クレーム対応とは?正しい方法と重要ポイント、手順まで徹底解説
顧客からのクレームは、お客様の声を真摯に受け止め、より強固な信頼関係を築くための重要な機会です。本記事では、クレーム対応の定義から、顧客満足度向上に繋げる企業にとっての重要性を解説します。さらに、円満な解決へ導くための「傾聴・事実確認・謝罪・解決策提示・フォロー」の5つの基本手順を徹底解説。NG対応や、ケース別の対処法も網羅し、ピンチをチャンスに変える正しい方法論をお伝えします。
【目次】
- クレーム対応とは?企業にとっての重要性
- クレーム対応の基本的な5つの手順
- やってはいけないNGクレーム対応5選
- 【場面別】クレーム対応のポイント
- こんな時どうする?ケース別クレーム対応
- まとめ
- よくある質問
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クレーム対応とは?企業にとっての重要性
クレーム対応とは、顧客からの苦情や不満に対して、企業が真摯に向き合い、問題の解決、原因の究明、再発防止策の実施までを行う一連の活動です。顧客の声に耳を傾け、具体的な解決策を提示することで、企業の信頼と品質を維持・向上させるための重要なプロセスです。
【企業にとっての重要性(5つのポイント)】
- 顧客満足度(カスタマーサティスファクション)の向上:適切に対応することで、不満を持った顧客をロイヤルカスタマーに変える機会となる(リカバーリング効果)。
- 企業イメージの維持:誠実かつ迅速な対応は、企業の評判やブランドイメージを守る。
- サービス・品質の改善:クレームは、自社の商品やサービスにおける欠陥を教えてくれる貴重な情報源となる。
- 潜在的なリスクの回避:初期段階で迅速に対応することで、SNSでの炎上や深刻なトラブルへの発展を防ぐ。
- 顧客の声の収集:現場の声をデータとして蓄積し、全社的な経営戦略や商品開発に活かすことができる。
クレーム対応の基本的な5つの手順
ここでは、クレーム対応の基本手順を5つのポイントに分けて解説します。
- 傾聴:顧客の不満と感情を受け止める
- 事実確認:状況を正確に把握する
- 謝罪:誠意を伝え、信頼の第一歩を築く
- 解決策の提示:納得を得られる代替案を示す
- 感謝とアフターフォロー:信頼関係を再構築する
①傾聴:顧客の不満と感情を受け止める
クレーム対応の最初の、そして最も重要なステップは「傾聴」です。顧客は単に問題の解決を求めているだけでなく、不満や怒りといった「感情」を誰かに受け止めてほしいと強く望んでいます。そのため、対応者は話を遮ることなく、まずは顧客の言葉に耳を傾け、共感を示す姿勢を徹底することが極めて重要です。この姿勢が、高ぶった感情を鎮め、冷静な話し合いの土台を作ります。
話を始める際は、「大変ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」といったクッション言葉を最初に挟むことで、相手の気持ちに配慮していることを伝えます。また、話を聞いている間は、「さようでございますか」「ごもっともです」といった効果的な相槌や、顧客の言葉を「〜ということですね」と復唱する「ミラーリング」を用いると良いでしょう。これにより、「あなたの話を真剣に聞いています」というメッセージが伝わり、顧客の信頼を得ることができます。この段階で感情を受け止めることが、後の解決策の受け入れやすさに大きく影響します。
②事実確認:状況を正確に把握する
傾聴で顧客の感情を受け止めたら、次は状況を正確に把握する段階です。この際、感情的な言葉と客観的な事実を切り分けて整理することが極めて重要です。顧客の「ひどい対応だ!」「もう二度と買わない!」といった感情的な訴えに引きずられるのではなく、何が問題の核心なのかを冷静に見極めます。
事実を整理するためには、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)のフレームワークを用いて聞き出すのが効果的です。具体的な質問例としては、以下のようなものがあります。
- When(いつ): 「それはいつ頃のことでしたか?」
- Where(どこで): 「店舗のどこでその出来事は起こりましたか?」
- Who(誰が): 「その時、対応したのは誰でしたか?(特徴などを教えていただけますか?)」
- What(何を): 「どのような商品、またはサービスをご利用でしたか?」
- How(どのように/How much): 「どのような状況で/どれくらいの期間、不具合が発生していますか?」
