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「KPIに意識を向けすぎた」ベテランCS・西村高史が語る、カスタマーサポート失敗学【イベントレポート】

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。

成功に偶然はありますが、失敗に偶然はありません。なぜ失敗したのか、そのメカニズムを紐解き次に活かすことで、着実に成功確率を上げることができます。

2024年1月23日に開催した「カスタマーサポート失敗学失敗を学ぶ。失敗から学ぶ。」(主催:株式会社CS HACK、共催:株式会社PR TIMES)では、さまざまな企業でカスタマーサポートをリードしてきた西村高史氏が登壇し、自身が経験した「社内連携」「マネジメント」における“失敗”をお話いただきました。本記事では、当日のセミナー内容の一部をご紹介します。

西村高史氏|株式会社UPSIDER Manager, CX Development
1977年生まれ、北海道出身。
エンジニアを7年間経験し、CS業界へキャリアチェンジ。
以降は、Amazon、スペースマーケット、株式会社エウレカなどの、外資系企業やスタートアップベンチャーを経験。主にサポート部門の立ち上げから運用に至る全ての分野を担当。また、CS以外にもバックオフィスやビジネスサイドの対外交渉、全社の採用戦略を経験。2023年10月株式会社UPSIDERにジョイン。UPSIDERではCX Developmentというチームを立ち上げ、サポート以外にもCustomer Experienceの分野に責任をもつ。

【目次】

  1. 【背景】カスタマーサポートに漂う“下請け感”
  2. 【失敗】KPIを意識しすぎた守りのマネジメント
  3. 【学び】失敗から学んだ3つのポイント
  4. Q&A
  5. まとめ

【背景】カスタマーサポートに漂う“下請け感”

仕事を干されて、メンバーの成長機会がなくなった

カスタマーサポートチームのマネージャーだった私が過去にやらかした失敗です。チームに舞い込む仕事を断り続けていたら、社内で仕事を干される状況になり、結果的にメンバーの成長機会を失ってしまいました。

カスタマーサポートに限りませんが、他部署から日々さまざまな仕事の依頼がくると思います。一つひとつの仕事をしっかり受け入れることで、各メンバーは新しいスキルや経験を得て、一歩一歩成長していくことができます。しかし、私が仕事を断り続けた結果、そういった成長の機会を閉ざしてしまいました。

カスタマーサポートは下請けの何でも屋?

カスタマーサポートは他部署から新しい仕事が舞い込みやすいんですよね。「この質問に対する回答文を書いてほしい」とか、「人手が足りないからこの業務を今後任せたい」とか、「この事務作業は本来カスタマサポートがやってほしい」とか、本当にいろいろ舞い込んできます。

マネージャーとしては、こういった依頼にどう応えるか、チームのリソースをどう配分するか、常に考えなければなりません。それぞれの依頼に対し、どのように優先順位をつけるべきか見極めることが大事です。

当時仕事がたくさん舞い込んでくるなかで、「カスタマーサポートは何でも屋じゃないんですけど!」とかなり憤慨していました。仕事の選別がしっかりできておらず、何でもかんでも引き受けていたんですね。結果、チームのロール(役割)がぼやけてしまい、本来集中すべきサポート業務の質が低下しかねない状態になりました。

メンバーからは、「仕事が増えて大変です」「他部署の下請け感が強いです」と不満の相談をよく受けていました。仕事の任せ方も悪く、舞い込んできた仕事をただメンバーに流していくことが多かったです。どうすれば下請け感をなくしてメンバーの成長に繋げられるか、マネージャーとしてかなり悩みました。

ブロッカーの役割に徹する

チームの状態に苦心した末、私はチームの相談窓口という名のブロッカーになる決断をしました。つまり、他部署からの依頼はすべて私に投げてもらい、まずは目的やコストを細かくヒアリングする流れをとりました。場合によっては、内心引き受けない前提で、問い詰めるようなヒアリングをしてしまうこともありました。

いま振り返ると、最低のやり方をしていたと思います。過度に問い詰めて、引き受けないような状況を意図的につくっていたわけです。ただ、チームの負担を減らすにはこうするしかないと当時は考えていました。

メンバーからは、仕事がしやすくなったと良い反応をたくさん貰えました。そして、私はより一層ブロッカーの役割を担い続けようと思いました。チームにとって私の行動は間違っていない、良い影響を及ぼしていると信じるようになりました。

