、事実と推測を明確に区別し、顧客の言葉をそのまま記録し、具体的かつ実行可能な対策を立案することが重要です。また、なぜなぜ分析やQC7つ道具、FMEAなどの手法を活用して発生原因を体系的に分析し、QAネットワークを用いて発生防止と流出防止の両面から対策を検討することが効果的です。

クレームは一見するとネガティブな出来事ですが、「クレームは宝」という視点で捉えれば、顧客ニーズを理解し、製品やサービスを改善するための貴重なご意見となります。真摯に向き合い、適切に対応することで、顧客との信頼関係を強化し、企業の成長につなげることができるのです。

顧客満足度向上には、Tayoriのようなカスタマーサポートツールの活用も検討してみてください。問い合わせを一元管理でき担当者やステータス管理ができるので、対応漏れを防ぎスピーディーな回答が実現できます。につなげることができます。興味のある方はまずは資料をご確認ください。


著者:Tayoriブログ編集部
日頃からカスタマーサポートと向き合うメンバーが、問い合わせ対応の課題解決とビジネス成長を支援するため、カスタマーサポートや業務効率化に役立つ情報を発信しています。

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