採用候補者の経歴やスキル、人物像などを第三者に確認する「リファレンスチェック」。書類や面接では把握できない客観的な情報を入手できるため、採用候補者を見極める手段として日系企業でも導入するケースが増加しています。
本記事では、リファレンスチェックのメリットや、実施する際の質問内容を解説。違法となるケースについても紹介します。導入を検討している採用担当者は要チェックです。
リファレンスチェックとは?
リファレンスチェックは、採用候補者の経歴やスキル、人物像などを、実際に候補者を知る第三者に問い合わせること。外資系企業を中心に行われており、近年日系企業でも実施されることが増えてはいるものの、まだ一般的ではありません。
リファレンスチェックを行う一番の目的は、書類や面接内容の事実確認ですが、自社の社風やカルチャーとの相性チェックも目的とされています。
リファレンスチェックのタイミング
リファレンスチェックは、正式な採用通知を出す前のタイミングで行うことが一般的です。2021年に公開された調査リリースによれば、日系・外資系どちらの企業でも、最終面接後にリファレンスチェックを行っているケースが最多。最終的な判断を行うための資料として利用されています。
なかには、内定後にリファレンスチェックを行う企業もありますが、内定後の取り消しは違法。内定後のリファレンスチェックは、採用のための判断材料ではなく、あくまでも確認のために行うことを覚えておきましょう。
前職調査との違い
リファレンスチェックと混同されがちな前職調査は、情報提供を求める項目、情報提供元が異なります。
リファレンスチェックが求職者の人柄や能力、前職での働きぶりなどを調査するのに対し、前職調査では経歴詐称や金銭トラブルの有無などを確認します。バックグラウンドチェックと呼ばれることもあり、採用リスクを避けるために実施されます。
また、情報提供元も異なります。リファレンスチェックは前職で求職者と関わりの深い方に依頼するのに対し、前職調査は探偵や信用機関に依頼するのが一般的です。ただし、個人情報保護法厳格化により、前職調査を行う企業は減少傾向にあります。
リファレンスチェックの方法・依頼先
リファレンスチェックは、候補者の前職または現職の企業に依頼し、情報を提供してもらいます。リファレンス先を探す方法は主に2つあり、候補者と話し合ったうえでどちらかの方法を選択しましょう。
方法1.候補者がリファレンス先を紹介
リファレンスチェックの1つ目の方法は、候補者がリファレンス先を紹介する方法です。
候補者がリファレンスチェックを依頼する推薦者を決め、自らコンタクトを取り、協力の同意を得ます。その後、候補者が選考を受けている企業に推薦者の連絡先を共有。後日、企業から推薦者に連絡を行い、リファレンスチェック実施の日程を調整します。
方法2.企業がリファレンス先を探す
リファレンスチェックの2つ目の方法は、企業がリファレンス先を探す方法です。
リファレンスの依頼先を探すには、候補者の現職、または前職の企業に連絡します。候補者を挟まず直接やりとりが発生するため、リファレンスチェックを短期間で行いたい場合に適した探し方です。ただし、連絡する前は候補者から一報を入れてもらい、話をスムーズに進められるようにしましょう。
企業がリファレンスチェックをする3つのメリット
候補者にとってネガティブなイメージもあるリファレンスチェックですが、本来は求職者のビジネススキルの確認や企業とのミスマッチを少なくするために行うものです。求職者にとっても、自身に合った環境で働けたり、スキルを正しく認識してもらえたりとさまざまなメリットが考えられます。
では、企業にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。次に、企業がリファレンスチェックをする3つのメリットを解説します。
メリット1.ミスマッチを防げる
企業がリファレンスチェックをする1つ目のメリットは、入社後のミスマッチを防げることです。
リファレンスチェックでは、書類や面接だけではなかなか把握できない求職者の長所や業務遂行能力をより正確に知ることが可能です。スキル面だけでなく人柄や働きぶりなども同時に知れるので、自社のカルチャーや雰囲気とマッチするかどうかの判断にも繋がります。
採用後のミスマッチが課題の場合は、リファレンスチェックの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
メリット2.候補者を客観視できる
企業がリファレンスチェックをする2つ目のメリットは、候補者を客観視できることです。
