チームビルディングとは?チームを強くする5つの手法・目的・注意点まで基礎知識を紹介
組織開発の手法として知られる「チームビルディング」。本記事では、チームワークとの違い、チームビルディングの5つの段階、手法から成功させる方法まで、チームビルディングの基礎知識を幅広く紹介します。
個人の能力や個性を発揮できるチームを創りたい方はぜひ参考にしてみてください。
チームビルディングとは?
チームビルディングは、組織を開発するための手法のひとつです。チームの目標や理想を達成するため、チームにおいて個々の能力や個性を最大限に発揮できる環境を作りや取り組み全般のことをチームビルディングと呼びます。
チームビルディングでは、今あるチームをよりよくするため、いかにメンバーの個性を活かすことができるかを重要視しています。そのため、大きな目標達成を目指す場合や、生産性の向上、人材育成に力を入れる際に取り入れられることが多いのが特徴です。
チームビルディングとチームワークとの違い
チームビルディングと並んで比較されることが多い言葉に「チームワーク」があります。両者はどのような違いがあるのでしょうか。
チームビルディングは個人の能力を持ち合い、企業に付加価値を付けることで経営ビジョンの達成を目指す取り組みです。社員は中長期的かつ戦略的な視点を持ち、取り組みの内容には一貫性を持たせることが重要となります。
それに対しチームワークは、メンバー同士の弱点を補填しながら特定の課題(ワーク)を解決することが重視されます。チームワークが発揮されるのは、ある程度全体像が見えており、ゴールの想像がしやすい短期的な課題に対してのみ。課題解決の方向性はバラバラで、整合性を取るのが困難な場合が多いのも特徴です。
つまり、チームワークでは課題解決を第一の目的としているため、個々の能力を活かすことや成長にはほとんど目が向けられていないのです。チームビルディングとチームワークは個人の能力を活かす視点が大きく異なっているといえるでしょう。
チームビルディングを行う主な5つの目的とメリット
チームビルディングを行う大きな目的は経営ビジョンの達成です。それだけで企業にとってメリットがあるように感じられますが、5つの目的やメリットに細分化することで、自社で実施した際のイメージがわきやすくなるでしょう。
1.ビジョンの浸透
チームビルディングを行う1つ目の目的はビジョンの浸透です。チームビルディングは、新しい期のスタートや新規プロジェクトのキックオフと同時に導入されるケースが多く見られます。
気持ちを新たにして物事に取り組むタイミングでの組織ビジョンの共有は、チームビルディングには非常に効果的。ビジョンを意識しやすい環境を最初に作ることでチームの一体感を高め、メンバー同士で協力して目標達成する意識を強めることができます。
組織ビジョンをもとにした行動がよい結果に結び付けば、組織ビジョンの重要さの理解にも繋がります。
2.マインドセットの形成
チームビルディングを行う2つ目の目的は、マインドセットの形成です。マインドセットとは、個人が持つ物事の見方や考え方を指す言葉です。
働き続けるうちに、わたしたちは無意識にマインドセットを形成しています。チームビルディングでは、そうしたマインドセットを一旦リセットし、組織のビジョン達成のために必要なマインドセットを新たに形成することができます。
3.適切な人材配置
チームビルディングを行う3つ目のメリットは、適切な人材配置ができることです。
チームビルディングでは、メンバー同士のフラットなコミュニケーションが非常に重要です。仕事に関わる会話も、そうでない会話も増やしていくことで、互いへの理解が深まっていきます。
そうした日々のコミュニケーションを通して、チームメンバー考え方や価値観を把握できると、適切な役割分担がしやすくなります。個々の能力に加え、考え方の面も考慮した人材配置が実現すれば、チームのパフォーマンスの向上にも繋がります。
4.心理的安全性の向上
チームビルディングを行う4つ目のメリットは、心理的安全性を向上させられることです。チームビルディングでは個々の能力を最大限発揮するために、心理的安全性の確保が重要だとしています。その基盤を作るのは、チーム内でのコミュニケーション量です。
コミュニケーションの量は、相互理解や相互承認を深めることに繋がります。違いを認め合い、多様であることを受け入れることで、本音を言いやすい環境が徐々に作られていくのです。
5.モチベーションの向上
チームビルディングを行う5つ目のメリットは、モチベーションの向上です。チームビルディングは、個々の成功体験ではなく、チームでの成功体験を積み重ねていく取り組みです。
チーム内で案を出し合い、ひとつの目標に向かって協力して業務を進めることにより、チームに一体感が生まれます。そのうえで高い成果をあげることができれば、より大きな目標にチャレンジすることができるようになります。チームへ貢献したい気持ちも強まるでしょう。
