社会保険とは?種類・加入条件・雇用保険との違いについて解説
医療保険や年金保険など、健康的かつ安心した生活を送るために必要な「社会保険」。加入およびそれに伴う保険料の納付が義務付けられているものの、制度の内容についてきちんと理解している方は少ないのではないでしょうか。
本記事では、企業の担当者として知っておきたい社会保険について解説します。
社会保険とは?制度の目的
社会保険とは、医療保険・年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険などの総称のことで、社会保障制度の一部です。保険の種類ごとに目的や内容は異なります。
例えば、雇用保険は何らかの理由で失業してしまった場合や、労働者が生活の安定が損なわれた際に、最低限の生活を保障するとともに、再就職を支援することを目的としています。ほかにも、病気やケガへの保障は医療保険、現役引退後の生活の保障は年金保険と、社会保険があることでさまざまなリスクを恐れず生活することが可能になります。
社会保険の種類
日本には複数の社会保険制度が存在します。民間保険とは異なり加入が義務付けられていますが、加入者の所得などに応じて負担する保険料が決められているため、無理なく継続的に加入できるのが特徴。医療保険や年金保険など、日本で暮らすうえで関わりの深い社会保険についてご紹介します。
医療保険
医療保険とは、ケガや病気などで入院・手術が必要な場合に診療サービスの費用を一部負担する保険制度のこと。日本では「国民皆保険制度」を採用しており、国民全員が公的医療保険で保障されています。
国民が負担する医療費を安く抑えつつ、高度な医療を受けられるのが特徴。自己負担の割合は年齢層ごとに分けられており、6歳未満は2割、70歳未満は3割、70〜74歳までは2割、75歳以上は1割です。
医療保険は通常の保険診療で利用されているほか、高額の医療費が発生した際に使える「高額療養費制度」も用意されています。月ごとの医療費が年齢や所得ごとに決められた上限額を超えた際、その分の金額が支給される仕組みです。日本は優れた医療保険制度が整っていることもあり、世界有数の長寿国を実現しています。
<参考>
・厚生労働省「我が国の医療保険について」
・厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
・日本医師会「世界に誇れる日本の医療保険制度」
年金保険
年金保険とは、定年退職をしたり年齢的に働けなくなったりした際の生活を、働いている世代で支えること目的に作られた社会保険制度のひとつです。日本は国民年金と厚生年金の2階建て構造が採用されています。
国民年金は、日本に在住している20歳以上60歳未満の方が加入の対象。20〜60歳まで支払いの義務があり、満額を納付することで65歳以降から老齢年金を受給できます。毎月支払う額は1万円を超えるため、経済的に納付が困難な方向けの免除・納付猶予制度も用意されています。
一方、厚生年金は会社員や公務員として働いている方が対象。つまり、それらの職業に就いている方は2つの年金制度に加入していることになります。月に支払う額は所得に応じて異なり、半分は事業主が負担します。基本的には就職してから会社を退職する日まで支払い、国民年金に給付額が上乗せされます。
<参考>
厚生労働省・日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」
日本年金機構「学生のための知っておきたい年金のはなし」
日本年金機構「20歳到達時の国民年金の手続き」
介護保険
介護保険は、高齢者の介護を社会全体で行うことを目的に創設されました。創設以来、加入者の数は増加し、比例してサービス利用者も増加傾向にあります。高齢化が進んでいる日本において欠かせない社会保険制度のひとつです。
40〜64歳までの医療保険加入者と65歳以上の方が加入対象。受給要件が定まっているため、誰でも加入できる制度ではありません。介護給付は9割で、利用者負担は1割。毎月の保険料は加入者の増加に伴い上がっていますが、現状7000円以下におさまっています。
<参考>
・厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」
雇用保険
雇用保険とは、労働者が何らかの理由で失業した際、生活の安定や再就職の援助を目的とした制度のこと。加入していることで、離職後に収入が途切れてしまった場合の失業手当などを受給できます。
雇用保険の加入手続きは事業主が行うのが基本。1週間のうち所定労働時間が20時間以上かつ、31日以上の雇用が見込まれる社員がひとりでもいる場合、雇用保険が適用されます。
