マニュアルは業務の標準化や情報共有を円滑にするうえで欠かせない存在です。わかりやすく作成されているマニュアルがあれば、新人研修や業務手順の確認がスムーズになり、トラブルも未然に防ぎやすくなります。しかし、「どのような構成にすればいいのか」「作成に使うツールは何を選べばよいか」など、はじめてマニュアルを作る際には悩むポイントが多いのも事実。本記事では、マニュアル作成の基本から運用方法、活用事例までを徹底解説します。
目次
マニュアル作成の基本
マニュアルを作るうえで大切なのは、誰のために、何のために作るのかを明確にし、それを踏まえた計画を立てることです。ここでは、マニュアル作成を5つのステップに分けて解説します。
1. 目的の明確化
マニュアルを作成する最初のステップは、目的をはっきりさせることです。たとえば、新人向けの業務手順を整理したいのか、社外向けのサービス手順を周知したいのかによって、必要な内容や表現方法は大きく変わります。
- ターゲットの定義:誰が読むマニュアルなのか(新人、顧客、協力会社など)
- どんな課題を解決したいのか:問い合わせが多い、作業ミスが減らないなど
- 期待効果:作業時間短縮、業務品質向上、問い合わせ対応の負荷軽減など
具体例として、顧客からの問い合わせを減らしたい場合、FAQ形式で作成して分かりやすい手順やQ&Aをまとめると効果的です。逆に、社内の新人研修用であれば、研修スケジュールや連絡先リストなどの補足情報も盛り込みやすくなります。こうした目的を明確にしておくと、後の工程で迷いが減り、完成度の高いマニュアルが作りやすくなります。
2. スケジュール設定
マニュアルの作成は、想定以上に時間がかかることが珍しくありません。文章の執筆だけでなく、関係者への確認やデザイン調整、校正作業などが必要だからです。そのため、以下のようなポイントを押さえてスケジュールを組みましょう。
- 作業工程の洗い出し:情報収集、執筆、レビュー、テスト運用、最終調整
- 担当者のアサイン:専門知識のある人、文章が得意な人、デザイン担当など
- マイルストーンの設定:完成までの大まかな区切りを決め、定期的に進捗を確認
たとえば、まずはドラフト版を2週間で作成→関係部署に回して1週間でレビュー→フィードバックを踏まえてさらに1週間で修正…というように、細かい目標を置いておくと全体の見通しが立てやすくなります。特に大型プロジェクトであればあるほど、各フェーズにクッションを持たせて計画を立てるのがポイントです。
3. 構成の計画
目的や読者層が明確になったら、マニュアル全体の構成を決めていきます。大枠を決めずに書き始めると、途中で情報の重複や不足が出やすいため、次のような項目を事前に整理しましょう。
- 章立て・セクション分け:必要な項目をリストアップし、論理的な順序を考える
- 見出しの階層:読み手が流れを追いやすい構成にする
- 導入部分や注意書き:マニュアルの目的や前提条件、注意点などをまとめる
- 具体例やFAQの挿入位置:読者が躓きやすい部分に、具体例やよくある質問を配置
たとえば、業務手順マニュアルであれば「概要→手順1→手順2→トラブル対応→FAQ→連絡先」といった流れを作り、読者が順番に読み進めるだけで全体を理解できるようにします。構成段階でしっかり情報を整理しておくと、後々の編集がスムーズに進むでしょう。
4. ツール・フォーマットの選定
次に、どのツールやフォーマットでマニュアルを作るかを検討します。用途や公開範囲によって最適な方法は異なるため、以下の点を考慮して選びましょう。
- 作成ツール:WordやGoogleドキュメント、PowerPoint、あるいは専用ソフトなど
- 公開方法:PDFにして配布するのか、Web上に掲載するのか、社内Wikiにするのか
- 更新のしやすさ:マニュアルの改訂をどの程度頻繁に行うか
- ユーザーとの接点:社内だけで使うのか、外部パートナーや顧客にも共有するのか
たとえば、頻繁にアップデートが必要なマニュアルなら、WebベースやWiki形式が便利です。PowerPointを利用して、スライド感覚で視覚的に分かりやすくまとめる方法もあります。また、イラストや図解が多い場合は、デザインツールとの親和性も考慮するのがおすすめです。
5. 執筆・編集
最後に、実際に文章を執筆し、編集作業を行うステップです。ポイントは、完成したつもりでも必ず第三者にレビューを依頼すること。誤字脱字だけでなく、表現のわかりにくさや情報の重複などを客観的に指摘してもらうことで、マニュアルの品質を高められます。執筆の後は、レイアウトやデザインを整え、想定読者がストレスなく読める状態に仕上げましょう。
マニュアル作成時のポイント
ここでは、マニュアルを実際に執筆・編集する際に押さえておきたいポイントを紹介します。読者にとってわかりやすく、有用なマニュアルに仕上げるための具体的なヒントをまとめました。
分かりやすい文章
マニュアルの文章は、専門用語を避け、平易な表現を心がけることが大切です。あいまいな表現や主語・述語の不足は読者を混乱させます。以下のコツを参考にしてみてください。
