マニュアルを作る際、「一から構成を考えるのは大変」「必要な項目や体裁を整えるのに時間がかかる」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。そこで活用したいのが、あらかじめ枠組みや項目が整備された「テンプレート」です。テンプレートを活用すれば、作業効率を大幅にアップしつつ、必要な情報を漏れなく網羅できるメリットがあります。本記事では、代表的なマニュアルテンプレートとその使い方、注意点までをわかりやすく解説します。
目次
マニュアル作成の目的
マニュアルを作成する最大の目的は、業務の標準化や情報共有の効率化です。社内外を問わず、誰かが手順やルールを確認したいときに、一貫性のあるドキュメントがあれば迷わず行動できます。その結果、作業ミスやコミュニケーションロスの減少、教育コストの削減など、多くのメリットが期待できます。
また、マニュアルがあることで、新人教育や業務の引き継ぎがスムーズになり、組織全体の生産性が向上する効果も見込めます。最近では、オンライン環境やクラウドツールを活用して、Webベースのマニュアルを構築するケースも増えています。
なお、マニュアル作成の基本については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
マニュアルテンプレート
テンプレートとは、あらかじめ構成や項目が整ったひな形のことです。必要事項を埋めたり、一部修正したりするだけで、スピーディにマニュアルを完成させることができます。以下では用途に応じた代表的なテンプレート例を用意しました。
1. 社内業務マニュアル(Excel形式)
概要
目的:組織内の定型業務を標準化し、誰でも同じレベルで対応できるようにする
形式:Excelワークシート(列と行で担当部署、日付、必要書類、手順を管理)
テンプレート項目例(Excelの列見出し)
1.業務名
例:「月次経費精算」「備品発注手順」など
2.担当者/部署
経理部、総務課など
3.提出期限/実施日時
「毎月〇日」「毎週〇曜日」など
4.具体的手順
手順を段階ごとに分けて箇条書き
5.補足情報
業務上の注意点や関連資料のリンクなど
カスタマイズのヒント
- セル結合・色分け:重要項目を強調する
- コメント機能:詳細や注意喚起を吹き出し表示
- 関数やチェックリスト:自動計算や完了チェックを組み込み
活用例
- 月次経理業務、備品管理フロー、定期レポート作成など
2. 引き継ぎ書テンプレート
概要
- 目的:担当者が異動・退職・休職する際、後任者がスムーズに業務を引き継げるようにする
- 形式:WordやExcel、Googleドキュメントなど、チームが使いやすいツールを選択
テンプレート項目例
1.担当業務一覧
「社内会議運営」「顧客データ管理」「契約書作成」など
2.業務の目的/背景
その業務が果たす役割や重要度を記載
3.取引先・関係部署の連絡先
取引先や社内部署の担当者・連絡先
4.注意点・リスク管理
よくあるトラブルや、発生時の対応手順
5.資料・システム一覧
参照すべきファイル、ログイン情報など
カスタマイズのヒント
- 色分けや箇条書き:要点が見つけやすいよう工夫
- テンプレートを標準化:異動が多い企業はフォーマットを固定してノウハウを蓄積
活用例
- 退職や長期休暇前の業務整理
- 新規入社メンバーに対して早期キャッチアップを促す
3. 作業手順書テンプレート
概要
- 目的:特定の作業や操作を段階的に示し、ミスや抜け漏れを防ぐ
- 形式:Word、Excel、Googleドキュメントなど。画像を挿入しやすい形式がおすすめ
テンプレート項目例
1.手順番号
作業1、作業2…など番号を振る
2.操作・作業内容
具体的に「〇〇をクリック」「△△を取り付ける」といった内容
3.必要な道具・ソフト
使用ソフト名、工具、資材など
4.予想所要時間
作業見込み時間や目安
5.注意点
安全対策や誤操作を防ぐための留意事項
カスタマイズのヒント
- 画像やスクショの挿入:視覚的に理解しやすくなる
- 備考欄の用意:例外対応や追加メモを記載できるスペース
活用例
- 工場のライン作業、ITシステムの新機能導入時のオペレーションなど
- 手順が多く、誤ると大きなトラブルになる業務に最適
4. 取扱説明書テンプレート
概要
- 目的:製品やサービスを正しく・安全に利用してもらうために必要な情報を網羅
- 形式:WordやPDF、Webページなど。画像やイラストを多用するとユーザーが理解しやすい
テンプレート項目例
1.製品概要
製品名やバージョン、用途など
2.使用方法(ステップごと)
箇条書きやステップ番号を付け、わかりやすく解説
3.安全上の注意
禁止事項や警告表示(赤字・太字で強調)
4.エラーやトラブル時の対処法
よくある不具合と解決策
5.問い合わせ先
サポート窓口やFAQページのリンク
カスタマイズのヒント
- 写真・イラスト:文章だけでは分かりづらい箇所を補完
- 注意事項の強調:色枠や太字を使ってリスクを見落とさないようにする
活用例
- 家電製品や電子機器の取り扱い
- Webサービスやアプリのユーザーマニュアル
5. 業務マニュアルテンプレート
概要
- 目的:企業内における一連の業務プロセスやルールを体系的に整理
- 形式:Word、PowerPoint、PDFなど。フローチャートなどを組み合わせると理解度UP
テンプレート項目例
1.業務フロー概要
全体像を簡単に示す。例:営業フロー(顧客開拓→商談→契約→アフター対応)