【失敗】KPIを意識しすぎた守りのマネジメント

仕事を断り続けた結果、カスタマーサポートが孤立化

私がブロッカーに徹したことで、短期的にはチームの状態は良くなりました。ただ、1年ほど仕事を断り続けた結果、思いもよらない大きな悲劇につながります。冒頭の話に戻りますが、社内で仕事を干され、メンバーの成長機会を失ってしまいました。

何か新しいことを始めたいと思っても、カスタマーサポートだけで完結できることってあまりないんですよ。私がある種「嫌なマネージャー」に徹してしまったことで、他部署の協力や連携がどんどん得られなくなりました。カスタマーサポート=お客様対応だけの存在、という矮小化が社内で進んでしまい、下請け感が逆に増してしまう事態となりました。

そして、一番の問題は、新しい仕事を通して得られる経験が少なくなったことです。チーム全体はもちろん、私自身も、成長の機会が格段に減りました。本当に大きな失敗だったと1年かけて気付きました。

本当は好循環のサイクルを回したかった

チームの成長や価値を上げていくため、当時私が考えていた好循環のサイクルです。「仕事が増える」「できることが増える」「結果の質が向上する」「関係値が向上する」、そしてさらに仕事が増えていくという流れです。このサイクルをしっかりまわしていきたいと考えていました。

しかし、私の誤った行動によって、最初のステップである「仕事が増える」が完全に滞ってしまいました。結果、できることは増えず、結果の質は横ばいで、他部署との関係値は悪くなる一方でした。当時を振り返ると本当に辛い気持ちになるのですが、チーム全体が逆に悪循環のサイクルに陥ってしまいました。

「歪んだチームファースト」KPIに意識を向けすぎた

失敗の原因を一言にまとめると、チームの定常業務を安定的にまわすことだけに意識が向いていた、ということです。定常業務とは、問い合わせ対応といった日々発生する業務はもちろん、数値として生じるKPI管理も含みます。

例えば、アバンダン率(オペレーターに繋がる前に顧客が電話を切断した、あるいはシステムが自動で切断した割合)を何%以下に保つなど、サービス品質の目標達成がいくつも課せられていました。特に大企業(大規模サービス)の場合、KPIを死守することが最重要で、私もそれが最大のミッションだと思っていました。

しかし、KPI管理だけに固執すべきではなかったです。「安定的にまわす」というチームファーストを追求しすぎた結果、チーム全体の成長機会を失ってしまいました。他部署との関係構築も同時に追求していくバランスが重要だったと痛感しています。

【学び】失敗から学んだ3つのポイント

どんな仕事があってもまずは受ける

「どんな仕事であってもまずは受ける」今回特に強調したい教訓です。これが最適解というわけではないですが、失敗を次に活かすうえで、私がいま大切にしている姿勢です。

舞い込んできた仕事がチームに負担がかかるものだとしても、まずは受け入れる姿勢をとるようにしています。他部署からの依頼に対しオープンになることで、新しい成長の機会が得られます。ときには予想外の成果に繋がることもあります。一見負担のある仕事でも、チームの能力を伸ばし、新しい価値を生み出すきっかけになります。

受けた仕事を「仕組み化して可視化する」

仕事はただ受けるのではなく、大事なのは「仕組み化して可視化する」ことだと考えています。仕組み化は属人的な業務の脱却、可視化は客観的な結果の共有を意味します。他のチームに委ねる可能性も視野に入れた、はじめの業務基盤づくりともいえます。

仕事を受けたからには、継続すべきものかを判断することが重要です。実際にやってみて、その仕事にどういう価値があるのか、どんなリターンが見込めるのかを検証します。カスタマーサポートなので、お客様のためになるかが一番の判断基準になります。

受けた仕事を価値あるものにしたうえで、自分たちのチームでデリバーするのか、他のチームに委ねるのか、あるいはそこで終了するのか、最後に必ず結論付けるようにしました。最後に判断するまでのプロセスを通して、単にタスクをこなすだけでは得られないチーム全体の成長があると思います。

失敗から学んだ3つのポイント

カスタマーサポートに限りませんが、今回お話した失敗を通して、私は3つの学びを得ました。

①チームを守りすぎることは組織にとってネガティブ

チームを守ることはもちろん大事ですが、過度に守りすぎると、会社という組織全体にとってネガティブな影響を及ぼす可能性があると実感しました。チームを守ることは結果を出すための一手段であって、偏らないようバランスを見極めることが重要です。