一人では成し遂げられなかったことも、チームでなら達成できることがわかると、自ずとモチベーションも向上していきます。
チームビルディングの5段階のプロセス「タックマンモデル」
チームビルディングでは、チームの発展を5段階に分類できるとしています。心理学者のブルース. W. タックマンが提唱したモデルであることからその名を取り、「タックマンモデル」と呼ばれています。
5つのステージの特徴を解説しましょう。
プロセス1.形成期
チームビルディングの1つ目のプロセスは、形成期です。フォーミングとも呼ばれ「形作る」を意味しています。チームの構成メンバーが決まった初期のステージのことを指します。
この段階では共通の目標が定まっていないどころか、チームメンバーのこともよくわからず、それぞれの役割も決まっていません。チーム内には緊張感があり、周囲の様子を見ながら各自意見を出し合う様子が見られます。
形成期で求められるのは、コミュニケーションの量です。チームビルディングでよく利用されているゲームを行ったり、交流会を開催したりすることが有効な手法でしょう。
プロセス2.混乱期
チームビルディングの2つ目のプロセスは、混乱期です。「猛烈な」を意味するストーミングとも呼ばれ、単語の意味通り、混乱期では意見の食い違いや対立が生まれます。
この段階では、チームとしての目標は定まっており、プロジェクトも進み始めています。しかし、お互いのことがわかり始めてきたからこそ、逆に考え方や価値観の違いに意識が向きやすく、目標達成が疎かになりやすいステージなのです。
混乱期で求められるのは、コミュニケーションの質。チーム内で納得するまで話し合い、理解を深めるための対話を行えるかが重要となります。混乱期は、チーム全体のモチベーションが下がりやすいタイミングです。チームリーダーはメンバー同士での課題解決がしやすいよう活動しましょう。
プロセス3.統一期
チームビルディングの3つ目のプロセスは、統一期です。混乱期で生まれた対立を乗り越え、安定したチームへと形を変えていくステージです。「平凡・規範」を意味するノーミングとも呼ばれます。
チームの目標を一人ひとりが意識できている段階であり、メンバーの役割分担も実現できています。そのためチームの団結力は高まっており、意見を交換する議論の場も活性化されている特徴が見られます。
統一期で求められるのは、話し合いの末メンバーで合意した目標を達成することです。そのほか、チーム内のルールを守ったり、それぞれが役割を果たすことも求められます。
プロセス4.機能期
チームビルディングの4つ目のプロセスは、機能期です。多くのチームビルディングは統一期から機能期に移行することが難しく、この壁は非常に高いといわれています。
機能期は、チームに結束力が生まれ、相互にサポートし合う体制が整っている状態を指します。それぞれの役割を果たしながらチームとしても機能しているのがポイントで、共通の目的に向かって個々が能動的に動くことができています。
機能期で求められるのは、高いパフォーマンスを継続するための取り組みです。特にチームリーダーの活動が重要。チームワークを高めるためのアクティビティを実施したり、メンバーのメンタルケアを行ったりと、メンバーの自立を助ける取り組みが必要となります。
プロセス5.散会期
チームビルディングの5つ目のプロセスは、散会期です。プロジェクトの終了などで、チームが解散する段階を指し、「休会・延期」を意味するアジャーニングと呼ばれることもあります。
チームビルディングが成功したかどうかは、チームを解散するときのメンバーの反応でわかるといわれています。解散を惜しんだり、メンバー間で業務の姿勢を称え合うような様子が見られれば、チームビルディングは成功しているといえます。
チームビルディングのための主な5つの手法
では具体的にチームビルディングを行うにはどのような手法があるのでしょうか。5つの手法をご紹介します。
1.チームの環境を整えるルール作り
チームビルディングの1つ目の手法は、ルール作りです。5つの段階に合わせてチームビルディングを進めていくには、まずメンバーが安心して働ける心理的安全性が確保された環境が必要です。そのために、チームにいくつかのルールを設定することも検討してみてください。
簡単に決められるルールとしては「会議で誰かが発した意見に対してノーをいわない」「数値を主体として意思決定を行うこと」などが考えられます。ルールそのものをメンバーで話し合って決めるのも良いでしょう。
大切なのは、ルールがメンバーを縛るものではないということです。互いを信頼し、協力し合うための土台となるルール作りを意識しましょう。
2.ITツールの活用
チームビルディングの2つ目の手法は、ITツールを活用したコミュニケーションです。社内メンバーのみのチームビルディングでも、社外の方がいるチームビルディングでも、ITツールの活用は欠かせません。
主に使われるものとしては、電子メールやチャットツール、Web会議ツール、タスク管理ツールなどがあげられます。