- 箇条書きを活用:手順やポイントを並べるときは一文を短くして箇条書きにする
- 能動態を使う:たとえば「〜する必要がある」ではなく「〜してください」とする
- 紛らわしい表現を減らす:「することがあります」「○○など」だけで終わらないよう具体例を添える
文章を読んだときに「どうすればいいのか」が明確に伝わるよう意識すると、マニュアルとしての完成度がぐっと上がります。
図解・イラストの活用
文字だけでは理解しづらい手順や構造を説明する際には、図解やイラストが大きな力を発揮します。たとえば、ソフトウェアの操作手順ならスクリーンショットを添えたり、ハードウェアの配線方法であればイラストで配線の流れを示すといった具合です。
- 画像は適度に強調:本文中に大きめに表示して、一目で全体像を把握できるようにする
- キャプション(説明文)をつける:図の内容や目的を簡潔にコメントするとより親切
- 色やアイコンの工夫:重要な手順は色枠や矢印を使って分かりやすく強調
視覚的情報を組み合わせることで、読者が瞬時に内容を理解し、迷いなく行動へ移しやすくなります。
読者視点
マニュアルは作成者の視点になりすぎると、読者に伝わらない情報になりがちです。常に「読者が何を知りたいか」「どこでつまずくか」をイメージしながら構成する必要があります。
- よくある質問を先回りして掲載:読者が陥りそうなミスや不明点をQ&A形式で補足
- 実際の操作手順を再現:実際に行動してみながら、どの画面・どの場所で苦労するかを洗い出す
- 専門用語は補足説明を入れる:業界用語や社内用語が当たり前ではない可能性を考慮する
読み手に寄り添った内容になっているかを随時チェックすると、より実践的なマニュアルになります。
見やすさ
いくら内容が充実していても、レイアウトが雑然としていると読む気が失せてしまいます。読者がストレスなく読み進められるよう、以下の点を意識しましょう。
- 余白をしっかり取る:行間や段落間のスペースを確保して、文章が詰まらないようにする
- 見出しにメリハリをつける:文字のサイズや太字、色を使って階層を視覚的に区別
- フォントの選定:読みやすいフォントを選び、文字色は背景と十分なコントラストを確保
- ページ番号や章番号の付与:紙媒体の場合は特に、参照しやすいように番号を振る
デザインに気を配るだけでも、マニュアル全体の品質と読み手の印象が大幅に向上します。
継続的な見直し
マニュアルは作って終わりではなく、継続的に見直していくことが大切です。運用や環境が変われば、内容の修正が必要になることもしばしば。
- 定期レビューの仕組み:半年ごとや1年ごとにマニュアルを見直す習慣を作る
- フィードバックの受け皿:現場の人が気づいたことを即座に報告できるようにし、随時更新する
- バージョン管理:更新履歴をしっかり残し、いつ・誰が・何を変更したかを把握できるように
古い情報が放置されると、むしろ混乱を招いてしまうため、運用開始後のメンテナンス計画も重要です。
アクションに繋がる内容
マニュアルは読んでもらうだけでなく、実際に行動を起こしてもらうことがゴールです。そのためには、「読者が次に何をすればよいのか」が明確に示されている必要があります。
- 手順の終わりに確認ポイントを置く:「以上で◯◯の設定は完了です。続いて◯◯を実施してください。」
- 関連情報へのリンク:次に読むべき章や別のマニュアルへのリンクを設置し、行動を誘導
- 役立つTipsを挿入:実際に使う際のコツや注意点を、コラム形式で追記
読者が「やってみよう」と思える仕掛けを用意しておくことで、マニュアルの価値をより高めることができます。
マニュアルの種類と活用方法
マニュアルと言っても、目的や利用シーンは多岐にわたります。ここでは、代表的な5つのマニュアル種類と、その活用方法の例を紹介します。
業務マニュアル
社内業務の標準化を目的としたマニュアルです。具体的には、経理手続きの手順、総務が行う備品発注フロー、営業のアポ取得方法など、各部署の業務に関する詳細なプロセスをまとめます。
- 活用例:社員が異動した際の引き継ぎ、新入社員が業務を理解する際のガイド
- メリット:属人化を防ぎ、誰でも同じレベルの業務を行える
- 注意点:運用ルールの変更に合わせてこまめな更新が必要
業務全体を俯瞰できるよう、フローチャートやチェックリストを用いると視覚的に分かりやすくなります。
手順マニュアル
ある特定の作業や操作のステップを段階的に示すマニュアルです。ITシステムのログインから設定手順、ハードウェアの組み立て手順などが典型例。
- 活用例:問い合わせ対応時、ユーザーに操作を説明する際にURLを送って参照してもらう
- メリット:画面キャプチャや写真を添付しやすいので、直感的に理解しやすい
- 注意点:ソフトウェアのアップデートやツールの変更がある場合、頻繁に更新が必要
ステップごとに箇条書きや番号を振り、見出しを分かりやすく設定しておくと、手順の流れが把握しやすくなります。
取扱説明書
機械や家電製品、ソフトウェアなど、製品の使用方法や安全上の注意点をまとめたマニュアルです。メーカーがユーザー向けに提供することが多く、法規制や安全基準に即した表記が求められます。