これらの質問で得た情報をメモに取りながら、「お間違いないでしょうか?」と復唱して確認することで、認識のズレを防ぎ、次の解決策の提示へスムーズに進むことができます。
③謝罪:誠意を伝え、信頼の第一歩を築く
事実確認を終えたら、次は誠実な謝罪を通じて、顧客との信頼関係を再構築します。このステップで最も大切なのは、問題の原因が自社にあるかどうかにかかわらず、まず顧客に不快な思いをさせてしまった事実、またはご迷惑をおかけした点に対して心から謝罪することです。この「感情への謝罪」が、顧客の怒りを鎮める上で不可欠です。
謝罪の言葉は、「しかし」「だって」といった言い訳や弁解と捉えられる言葉を一切挟まず、簡潔かつ明確に責任を受け止める表現を選びましょう。
例えば、「この度は、弊社の確認不足により、大変なご不快な思いをさせてしまい、心よりお詫び申し上げます」と明確に伝えます。まだ原因究明中の場合は、「ご迷惑をおかけした点に関しまして、深くお詫び申し上げます」といった形で、部分的な非(例えば、問題発生自体や対応の遅れ)を認めることが重要です。誠実な謝罪によって、顧客は「自分の訴えが受け入れられた」と感じ、その後の解決策の提案に耳を傾けてくれるようになります。
④解決策の提示:納得を得られる代替案を示す
謝罪によって信頼関係が築けたら、いよいよ具体的な解決策を提示します。この際、顧客の要望を全て受け入れられるとは限りません。
要望の全てが実現不可能な場合は、会社として実現可能な範囲で代替案を複数提示することが重要です。一方的に解決策を押し付けるのではなく、「大変心苦しいのですが、ご要望のAは難しい状況です。つきましては、B案(返金)とC案(修理期間の短縮)をご検討いただくことは可能でしょうか?」のように、顧客に選択肢を与え、選んでもらう手法を取ります。
これにより、顧客は「自分の意見が尊重されている」と感じ、受け身ではなく主体的に問題解決に参加しているという感覚を得られます。最終的な決定権を顧客に委ねることで、提示した解決策に対する納得感が高まり、円満な解決につながりやすくなります。提案する際は、それぞれの案のメリット・デメリットを丁寧に説明し、誠意をもって対応しましょう。
⑤感謝とアフターフォロー:信頼関係を再構築する
問題が解決した後も、対応は終わりではありません。最後に、クレームという貴重な意見を伝えていただいたことへの心からの感謝を伝え、今後のアフターフォローを行うことが、信頼関係の再構築に繋がります。
具体的なフォローアップとしては、数日後に電話やメールで「先日ご案内した商品の状況はいかがでしょうか?」とフォロー連絡を入れます。これは、解決策がきちんと機能しているかを確認するとともに、顧客を大切に思っているという姿勢を示す行動です。
この一連の丁寧な対応は、顧客に「この会社は最後まで責任を持つ」という印象を与え、結果として顧客ロイヤルティ(愛着)の向上に繋がります。クレーム対応を機に、以前よりも強固な関係を築くことが可能です。
やってはいけないNGクレーム対応5選
クレーム対応時に避けるべきNG対応として、主に以下の5点があげられます。
- 感情的な反論・高圧的な態度
- 言い訳と責任転嫁
- 顧客の話を遮る・軽視する
- その場しのぎの安易な約束
- 曖昧な回答で放置する
これらの対応は、顧客の怒りを増幅させ、SNSでの炎上や離反にも直結し、企業の信頼を一瞬で失墜させるリスクがあります。
①感情的な反論・高圧的な態度
クレーム対応では、感情的な反論や高圧的な態度は絶対に避けるべきNG行動です。顧客の強い口調に対して対応者も感情的に応じてしまうと、事態はさらに悪化し、問題の解決が困難になります。
また、対応者が感情的になることで、顧客は「自分の訴えが理解されていない」と感じ、怒りを増幅させてしまいます。冷静さを保つためには、「顧客の怒りは自分個人ではなく、問題となっている事象に向けられたもの」と捉える心構えが重要です。
アンガーマネジメントの基本としては、まず深呼吸して一度気持ちを落ち着かせ、顧客の発言を事実と感情に分けてメモを取りながら対応すると良いでしょう。こうした姿勢が、プロとして冷静な応対を可能にし、信頼回復への第一歩となります。
②言い訳と責任転嫁
クレーム対応で「でも」「しかし」といった反論から入る姿勢や、他部署や他社のせいにする発言は、顧客の信頼を一瞬で失います。例えば、「それは担当者が勝手にやったことで、私には関係ありません」や「システムの仕様なので仕方ないんです」といった発言は、会社として責任を負う姿勢が見えず、顧客に「問題を解決する気がない」という印象を与えてしまいます。