雇用保険の制度は毎年見直しが行われており、令和4年1月1日からは65歳以上の労働者を対象にした「雇用保険マルチジョブホルダー制度」の新設が予定されています。これにより、従来の雇用保険で適用要件を満たせない労働者も、特例的に被保険者となることが可能。高齢化社会が進む日本においてチェックしておきたい制度のひとつです。
<参考>
・厚生労働省「65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します。」
・厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」
・厚生労働省「雇用保険制度 」
労災保険
労災保険は、業務上または通勤中による労働者の負傷・死亡に対して必要な保険給付を行う制度のこと。業種や雇用形態にかかわらず、すべての労働者が労災保険の対象です。
労災保険給付にはいくつか種類があります。業務中・通勤中にケガをし診察を受ける場合の「療養給付」や、仕事に行けなくなってしまった場合の「休業給付」、体に障害が残った場合の「障害給付」、介護が必要な場合の「介護給付」、死亡した場合に遺族に対して支払われる「遺族給付」の5つです。給付額や給付期間、給付の条件がそれぞれ異なるため、万一のときに備えてチェックしておきましょう。
<参考>
・厚生労働省「労災補償 」
・厚生労働省「労働基準情報:労災補償」
社会保険の加入要件
社会保険はすべての方を対象とした社会保障制度ですが、加入するには事業所・被保険者それぞれに要件が定められています。自社や勤務している会社が加入要件を満たしているのか確認してみましょう。
企業側の加入要件
事業主が医療保険、厚生年金に加入するには、それぞれ定められた要件を満たしている必要があります。
医療保険においては、まず事業所の形態で適用事業所がどうかが判断されます。法人事業所であり、5人以上の社員が働いている場合は適用事業所とみなされ、医療保険の手続きが必要になります。
厚生年金においても同様で、事業所の形態で適用されるか否かが判断されます。加入要件も医療保険と同じで、法人事業所もしくは5人以上の社員がいる場合は適用事業所であるため、厚生年金の加入手続きが必要です。
被保険者の加入要件
被保険者側での社会保険の加入要件は、まずは勤務先が適用事業所かどうかが重要です。
適用事業所に勤めている場合、医療保険は常勤の法人代表者と役員、正社員は強制適用。個人事業主とその家族従業員や短時間労働者は、適用除外となるため注意が必要です。
厚生年金も同様で、勤務先が社会保険の適用事業所であり、雇用形態が常勤の法人代表者と役員、正社員である場合は強制適用。個人事業主とその家族従業員、週の所定労働時間や所定労働日数が正社員の4分の3である短時間労働者は、年金保険の適用外となります。適用事業所ではない場合、国民健康保険や国民年金に個人で加入しなければなりません。
社会保険と雇用保険の違い
社会保険は、医療保険や年金保険など社会保障制度の総称です。このなかに雇用保険も含まれています。ただし、加入が義務付けられている医療保険、年金保険の2つを社会保険と呼ぶのが一般的です。
加入の条件についても違いがあります。社会保険は正社員の加入が必須ですが、パートやアルバイトの方は適用対象の範囲が明確に定められています。
一方雇用保険は、雇用形態や業種、事業規模に関係なく加入しなければなりません。自身が雇用保険に加入しているかどうかは、勤務先を管轄するハローワークで確認できます。
<参考>
・国土交通省「社会保険の適用関係について」
社会保険加入の手続き方法
社会保険の適用事業所である場合、新しい社員が入社した際に各種保険への加入手続きを行う必要があります。
医療保険・厚生年金は、翌月の5日までに「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出。雇用保険は、翌月の10日までに事業所を管轄しているハローワークへ「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。その際、入社した社員から年金手帳またはマイナンバーを共有してもらうことを忘れないでください。
提出時期は、事実発生から5日以内。窓口への持参以外に郵送や電子申請も可能です。
社会保険の加入を含め、採用時の手続きをまとめておこう
社会保険の手続きを行う担当者は新しく社員が入社してくるときに備え、採用時のフローをまとめておくとよいでしょう。毎回必要な手続きの内容を確認する手間が発生せず、また漏れなく手続きを完了させられます。
万が一に備え、自分以外の社員も対応できるように、社内で共有しているマニュアルやナレッジツールにフローを記載しておくのもおすすめです。
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