2.ステークホルダー(関係部署)
どの部署がどの段階で関与するか
3.必要書類・ツール
作業時に参照・作成する書式、ソフトウェアなど
4.想定されるトラブル/FAQ
よくある問題と解決策をあらかじめ記載
5.更新頻度と担当
マニュアルの見直しタイミングや更新責任者
カスタマイズのヒント
- フローチャートや表形式:工程や役割分担が一目で分かる
- 共同編集ツール活用:更新頻度が高い業務はクラウド上で最新版を管理
活用例
- 総務・人事の手続き、営業プロセス、IT部門のシステム運用フローなど
6. 操作マニュアルテンプレート
概要
- 目的:特定のソフトウェアやシステム、アプリなどの操作手順を分かりやすく説明
- 形式:WordやPDF、Webマニュアルなど。スクリーンショットを多用すると◎
テンプレート項目例
1.概要(システムの目的)
何を実現するソフト・システムなのか
2.初期設定方法
インストールや初回ログイン手順
3.メイン機能の操作手順
項目別に画面キャプチャやショートカットを示す
4.エラー時の対処法
よくあるエラーコードや復旧手順
5.問い合わせ窓口
サポート部署やFAQリンク
カスタマイズのヒント
- スクリーンショットの差し込み:画像の位置やサイズを統一し、説明文を付ける
- UI変更に備えた更新:定期的にバージョンアップに追随し、最新状態を保つ
活用例
- 新規導入ツールの使い方説明
- 社内システムの管理画面操作マニュアル
- アプリケーションの利用ガイド
7. フローチャート
概要
- 目的:工程や意思決定プロセスを図式化し、複雑な業務の流れを簡潔に示す
- 形式:PowerPointやLucidchart、Visioなどで作成。矢印や図形で流れを表現
テンプレート項目例
1.主要な判断ポイント
Yes/Noや選択肢の分岐を明記
2.作業ステップ
それぞれの工程を長方形や丸などの図形で表す
3.担当部署・担当者
工程ごとに担当を示すと責任範囲が明確に
4.エラールートや例外処理
正常系と異なる処理が必要な場合、別ルートで示す
5.最終到達点
完了基準や終了条件を可視化
カスタマイズのヒント
- 色分け:工程や優先度ごとに色を変えて分かりやすく
- 吹き出し:補足説明をマウスオーバーで表示できるようにする
活用例
- 申請フローや問い合わせ対応フロー
- トラブルシューティングの手順
- 業務プロセスを簡潔に説明したい場合
マニュアルテンプレートの活用方法
テンプレートは作業効率を高める便利なツールですが、カスタマイズや更新を怠ると逆効果になる場合もあります。ここからは、テンプレートを有効に使うための方法を見ていきましょう。
既存のテンプレートをカスタマイズする
インターネット上や社内で共有されているテンプレートをそのまま使うのではなく、必要に応じてカスタマイズすることが重要です。自社の業務フローやツールの特性に合わせ、不要な項目を削除したり、新規項目を追加したりして、読み手が使いやすい形に整えましょう。項目が多すぎて可読性が低下しないよう、シンプルなレイアウトを維持するのもポイントです。
オリジナルのテンプレートを作成する
既存のものだけでは物足りない場合は、オリジナルのテンプレートをゼロから設計するのも一つの手です。自社独自の業務カテゴリーや社内用語を反映できるため、統一感のあるマニュアルを作りやすくなります。将来的に同様のマニュアルを複数作る予定があるなら、はじめにテンプレートを整備しておくことで、後々の作業効率が大幅に向上するでしょう。
マニュアルテンプレートの注意点
テンプレートは便利な反面、使い方を誤ると却って非効率を招く可能性があります。ここでは、テンプレートを運用するうえで気をつけたい3つのポイントを解説します。
テンプレートに頼りすぎない
あまりにテンプレートの項目やレイアウトに縛られすぎると、本来必要な内容が十分に盛り込まれない場合があります。たとえば、テンプレートには含まれていない独自の注意点や事例が必要なとき、無理に既存項目へ合わせようとして情報が埋もれてしまうケースが考えられます。テンプレートはあくまでたたき台と捉え、柔軟に修正や追加を行うことが大切です。
内容を定期的に更新する
テンプレートで作成したマニュアルでも、業務内容や製品仕様が変われば随時アップデートが必要です。特に、外部環境の変化やシステム改修が頻繁な現場では、定期的なレビューと修正を怠ると誤情報が残り、トラブルの原因になる可能性があります。更新履歴をしっかり記録しておくと、変更点をスムーズに把握できるでしょう。
読者視点で考える
テンプレートを活用する際も、読者が理解しやすいかどうかを常に意識してください。テンプレート上の専門用語や略語が、読者にとってわかりにくい場合は、用語集や補足説明を加える必要があります。また、項目の順番が読者の作業手順と合っているかも重要です。使う人の視点に立ち、読みやすさ・探しやすさを最優先にテンプレートをアレンジしましょう。
まとめ
テンプレートを活用すれば、マニュアル作成のハードルを大幅に下げ、短時間で質の高いドキュメントを整備しやすくなります。ただし、あくまで“ひな形”であることを忘れず、自社の実情に合わせたカスタマイズや定期的な更新が欠かせません。
なお、Tayoriのようなサポートツールを使えば、FAQやナレッジベースを簡単に作成・運用できるため、マニュアルのテンプレート管理や更新にも役立ちます。 ぜひテンプレートを上手に取り入れながら、わかりやすく実用性の高いマニュアルを整備してみてください。