TSCA第6条における上記SN1001、SN1002及びSN1003における規制内容は、以下の通りです:
「これら化合物を成分の一つとして含む金属加工液、又はその中で使用される又は金属加工液として使用される可能性のある製品を製造する者は、当該金属加工液又はその製品にニトロ化剤を添加してはならない。」
即ち、TSCA第6条の規制は、アミン化合物である金属加工油剤の特定の使用方法のみを規制するものであり、その他の用途における金属加工油剤の使用を禁止しているわけではありませんのでご注意ください。
法律の主旨:
上記の金属加工液であるアミン化合物は、亜硝酸ナトリウムのような還元剤と反応して、発がん性物質である「ニトロソアミン(Nitrosamine)」を生成することが知られています。金属加工の現場において、金属部品等の表面に付着している防錆剤の亜硝酸ナトリウム等と接触して、ニトロソアミンが発生し、作業者が暴露される可能性があります。
本TSCAの規制は、作業者への発がん性物質の暴露を防止するためのものです。
アミン化合物のその他の用途における使用は禁止されません。上記の特定の用途、即ち、「アミン化合物の金属加工液又はその製品へのニトロ化剤の添加禁止」に限定された制限措置です。
chemSHERPAにおける情報伝達の対応:
以下のSN番号は、本TSCAの規制対象物質の情報伝達のために作成しました。
本SN番号を利用しての情報伝達に際しては、その規制対象が上記の特定の使用に限定されている旨の注記をコメント欄へ記載して頂くようにお願いいたします。
SN1001 Mixed mono and diamides of an organic acid
SN1002 Triethanolamine salt of a substituted organic acid
SN1003 Triethanolamine salt of tricarboxylic acid
又、本規制の規制対象の製品は、成形品ではなく、化学品に限定されます。かつ、規制内容は、アミン化合物の金属加工液又はその製品自体の上市の禁止ではなく、それらの使用時にニトロ化剤を発生させて、作業者に暴露させてはならないという労働安全衛生上の配慮が本規則の主旨です。従って、金属加工液としての用途ではないアミン化合物の報告は必須ではありません。
参考情報
ニトロソアミン(nitrosamines、nitrosamine)とはアミンの誘導体のうち、アミン窒素上の水素がニトロソ基に置き換わった構造をもつ化合物群です。1) その中には発がん性などの有害性が知られる物質があります。国際がん研究機関(IARC)は、ニトロソアミン類のうち、NDMA、NDEAを「グループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)」に分類しています。しかし、あくまでも加工プロセス(例 多くは食品加工)において、非意図的に生成されるものであり、意図的に製造されて製品として、上市されるものではありません。
ニトロソアミン類は、発がん性物質ですが、食品衛生法等でしか規制されておらず、REACH規則、CLP規則等の工業化学品規制においては、規制されていません。
何故ならば、REACH規則、CLP規則等は上市される工業化学品を対象とした規制であり、食品等の加工プロセス中でしか生成しない物質は工業用に上市されないためです。
食品加工においては、その加工プロセスで、ニトロソアミンが発生して、最終製品(加工肉等)にも残留する可能性があるために、食品衛生法では規制物質とされています。
そのような状況において、TSCAは、工業用途であるが、金属加工の現場における作業者へのニトロソアミンの暴露は問題があるとして、本規制を制定しました。
TSCA以外の工業化学品分野の法規制において、ニトロソアミンの暴露を制限しているその他の法規制としては、ドイツの危険物質技術規則(TRGS)615 2)があります。TSCAとまったく同様の主旨の規制であり、N-ニトロソアミンの生成につながるおそれのある防食剤の使用に関する規制が制定されています。
参考文献
1) ニトロソアミン類とは 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/n_nas/about.html
2) TRGS 615 Restrictions on the use of anticorrosion agents whose use can lead to the formation of N-nitrosamines
https://www.baua.de/EN/Service/Technical-rules/TRGS/TRGS-615