顧客は、誰が悪いかではなく、「会社」としてどのように解決してくれるかを見ています。そのため、まず「ご迷惑をおかけし申し訳ございません」と会社の非を認め、その後に事実を説明する手順を踏むことが重要です。責任を転嫁する行為は、誠意の欠如と見なされ、怒りを再燃させる原因となります。
③顧客の話を遮る・軽視する
顧客の話を途中で遮ったり、内容を否定したりする行為は、顧客に「無視された」「訴えを軽視されている」という感情を与えます。具体的な言動としては、「要点を先にまとめてください」「それは違います」といった発言がこれにあたります。
傾聴の姿勢が欠けると、顧客は「話を聞いてもらえない」という不満から、さらに感情的になり、問題の本質的な解決が遠のきます。また、話を遮ることで、事実確認に必要な重要な情報を取りこぼし、誤った対応へと進むリスクが高まります。
対応者が行うべきは、まず顧客が話し終えるのを待ち、共感の相槌を打ちながら受け止めることです。この一連の受容の姿勢が、その後の冷静な話し合いへの土台を作り、問題を不必要に複雑化させることを防ぎます。
④その場しのぎの安易な約束
クレームを早く収束させたいがために、実行不可能な安易な約束をすることは、企業の信用をさらに失墜させる最大の危険行為です。「何でもやります」と不用意に約束しても、それが実現できなければ、二重の裏切りとなり、顧客の怒りは爆発します。
約束をする前には、必ず社内の規定や上長の承認、実現可能性を冷静に確認すべきです。
回答する際は、「すぐにはお答えできませんので、社内で確認した後、〇日の〇時までに必ず折り返しご連絡いたします」というように、期日を明確にした約束に留めます。実現できないことを約束するよりも、実現可能な範囲で誠実に対応することが、最終的な信頼回復につながります。
⑤曖昧な回答で放置する
「検討します」「上に伝えておきます」といった曖昧な回答をしたまま、その後の連絡を怠り問題を放置する行為は、顧客に「問題を放置された」「不誠実だ」という強い不信感を与えます。これは、安易な約束をするのと同じく、企業の信用を大きく損なう行為です。
たとえ問題の解決に時間がかかる場合でも、進捗報告を行うことが極めて重要です。報告の際は、「現在、担当部署に確認中です。〇日の〇時までに必ず途中経過をご報告いたします」と、報告の期日と内容を明確に約束します。問題解決に向けた動きがなくても、定期的に連絡を入れることで、対応中の姿勢が伝わり、顧客の不安や不満の増幅を防ぎ、信頼回復への努力を示すことができます。
お客様の声や顧客対応の見える化に カスタマーサポートツール「Tayori」がおすすめ
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【場面別】クレーム対応のポイント
「電話」「メール」でのクレーム対応の重要ポイントは、以下のようなものがあげられます。
電話対応のポイント:
- 落ち着いた声のトーン
- 保留や転送時のマナー
- 丁寧な電話の切り方
メール対応のポイント:
- 件名の明確化
- 事実確認
- 解決策の提示
電話対応のコツ
電話対応では、顔が見えない分、声のトーンや言葉遣いがそのまま企業の印象を決定します。第一声で「大変申し訳ございません」と低い落ち着いたトーンで共感を示し、安心感を与えることが、顧客の興奮を鎮める最初の鍵となります。
事実確認や上長への相談などで保留をする際は、「恐れ入ります、正確な情報を確認するため、1分ほどお時間をいただいてもよろしいでしょうか」と、時間や理由を伝え必ず許可を得ます。また、担当部署へ転送する際も、「〇〇部の△△が、より詳しく対応いたします」と、担当者名と部署名を伝えて引き継ぎます。無言での保留や転送は、顧客を軽視していると受け取られかねません。
最後に電話を切る際も、「この度は貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました」と改めて謝罪と感謝を述べ、顧客が受話器を置くのを待ってから静かに電話を切ることで、最後まで誠意ある姿勢を貫きましょう。
関連記事:電話対応のマニュアル|基本や好印象を与えるコツ・作り方を紹介
メール対応のコツ
メールでのクレーム対応では、件名が非常に重要です。用件がひと目でわかるよう、謝罪の意と何に関する内容かを簡潔に明記しましょう。
【件名の具体例】