上手く活用するには、それぞれのツールの利用ルールを設けることが大切です。例えば、チャットツールであれば連絡内容ごとに部屋を設定したり、何らかのアクションを必須にしたりと、顔が見えないオンラインだからこそのルールがあることで、円滑なコミュニケーションが可能となります。
ITツールを使ってこまめに連絡を取る習慣がチームに根付けば、オフラインで会う機会がなくてもチームワークを強めていくことができるでしょう。
3.1on1の実施
チームビルディングの3つ目の手法は、定期的な1on1の実施です。チームによっては、キャリアが異なるだけでなく働き方も多様なメンバーが集まることがあります。なかにはオフラインでは全員集まる機会がなく、オンライン上でのやりとりがメインになることもあるでしょう。
そうしたなかでチーム内の風通しを良くするには、チームリーダーとメンバーが1対1で話せる機会を設けることも大切です。話す内容は、主に働き方やチームの目標や課題に感じていること、人間関係や日々の体調などがあげられます。
一人ひとりの意見を吸い上げ、チームビルディングに活かしていきましょう。
4.研修・セミナー・ワークショップの実施
チームビルディングの4つ目の手法は、研修やセミナー、ワークショップの実施です。期間は最短でも半日から、最長でも数ヵ月とさまざま。チームワークを強めることに集中できるため、量のコミュニケーションが必要な混乱期に実施するのがよいでしょう。
内容は、楽しめながらできるものから意見交換が必要なものまで、多様なメニューを用意するのがおすすめ。協力して目標達成する経験を積むことで、チームへの信頼や安心感が生まれ、チームの一体感も強まります。
5.ゲーム・アクティビティなどのイベントの実施
チームビルディングの5つ目の手法は、ゲームやアクティビティなどイベントの実施です。大人数でのチームビルディングを行う際に適した手法です。
ゲームの内容は、5段階のプロセスに合わせて行うのが良いでしょう。例えば、チームが作られたばかりの形成期には、楽しく参加できることを重視してゲームを選びます。混乱期であれば、意見を出し合いながら進める必要のあるゲームを行うことで、互いの考え方や価値観の共有ができます。
チームリーダーは、自身が所属しているチームがどの段階にあるのかを見極め、イベント内容を決めることが大切です。
チームビルディングを成功させるための5つのポイント
チームビルディングは、取り入れればなんとなく成功するというものではありません。適切なタイミングと適切な方法で取り入れることが大切です。そのために意識したい5つのポイントをご紹介します。
ポイント1.チームの方向性・目的・ビジョンを明確にする
チームビルディングを成功させる1つ目のポイントは、チームの方向性や目的、ビジョンを明確にしたうえでチームビルディングに取り組むことです。
目標達成のためにチーム全体で動くには、メンバーのモチベーションを高く保つ必要があります。チームとして達成したい目的が明確に定められていなかったり、抽象的だったりすると、メンバーは何から取り組めばよいのかわからなくなってしまいます。
まずはリーダーが主導となり、チームの目的を定めましょう。テキストと合わせてビジュアルでも共有することができれば、メンバーはより主体的に動きやすくなります。
ポイント2.自主性・自発性を尊重する
チームビルディングを成功させる2つ目のポイントは、メンバーの自主性や自発性を尊重することです。
個々が自分の力を最大限に発揮するには、メンバーがチーム内に自分の居場所があると自覚できる状態を作らなければいけません。心理的安全性を確保するため、まず意識したいのがメンバーの発言や行動をチーム全体で尊重する姿勢です。
なかには、ビジョンや目的からそれた判断を下したり、行動を行ったりするメンバーもいるでしょう。そうした場合には、行動したこと自体をジャッジすることは避け、内容に焦点を当てます。軌道修正が可能であれば、チーム内で協力してプロジェクト成功を目指しましょう。
ポイント3.各メンバーの役割を明確にする
チームビルディングを成功させる3つ目のポイントは、メンバーの役割を明確にすることです。
チームを作ったばかりの初期段階では、メンバー全員がお互いの様子を伺いながら行動するため、チームリーダーはメンバーへ指示をしてしまいがちです。しかし、チームビルディングを行ううえでは、指示がないと動けないメンバーに育てるような行動はできるだけ避けましょう。
メンバーの自主性や自発性を促し、尊重する環境を作るには、一人ひとりに役割を与えるのがおすすめです。具体的な役割があることで行動すべき内容が定まりやすく、役割を果たすためにチームに貢献しようという気持ちも生まれます。
ポイント4.多様性を認める
チームビルディングを成功させる4つ目のポイントは、多様な価値観を受け入れることです。チームビルディングにおいて重要なのは、目標達成のため相互にサポートできるチームを作ること。みんなで同じ方向を向く必要はあれど、個人が持つ価値観や考え方をひとつにまとめる必要はありません。