②受けた仕事を改善していくプロセスでチームが成長していく

仕事をただ受けるだけではなく、どのように仕組み化し可視化をするかがチームの成長には大事です。受けた仕事を価値あるものにして判断をする、そのプロセスを通じてチーム全体が成長していきます。

③受けた仕事を形にすることでチームとしての信頼に繋がる

新しいカスタマーサポートの施策をはじめるには、往々にして他のチームの協力・連携が必要です。なので、まずは信頼されなければなりません。受けた仕事をしっかり形にしてデリバーすることで、チームへの信頼は育まれていきます。

これが私の失敗学です。受けた仕事を価値あるものにし、チームの信頼を築き、組織全体の成長に貢献していくことが、マネージャーである私の使命であるといまは信じています。

Q&A

Q.西村さんの経験同様、他部署からの仕事を受けることでチームのリソースが逼迫しています。このような場合でも、仕事を受けるべきでしょうか?

仕事を受けること自体はマイナスではありません。チームやメンバーにとって新たな成長の機会となる可能性があるからです。

そのうえで、まず大事なのは「リソースの確保」だと思います。仕事を成功させるには、リソースを適切に配分しなければなりません。リソースが足りない場合は、チームの増員や他部署の協力を得るなど、リソースの確保に向けたアクションが必要になります。

そして、仕事を受けるかどうかの判断では、単にリソースの有無だけでなく、その仕事を通じてチームがどのように成長できるか、お客様にどのような価値を提供できるかを考慮することが重要です。

Q.カスタマーサポートの仕組み化として、人力で解決するのか、テック(開発やツール)で解決するのか、どのような基準で決めていますか?

とても難しい問いですね。お客様対応などは感受性や繊細さが求められることが多いので、人で解決するほうが適しています。一方で、大量のデータ処理や定型的な事務作業などは、テックで解決するほうが効率的です。

大事なのは、コストと顧客体験のバランスでしょうか。テックを活用してコストをできるだけ削減したいのか、高いコストをかけてでも人で対応をして顧客体験を高めたいのか、バランスを慎重に見極める必要があります。

カスタマーサポートの目標やお客様の期待を正しく理解することで、自社の判断基準が見えてくると思います。また、チームにとって持続可能な選択であるかという中長期の視点も忘れないようにしましょう。

Q.サポートチャネルを増やした結果、リソースが枯渇したとのことですが、具体的な経緯を教えてください。

皆さんも経験があるかもしれないのですが、サポートチャネルを増やしてほしいという要望が他部署から結構きます。実際言われるがままチャンネルをどんどん増やしたことがありました。当初はメールだけだったのですが、電話やチャットでも問い合わせを受け付けるようにしました。

ただ、電話だと一つの問い合わせに集中しなければなりませんし、チャットも複雑な問い合わせだと掛け持ちが難しくなります。電話とチャネルの導入後、作業効率が格段に落ちてしまいリソースが逼迫しました。結果、メールへの対応がどんどん後回しになるなど、サービス品質がかなり下がってしまう事態に陥りました。

なので、無計画にチャネルを増やしていくのはよくないですね。いまは要望があっても、しっかり計画を立てるようにしています。リソースは足りるのか、導入後にどういう影響が発生するのかなどを考慮して、最終的に増やすかどうかを判断しています。

Q.マネージャーとして、メンバーとのコミュニケーションで気を付けているポイントを教えてください。

一言でいえば、「ビジョンを伝える」というのを意識しています。一つひとつの仕事が中長期でどういう影響を及ぼすのか、お客様や会社全体にとってどういう価値を持つのかなど、先々まで見据えた意味付けをしっかり行うということです。

良い成果を生み出すには、メンバーがモチベーション高く仕事に取り組まねばなりません。他部署からの急な依頼、降って湧いたような仕事でも、目的やゴールを明確にし、最終的にどのような価値が生まれるかという未来図を描くことが重要です。

内発的動機付けともいえますが、未来図をしっかり共有できればメンバーは納得や共感をしやすくなります。そして改めて、今後のチームの成長や価値提供をみんなで考えるきっかけにもなります。

まとめ

本セミナーで西村氏は、カスタマーサポートチームのマネージャーとして自身が経験した失敗を赤裸々に紹介されました。特に「社内連携」「マネジメント」にまつわる学びを多く得られるエピソードでした。

終了後の参加後アンケートでは、大多数がポジティブな反応で、参加者にとって満足度の高いセミナーになったものと思います。今後もPRTIMESは、カスタマーサポート業務のノウハウを共有する実践的なセミナーを開催していきますので、どうぞご期待ください。

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