- NG例: 「お問い合わせの件」
- OK例: 【お詫び】〇〇商品の不具合に関するご報告と代替品送付について
・誠意が伝わるメールの構成と例文
メールは以下の構成で、論理的に誠意を伝えます。
- お詫びと感謝(冒頭):
例: この度は、弊社の不手際により、多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。 - 事実確認(本文): 顧客の訴えを復唱し、認識のズレがないかを示す。
例: 〇月〇日に発生した、△△の不具合の件、承知いたしました。 - 解決策の提示(核心): 具体的かつ迅速な対応策を明記する。
例: つきましては、代替品を本日中に発送させていただきます。 - 再発防止の約束と結び:
例: 今後は二度とこのようなことがないよう、管理体制を徹底いたします。 - 署名: 担当者名と緊急連絡先を明記する。
この構成により、顧客は迅速に解決策を知ることができ、誠意ある対応だと感じてもらえます。
こんな時どうする?ケース別クレーム対応
判断に迷うケースの基本方針は以下の通りです。
- 自社に非がない場合: 謝罪は「不快にさせたこと」に対して留め、事実に基づき毅然と丁重にお断りする。
- 過度な要求時: 規定外の要求は丁寧に断り、会社規定内の代替案を提示する。
- 長期化時: 担当者一人で抱え込まず、速やかに上長へエスカレーションし、組織として対応する。
自社に非がない・理不尽な要求への対応
クレームの中には、自社に明確な非がない場合や、顧客からの要求が社会通念上、あるいは会社の規定上受け入れられない理不尽な内容である場合があります。このようなケースでは、感情的にならず、事実に基づいて毅然と対応する必要があります。
まず、顧客の不快な感情に対しては、「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」と共感をもって謝罪しつつ、自社の非ではない事実は明確に区別して伝えます。
丁重にお断りする際の角が立たない言葉選びの具体例としては、以下の表現が有効です。
- 「ご要望は重々承知いたしました。しかしながら、弊社の規定上、誠に恐縮ながらご希望に沿うことが難しい状況でございます。」
- 「心苦しい限りですが、安全管理の観点から、そのご対応は控えさせていただきたく存じます。」
感情ではなく、会社のルールや規定という客観的な理由を盾にすることで、冷静さを保ちつつ、無用なトラブルを防ぐことができます。
対応が長期化・悪質化した場合の対処法
クレーム対応が長期化したり、暴言・脅迫など悪質化したりした場合、担当者がすべてを一人で抱え込むのは非常に危険です。精神的な負担が増すだけでなく、冷静な判断ができなくなり、誤った対応に繋がりかねません。そのため、上司や専門部署への相談(エスカレーション)を速やかに行い、組織として対応することが重要です。
エスカレーションの基準やタイミングは、以下のケースが挙げられます。
- 担当者の判断で解決できないと判断した時。
- 顧客からの暴言、脅迫、不当な要求があった時。
- 金銭的な損害や法的なリスクが懸念される時。
組織的な対応に切り替えることで、複数の視点で状況を把握し、冷静かつ適切な解決策を講じることができます。
関連記事:カスタマーハラスメントの事例集:実際のケースとその対策
まとめ
クレームは、企業が自社の課題を知り、サービスを飛躍的に向上させるための顧客からの貴重なご意見です。
今回解説した5つの基本手順(傾聴からフォローまで)と、NG対応を避ける心構えを徹底することで、ピンチを逆にロイヤルカスタマーを育成する最大のチャンスに変えることができます。クレームを恐れず、常に誠実かつ冷静に対応し、お客様の声を未来の成長に活かしていきましょう。
よくある質問
クレーム対応が上手な人の特徴は?
クレーム対応が上手な人の特徴は以下の通りです。
- 冷静沈着:常に落ち着いた対応を貫ける
- 高い傾聴力:共感を示し、話を遮らず聞ける
- 事実把握:正確な情報を抽出できる
- 迅速な提案:具体的な解決策をすぐ提示できる
- 連携能力:一人で抱えず、組織的に動ける
クレーム対応の4原則は?
クレーム対応の4原則とは、初期対応で欠かせない基本行動です。具体的には、即時対応(迅速な謝罪)、傾聴と共感(最後まで聞く)、正確な事実確認(5W1H)、解決策提示と報告(具体的な策と経過報告)の4つを指します。
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