意識したいのは、それぞれの違いをただ受け入れ、尊重することです。そうすることで相互理解が進み、チームの団結力は強まります。
ポイント5.丸投げにならないようにコミュニケーションを取る
チームビルディングを成功させる5つ目のポイントは、業務の丸投げにならないよう、丁寧な説明を心掛けることです。チームビルディングは、目標に向かって自発的に行動できるチーム作るために行う取り組みです。つまり、メンバーは比較的大きな自由が与えられ、自身で物事を判断して業務を進行します。
自由だといえば聞こえがよいですが、なかには丸投げされていると感じるメンバーもいます。やらされ仕事にならないよう、チームリーダーは積極的にコミュニケーションを取ることを心掛けましょう。なぜ業務を任せているのか、この業務の目的は何なのか、丁寧に説明したうえで、業務を進めてもらうことが大切です。
チームビルディングを学べる本3選
チームビルディングは一朝一夕で成し遂げられる取り組みではありません。プロセスが5段階に分かれているように、徐々に進化していくものなのです。他社ではどんなチームビルディングを行っていて、どのように成功しているのか。これからチームビルディングに取り組む方は、以下の書籍もぜひ参考にしてみてください。
チームのことだけ、考えた。
「100人いたら100通りの働き方」があると考えるサイボウズ株式会社。『チームのことだけ、考えた。』は、多様な働き方へのチャレンジをし続けている同社の代表取締役社長・青野慶久氏が執筆した書籍です。
青野氏が社長に就任した2005年、同社の離職率は28%に達していたといいます。当時の労働環境は過酷で、終電まで働くメンバーがいたり、休日出勤するメンバーがいたりと、とにかくハードな働き方が是とされていたのです。
そうして正社員がどんどん退職していく悪循環を目にした青野氏は、次第に、社員が楽しく働いていないことは重要な問題だと思い始めます。そこから社員が楽しく働くための人事し制度を模索し、現在では“社員が辞めない企業”といわれるまでに変化しました。
本書には、青野氏の試行錯誤の積み重ねが明かされています。これからチームビルディングに取り組む方や、その途上にいる担当者の背中を押すような1冊です。
チームが機能するとはどういうことか
固定された集団から、流動的な集団が一般的になりつつある昨今において、チームビルディングはどのように変化していくのでしょうか。『チームが機能するとはどういうことか』は、新時代のチームを機能させるために必要な考え方を身につけるのに適した1冊です。
著者は、トヨタ、北京五輪会場設計チームなど、20年以上にわたって多様な人と組織を見てきたハーバード・ビジネススクール教授。著者が提唱する「チーミング」という概念をもとに、チームビルディングに必要な学習・実行に焦点を当て、丁寧に解説しています。
チームビルディングの実行者として、チームを引っ張るリーダーを担う方にとって非常に参考となる内容が詰まっています。
2人から100人でもできる! 15分でチームワークを高めるゲーム39
『2人から100人でもできる! 15分でチームワークを高めるゲーム39』では、簡単にチーム内の雰囲気をよくするためのゲームを全39種類収録しています。チームビルディングが始動する際、仲間意識を高めたり、メンバー同士の考えを確認したりしたい場合にも活用できます。
1つのゲームに必要な時間は、話し合いの時間を含めても15分程度。必要な道具も少ないため、毎日取り組むことも可能です。ゲームによって最適な人数が異なるので、日によって人数を調整しながら実践してみるのも良いでしょう。
チームワークを構築したいけれど、使える時間やリソースが限られている人事研修担当者の方は、ぜひ本書に目を通してみてください。
チームビルディングのための情報管理にはTayori
チームビルディングは、一朝一夕で成し遂げられる取り組みではありません。取り組みの内容も、企業によっては適切ではない場合もあります。チームリーダーはチーム内の情報を都度整理し、自身が所属するチームが5段階のうちどのステップにあるのかをきちんと把握しましょう。
そして、まずはメンバーが安心して働ける心理的安全性が確保された環境を整えるため、ルールづくりから始めてみてはいかがでしょうか。
チームのルールを浸透させるためにも、そしてチームメンバーが、自分がするべきことに迷ったときの道標とするためにも、チームルールをいつでも確認できる状態にすることは重要です。
導入事例:PR TIMES 当社テレワーク対応
株式会社PR TIMESが運営する「Tayori」のよくある質問(FAQ)」機能を使うことで、カテゴリ別にあわせたルールやマニュアルを分類できます。タグを設定することも可能なため特定の内容を確認したい場合、キーワードを入れて簡単に検索できます。
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