TOPスズキ機工問合せ一覧ベアリンググリスとしてLS No.0を使用したところ、高温・高速条件下でちょう剤が消失しました。この条件(内径φ40、10000rpm、140℃、100時間)でLSグリスに問題はあるのでしょうか?また、熱対策としてベルハンマーメタルは有効でしょうか?回転数や温度に対する適性を教えてください。
最終更新日 : 2025/07/15

ベアリンググリスとしてLS No.0を使用したところ、高温・高速条件下でちょう剤が消失しました。この条件(内径φ40、10000rpm、140℃、100時間)でLSグリスに問題はあるのでしょうか?また、熱対策としてベルハンマーメタルは有効でしょうか?回転数や温度に対する適性を教えてください。

ご報告いただいたご使用条件を整理しますと、以下の通りです:
ベアリングスキマ体積の約30%に「No.0」を封入
・アンギュラベアリング(内径φ40)
・回転数:10,000rpm
・周囲温度:140℃
・運転時間:100時間

この条件下で、ちょう剤成分が消失してしまったとのこと、詳細なご報告に深く感謝申し上げます。

■ LSグリスの「耐熱性」と実使用限界について
「LSベルハンマーグリス」の仕様は以下の通りです:

No.0:滴点 215℃
No.2:滴点 217℃

この「滴点」とは、グリースが加熱によって軟化・液化し始める温度を示すものであり、実際に連続使用できる温度とは異なります。
一般的に、グリースの連続使用温度の目安は滴点の60〜70%程度とされており、滴点215℃の場合、実使用温度はおおよそ130〜150℃程度が上限と考えられます。

今回のように周囲温度が140℃に達しているうえ、10,000rpmという高回転による内部発熱が加わることで、ベアリング内部の実際の温度はこれを上回っていた可能性がございます。

また、No.0はちょう度が低く(柔らかい)ため、以下のような現象が起こりやすくなります:
・遠心力による油分の飛散
・ちょう剤の熱劣化・酸化・炭化
・結果として、グリース全体が“消えた”ように見える

このような状況は、今回の条件下において十分に起こり得ると推察されます。

■ No.2への切り替えについて
「No.2」は「No.0」よりちょう度が高く(やや硬め)設計されており、高温・高回転環境下でもグリースの保持性が向上する可能性が高く、今回の切り替えは適切なご判断と存じます。

ただし、温度条件(140℃+内部発熱)に対する耐性の限界は同様ですので、今後も状態観察と定期点検をおすすめいたします。

■ ベルハンマーメタルグリスの熱対策効果について
現在ご手配中の「ベルハンマーメタルグリス」は、以下のような特性を持つ高機能固体潤滑グリスです:
・銅粉体・グラファイト・酸化亜鉛・モリブデンなどの固体潤滑成分を配合
・金属表面に潤滑被膜を形成し、
・極圧下での摩耗抑制
・油膜切れ時の非常時潤滑

使用温度範囲:−26℃〜800℃

本製品は、摩擦を活用した化学反応により金属表面に保護膜を生成するLSベルハンマーシリーズとは基本設計が異なり、転がり摩擦に強い高耐熱・高荷重用途に適した仕様となっております。
今回のような高温・高回転・長時間運転という条件下において、優れた潤滑性と耐久性を発揮することが期待されます。

ただし、本製品は固体潤滑材特有の黒色成分(グラファイトなど)を含むため、外観上、黒く汚れたように見える場合がございます。
そのため、美観や清潔感が重視される箇所へのご使用については、あらかじめご留意いただき、慎重なご判断をお願いいたします。

性能面では大変優れた特性を有しておりますので、ぜひ一度お試しいただければ幸いです。

■ その他の補足:LSベルハンマーGOLD原液の活用について
現物の状態が確認できないため断定はできかねますが、仮に「ちょう剤成分が失われていた」としても、潤滑性が完全に喪失しているとは限りません。
そのような場合、LSベルハンマーGOLD原液を適量注油していただくことで、金属表面の潤滑補助や保護膜形成により、一定の潤滑性能を維持・補完できる可能性がございます。

本製品は198℃程度まで潤滑効果を発揮いたしますので、現行のグリースと併用または置き換える形での対応策として、ご検討いただくことを推奨いたします。

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