- 活用例:新製品の箱に同梱、もしくはWebマニュアルとして公開
- メリット:顧客が安全かつ適切に製品を使えるようになる
- 注意点:技術的な情報が多いため、一般ユーザーにも理解しやすい表現を心がける
図解やイラストを効果的に使い、文字の量が多すぎないようにすることが読み手への配慮につながります。
教育マニュアル
新人研修やスキルアップ研修など、教育目的で作成されるマニュアルです。職種別の研修カリキュラム、具体的な演習課題、テストの解説などをまとめることで、教材としての役割を果たします。
- 活用例:OJTと組み合わせて、新人が独習するためのガイドにする
- メリット:担当者ごとに研修内容が違うといったムラをなくし、教育水準を一定化できる
- 注意点:教育方法が変わったり、スキル要件が変わったりした際に早めの更新が必要
動画やオンライン教材との連動を図ることで、より多面的な学習体験を提供できるでしょう。
ナレッジマニュアル
社内に蓄積された知識やノウハウを集約し、いつでも参照できるように整理したマニュアルです。FAQやトラブルシューティング集、成功事例の共有などが該当します。
- 活用例:社内Wikiやナレッジベースに記事として投稿し、検索しやすいようタグ付けする
- メリット:学習コストが減り、業務効率が向上する。後から参照・更新が容易
- 注意点:情報量が膨大になりやすいので、カテゴリ分けや検索機能の整備が必須
ナレッジマニュアルは多くの人が共同編集する場合が多いため、ルールを明確にし、情報の新旧が混在しないよう管理する仕組みを取り入れましょう。
マニュアル作成のメリット
マニュアルを整備すると、業務の効率化や品質向上、教育コスト削減など、多方面に効果が期待できます。ここでは代表的なメリットを3つ紹介します。
業務効率化
マニュアルがあると、業務手順や問い合わせ対応がスピーディに行えます。社員全員が同じ情報を参照できるため、ムダな確認作業やコミュニケーションロスが減少します。
品質向上
全員が同じ基準・手順で業務を行うため、作業品質にばらつきが出にくくなるのがメリットです。作業ミスやトラブルの原因が明確になれば、マニュアルへ追記・修正を加えることで再発防止策を全社共有できます。結果として、顧客満足度の向上や社内での評価向上につながります。
教育コスト削減
新人を育成する際、口頭や現場指導だけに頼ると指導者側への負担が大きくなります。マニュアルがあれば基本的な知識や操作は自己学習できるため、OJT担当者の時間も節約できます。一定のレベルに達したら実務に移行し、さらに理解を深める—という流れを作りやすくなるでしょう。
マニュアル作成のデメリット
マニュアルは便利な反面、作成やメンテナンスにコストがかかる場合があります。ここでは代表的な2つのデメリットを紹介します。
作成コスト
マニュアルを新規に作る場合は、情報収集・文章作成・レビューなどに工数がかかるため、短期間では終わらないことが多いです。文章を書くのが得意な人材や専門知識を持つ担当者をアサインする必要があり、その分の人件費や時間もかかります。
また、デザイン面にこだわる場合は、外部デザイナーやDTP業者を利用するコストも考慮しなければなりません。ただし、一度しっかり作成しておけば、継続的に使える資産となるため、長期的な視点で判断することが重要です。
メンテナンスの必要性
環境や業務フローが変わった際、マニュアルの内容を適宜更新しないと古い情報が残ったままになってしまいます。結果として、誤情報に従って作業するリスクが高まり、せっかくのマニュアルがかえって混乱を招く恐れも。定期的なレビュー体制やバージョン管理が欠かせません。
マニュアル作成の成功事例
マニュアル作成が成功すると、業務効率やサービス品質の向上だけでなく、社内外のコミュニケーションを円滑にする効果も期待できます。
社内の成功事例として、社内に分散していた情報をFAQを活用してマニュアル化したことで情報共有のコストが大幅にされた事例があります。
社内マニュアルの成功事例はこちら>>社内外への情報共有コストが激減 クラウド化の第一歩にTayori活用
また、社外マニュアルの成功事例では、検索性・可読性を高めた顧客向けのマニュアルを整備したことにより問い合わせ数が削減し、問い合わせが発生した場合もマニュアルを読んだうえで問い合わせがあるため、解決スピードがあがり、サポート対応が効率化しました。
社外マニュアルの成功事例はこちら>>「建設DXにTayoriを」活用でみえた、施工マニュアル“オンライン化”の重要性
まとめ
マニュアルは業務標準化や教育効率化など、あらゆる場面で大きな効果を発揮する一方、作成やメンテナンスに手間がかかるデメリットもあります。だからこそ、目的と読者を明確にし、適切なツールやフォーマットを選んで運用することが重要です。
なお、Tayoriのようなサポートツールを活用すれば、FAQやナレッジベースを簡単に作成し、マニュアルとして活用することも可能です。 自社に合ったマニュアルを整備し、業務効率と品質向上を実現してみてください。