リファレンスチェックでは、求職者の能力や働き方、人柄についてよく知る第三者からの意見を得られるため、客観的な情報をもとに採用の可否を判断できます。例えば、面接時にアピールしていた実績も、求職者を周りでサポートしていた方から話を聞けば、違う一面が見えることもあるでしょう。
より多くの情報をもとに多角的に求職者への理解を深めたい場合は、リファレンスチェックを活用しましょう。
メリット3.虚偽の申告を見抜ける
企業がリファレンスチェックをする3つ目のメリットは、虚偽の申告を見抜けることです。
経歴や前職での実績など、求職者が話す内容は基本的には真実だと思って採用を進めますが、虚偽の申告がある可能性や、求職者と自社では業務に求められる内容や認識が異なっている可能性もあります。第三者へ確認することで情報が正しいのか確認できることは、大きなメリットではないでしょうか。
リファレンスチェックを行う場合、虚偽の申告が判明した場合の対応策や採用見送りの連絡の仕方などは事前に決めておくとよいでしょう。
リファレンスチェックでの具体的な質問内容
リファレンスチェックでの質問内容は、勤務関連、人物像、職務能力の3つに分類して用意します。
まず勤務関連では、以下のような質問が考えられます。書類や面接での回答に虚偽がないか、事実を確認できる質問がメインです。
- 在籍期間はいつからいつまででしたか?
- 役職や職務内容、実績に誤りはありませんか?
- 遅刻や欠席はどのくらいの頻度でありましたか?
次に、人物像に関する質問です。コミュニケーション能力や人柄を確認します。
- 周囲とのコミュニケーションは良好でしたか?
- 仕事の仕方は、個人とチームどちらが合っていますか?
- 一言でいうとどのような人物でしょうか
- 機会があればまた一緒に仕事をしたいですか?
最後に、職務能力に関する質問です。一緒に働いてきたからこそわかる仕事を行ううえでの長所や短所、マネジメントやスケジュール管理能力などを確認します。
- リーダーシップのある人物ですか?
- トラブルが発生した場合の解決能力はありましたか?
- 仕事を行ううえでの長所や短所はなんですか?
あくまでも一例なので、実際にリファレンスチェックを行う際はポジション別に質問を用意するのがおすすめです。質問数に上限などは特にありませんが、あまりにも多いと回答者の負担になってしまいます。採用の判断材料になる質問になっているかどうか確認したうえで質問を厳選し、先方にリファレンスチェックを依頼しましょう。
リファレンスチェックが違法になる場合
個人情報を取り扱うリファレンスチェックは、一歩間違うと違法となってしまうことも。思わぬトラブルを避けるため、担当者はリファレンスチェックが違法になるケースを把握しておきましょう。
本人の同意を得なかった場合
個人情報保護法の第23条「第三者提供の制限」により、本人の同意なしにリファレンスチェックを行うことは禁止されています。事前の本人確認なしにリファレンスチェックをすることは違法となるので注意しましょう。
リファレンスチェックを行う際は、前職の方に本人確認済みの旨を共有し、正しい手順でやりとりを進めるようにしてください。
取得した個人情報の取り扱いを誤った場合
リファレンスチェックで提供された情報には、個人情報保護法が適用されます。目的に合わせた利用はもちろんのこと、データを漏洩させないための管理などが必要です。
万が一、本人に共有している以外のことで個人情報を利用したり、情報が流出したりした場合は違法となりますので、十分注意しましょう。
不当な理由で内定取り消しをした場合
労働契約法の第16条「解雇」によれば、客観的かつ合理的な理由がない場合、内定後の採用取り消しは無効とされています。つまり、リファレンスチェック後の内定取り消しは法律的に認められていないことになります。
安易に内定取り消しを行うと違法となる可能性が高いため、リファレンスチェックは採用通知前に行うようにしましょう。
リファレンスチェックを行い、自社に合った人材か見極めよう
リファレンスチェックは自社に合った人材かどうかを見極めやすくなるため、採用後のミスマッチが課題の企業は、積極的に取り入れることがおすすめです。
採用候補者のなかにはネガティブなイメージを持っている方もいるので、目的を明確にし説明したうえで実施しましょう。
また、リファレンスチェックを実施する流れや、質問内容などは自社のナレッジとして溜めておくことがおすすめです。
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